カモノハシの基本情報
英名:Platypus
学名:Ornithorhynchus anatinus
分類:カモノハシ科 カモノハシ属
生息地:オーストラリア
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉
参考文献
世界一ユニークな哺乳類
アヒルのような大きな嘴(くちばし)とでっぷりしたしっぽ。
卵を産んで毒を持つ。
こんな特徴を持つ哺乳類はカモノハシしかいません。
彼らのユニークな特徴を1つずつ見ていきましょう。
①嘴
カモノハシの嘴は鳥のように固くなく、肉質でぶよぶよしています。
しかし、その下にはしっかりと骨があります。
この嘴はエサにありつくにはなくてはならないものです。
まず、嘴は川底の砂利などをどけて、隠れた獲物を見つけるのに役立ちます。
そしてもう一つ。
カモノハシの嘴には電気を感知する受容器が4万もあります。
この嘴を通して獲物が発する電気を感じ取ることで、彼らはエサを探し出しているのです。
さらにこの嘴には水圧や水流を感じる受容器もあります。
一説によると、獲物から発せられる電気信号と水流が嘴に到達する差によって、獲物との距離を測っていると言われています。
カモノハシ視覚や嗅覚が弱いですが、それを嘴という感覚器が補っているのです。
②しっぽ
カモノハシのしっぽには、くちばしと同様骨が通っておりしっかりしています。
そのため、動物園ではこのしっぽを掴んで、さかさまの状態で持ち上げることもあるそうです。
また、このしっぽはラクダのこぶのように脂肪を蓄えることができます。
全身の40%ぐらいまでの脂肪をしっぽに蓄積できるようです。
③卵生
カモノハシが分類される単孔類は、現生する哺乳類で唯一卵を産みます。
母親による抱卵の後、卵からかえった赤ちゃんは、栄養価が非常に高い母乳を飲んで育ちます。
カモノハシには乳首がないため、母乳はおなかのあたりから染み出てきます。
ちなみに単孔類では、その名の通り糞尿、卵は全て同じ穴、総排出孔を通ります。
④毒
カモノハシは、毒を持つ数少ない哺乳類の一種です。
毒は毒腺から後ろ足のかかとにあるけづめ(蹴爪)を通って注入されます。
このけづめは小さい頃はオスもメスも持ちますが、大人はオスしか持ちません。
オスはこのけづめを使って繁殖期にはメスをめぐって争います。
毒腺は繁殖期に大きくなるようです。
この毒でカモノハシが死に至ることは例外的ですが、痛みを伴うと言われています。
人間の死亡事例はありません。
ユニークネスが留まるところを知りません。彼らの特徴はまだまだあります。
彼らについてより詳しく見てみましょう。
カモノハシの生態
生息地
カモノハシはオーストラリアの東岸部、およびタスマニア島に生息します。
川や湖で暮らし、普段はその近辺に自ら掘った巣穴で生活します。
巣穴は30mに及ぶこともあります。
形態
体長はオスが43~63㎝、メスが37~55㎝、体重はオスが800~3,000g、メスが600~1,700gです。
オーストラリア本土より、タスマニアの個体の方が大きい傾向にあります。
カモノハシには歯がありません。
代わりに角質板と呼ばれる物がエサをすりつぶしています。
また、生まれたばかりの赤ちゃんには卵歯と呼ばれる前歯が生えていますが、すぐ抜け落ちます。
これは卵を割るために使われているようです。
全ての足に付く水かきは特に前足で大きく、手よりも先にまで広がります。
陸上を歩くとき、この水かきは内側に折りたたまれます。
英名のPlatypusはラテン語で「平たい足」という意味です。
食性
カモノハシは、トビケラやトンボなどの幼虫や、カニなどの甲殻類、小魚などを食べます。
安静時には水中で10分以上潜れるようですが、狩りの時は1分程度しか潜れないようです。
泳いでいる時は目や鼻は閉じられています。
カモノハシはほお袋を持っており、ここに食べきれないエサを一時的に保存しておくことができます。
行動
カモノハシは夜活動することが多いようですが、個体差があるらしく、日中活動するものもいます。
繁殖の時以外は単独で行動します。 オスの方が、産まれた場所からより遠くに分散します。
繁殖
カモノハシの繁殖には季節性があります。
交尾は7月~8月にかけて行われ、メスは21日の妊娠期間の後、1~3個、通常2個の卵を巣に産み落とします。
そして10日の抱卵の後、3㎝に満たない赤ちゃんが産まれます。
生まれたばかりの赤ちゃんには歯だけでなく、くちばしに卵角と呼ばれる突起を持ちます。
これは卵歯と違ってしばらく残ります。
授乳は3~4カ月にわたって行われ、性成熟は2歳ごろと考えられています。
寿命は長く、野生下でも20年ほど生きる個体もいるようです。
通常は長くても15年くらいです。
人間とカモノハシ
絶滅リスク・保全
カモノハシは気候変動や人間活動による生息環境の質の低下などのために個体数を減少させています。
かつてはその毛皮を目的として狩りが盛んに行われていたこともあるようです。
また、人間が捨てるプラスチックや金属を誤って食べてしまったり、魚を獲る罠にかかってしまったりすることもあります。
具体的な個体数は不明ですが、5万~30万頭が現存していると推測されています。
IUCNでは準絶滅危惧種に指定されています。
動物園
カモノハシは日本では見ることができません。
かつて来日しかけたことがありますが、頓挫して叶わぬまま。
彼らの地元、オーストラリアでは動物園でも見ることができるようです。
発見当初、学名にparadoxus(つじつまのあわないもの)とつけられたことがあるほど、哺乳類では例外的な位置を占めるカモノハシ。
ユニークすぎる哺乳類に会いに、観光の際にはぜひ動物園を訪れてみてください。