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イシイルカ

イシイルカ
©2008 A.Davey : clipped from the original
目次

イシイルカの基本情報

英名:Dall’s Porpoise
学名:Phocoenoides dalli
分類:鯨偶蹄目ネズミイルカ科イシイルカ属
生息地:北太平洋
保全状況:LC〈軽度懸念〉

イシイルカ
Photo credit: Collin Jackson

参考文献

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日本とイシイルカ

北太平洋の固有種であるイシイルカは、カウンターシェーディングと呼ばれる配色型をしている典型的な鯨類です。

このタイプでは、背中側は深い色で、腹側は薄い色をしています。

イシイルカを見ると、背中側は黒、腹は白とまさにこのカウンターシェーディングの配色です。

この配色は海の上から見ると暗い海の色に紛れ、海の下から見上げると太陽光に紛れるという効果があり、サバなどの魚にもこのような配色が見られます。


そんなイシイルカですが、配色の微妙な違いにより2つに分けることができます。

一つは腹の白が大きく、胸鰭あたりから始まるリクゼンイルカ型、もう一つは腹の白がそれよりも小さく腹の途中から始まるイシイルカ型です。

かつて両者は別種とされることもありましたが、今では種内変異だと理解されており、場合によっては亜種とされることもあります。

イシイルカ型(P. d. dalli)の方がより広く分布している一方、リクゼンイルカ型(P. d. truei)は西部北太平洋にしか生息していません。

ただ、実はどちらのタイプも日本近海で見ることができます。

イシイルカは季節によって移動することで知られていますが、日本近海のイシイルカ型は夏にオホーツク海南部で繁殖したのち、日本海まで南下し越冬します。

一方、リクゼンイルカ型は、夏はオホーツク海中部で繁殖、冬は三陸沿岸まで南下してきます。


このようにイシイルカの重要な生息場所となっている日本近海では、これまで多くのイシイルカが捕鯨されてきました。

特に戦時中、その皮は軍需資材として重宝され、政府に捕獲が奨励されたりもしました。

彼らは群集性が低いので、追い込み漁のような方法ではなく、突きん棒漁業と呼ばれる方法で一頭一頭捕獲されます。

突きん棒漁業とは、小型漁船から離頭銛を放って捕獲する方法で、この方法が使われ始めた1910年代以降、実は今でも同じ方法でイシイルカの捕鯨は続いています。

日本人とイシイルカ、意外なつながりがありました。

©2023 水産庁 水産研究・教育機構 | イシイルカ 太平洋・日本海・オホーツク海 – 国際漁業資源の現況

イシイルカ
Photo credit: Kanai Fjords National Park

イシイルカの生態

生息地

北太平洋の温帯から亜北極圏の海域に生息しています。

外洋性で、水深の深い海域で暮らします。

イシイルカ
Photo credit: Craig Bonsignore

形態

体長はオスが1.8~2.4m、メスが1.7~2.2m、体重はオスが80~200㎏、メスが70~160㎏でオスの方が大きくなります。

鯨類で最も小さい歯はネズミイルカの仲間の特徴でスペード状です。

ブラバー(脂皮)は約1㎝と鯨類では薄いです。

これは脂肪より運動量で体温低下を防いでいるからとみられます。

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食性

活動量の多い彼らは1日体重の10%以上食べることもあります。

イワシやニシン、サバ、アンチョビなど外洋に住む群集性の魚類やイカなどの頭足類を食べます。

捕食のため500m以上潜水することもあります。

捕食者にはシャチが知られています。

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行動・社会

イシイルカは単独か数頭の集団を作りますが、長期的に安定した群れは作らないようです。

彼らは鯨類の中でもかなりの瞬発力があり、泳ぐスピードも相当です。

椎骨は最大98本に達し、鯨類最多。

この体で生み出される最高時速は55㎞/hにも達し、これはマグロと同じスピードです。

泳ぐ際ルースターテールと呼ばれる鶏の尾のような水しぶきを上げることも彼らの特徴です。

ブリーチングポーパシングなどの水面行動はあまり見られません。

繁殖

交尾や出産は夏に行われます。

彼らの繁殖スピードは速く、メスは出産後1.5カ月後には発情できるため、妊娠中に授乳することも珍しくありません。

出産間隔は1~2年、妊娠期間は10~12ヵ月で、90~100㎝、13~14㎏の赤ちゃんが一頭生まれます。

赤ちゃんは生後2~3ヵ月には固形物を食べ始め、2~4歳で性成熟に達します。

寿命は短く、15年以上生きる個体もいますが、たいていは12年生きられません。

イシイルカ
Photo credit: Greg Schechter

人間とイシイルカ

絶滅リスク・保全

主な脅威としてはサーモンなどに対する漁具への混獲ですが、個体数は100万頭を超えるともいわれており、絶滅のリスクは低いとされています

IUCNのレッドリストでも軽度懸念の評価です。


日本において、彼らが最も捕獲されていたのは1980年代。

それまで冬の閑漁期にのみ行われていたイシイルカ漁は、IWC(国際捕鯨委員会)による商業捕鯨モラトリアムの実施により大型鯨類の商業捕鯨ができなくなって以降、鯨肉などの需要にこたえるために本格化し、数が爆増します。

この時期は年に3~4万頭が捕獲されていたとされています。

現在、捕獲数は2022年漁期で400頭ほどですが、政府が設ける漁獲枠は8,000頭以上となっています。

水産庁 | 「第4回 鯨類捕獲調査に関する検討委員会」の開催について

IUCN Red List of Threatened Spec...
The IUCN Red List of Threatened Species Established in 1964, the IUCN Red List of Threatened Species has evolved to become the world’s most comprehensive information source on the global conservation ...

動物園

日本の動物園や水族館でイシイルカを見ることはできませんが、冬にはイシイルカの越冬個体群に会える可能性があります。

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