ユキウサギの基本情報
英名:Mountain Hare
学名:Lepus timidus
分類:兎形目 ウサギ科 ノウサギ属
生息地:オーストリア、ベラルーシ、中国、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、カザフスタン、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、モンゴリア、ノルウェー、ポーランド、ロシア、スロベニア、スウェーデン、スイス、ウクライナ、イギリス
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
ボクシング
亜種に北海道で生息するエゾユキウサギがいるユキウサギは、冬に白色化する5種のノウサギのうちの1種です。
彼らは「山のノウサギ」という英名の通り、3,700mまでの高地にも生息しており、北半球のユーラシアに広く分布しています。
ちなみに、エゾユキウサギはアイヌ文化に関係しており、その肉や毛皮を目的として狩猟されてきただけでなく、物語や伝承にも登場します。
亜種名にはainuと付けられています。
ユキウサギは他のノウサギと同様、乱婚型の配偶システムを持ちます。
つまり、オスもメスも複数の相手と交尾をします。
交尾の決定権を持つのがメスというのは、他の哺乳類と共通しています。
告白するのはいつもオスなのです。オスはメスをめぐって争いますが、その方法は独特です。
ノウサギは時速60㎞近くで走ることができますが、その力を生み出すのが強靭な後肢。
また、ユキウサギの足は雪に埋もれないために大きく作られています。
ユキウサギはこの後肢だけでカンガルーのように立つことができます。
もちろんこの足で攻撃することもありますが、後肢で立つことで空いた前肢を使って、彼らはボクシングをするのです。
尋常ではないハンドスピードで相手を倒したオスは、見事お目当てのメスと交尾できるかと思いきや、そう簡単にはいきません。
メスがその気でなければ、交尾をしようと近づくオスを追い払います。
再びボクシングです。
通常、メスはオスよりも大きいため、オスは退くしかありません。
一方、メスがオスを受け入れれば交尾が始まります。
交尾はものの数秒で終わり、その刺激でメスは排卵します。
これは交尾排卵と呼ばれ、ウサギ目の特徴です。
ウサギと言えば、ぴょんぴょん跳ねる姿や大きな耳が特徴的ですが、そのファイトスタイルが意外にもボクシングというのは興味深いですね。
ユキウサギの生態
生息地
ユキウサギは北緯40度から北緯75度までのツンドラやタイガ、湿原などに生息します。
一部でヤブノウサギと生息地を共有しており、交雑も確認されています。
形態
体長は45~61㎝、体重は1~4㎏、尾長は4~7㎝、後足は14~18㎝、耳の長さは7~11㎝で、メスの方がオスよりも大きくなります。
また、北の個体の方が南の個体よりも一般的に大きくなります。
食性
生息環境や季節に応じて、草本類、木本類、地衣類など様々な植物を食べます。
捕食者にはキツネやヤマネコ、イタチ、猛禽類などが知られています。
行動・社会
主に夜行性で、日中はフォームと呼ばれる木や岩影のくぼみで休息します。
繁殖期である夏には日中の活動が増えます。
繁殖期を除くと主に単独性で行動圏は10~300haです。
繁殖
繁殖期は2月から8月です。
メスは年に2~6回出産することができます。
妊娠期間47~55日で、90gほどの赤ちゃんを一度に1~5匹産みます。
赤ちゃんは4週ごろ離乳し、約1歳で性成熟に達します。
寿命は野生で4年程度とされています。
人間とユキウサギ
絶滅リスク・保全
ユキウサギの個体数は全体として安定しており、絶滅の懸念はほとんどありません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
一方、潜在的な脅威としては感染症や温暖化、ヤブノウサギの存在が挙げられます。
特にユキウサギがもともと生息する唯一のノウサギであるアイルランドでは、ヤブノウサギの定着がユキウサギの脅威となる可能性が指摘されています。
また、温暖化による積雪の持続期間の短縮は、ユキウサギの体色と背景とのミスマッチを起こし、それが彼らの生存に影響する可能性があります。
動物園
ユキウサギの亜種であるエゾユキウサギは、北海道の野生だけでなく、北海道の円山動物園や旭山動物園、東京都の多摩動物公園で見ることができます。
日本の野生にはユキウサギの他、ニホンノウサギも生息しています。
冬に白化するウサギ5種のうち、2種が日本にいるというのは驚きですね。