オジロジャックウサギの基本情報
英名:White-tailed Jackrabbit
学名:Lepus townsendii
分類:兎形目 ウサギ科 ノウサギ属
生息地:カナダ、アメリカ合衆国
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
冬の白いコート
哺乳類にはオコジョやホッキョクギツネなど、季節によって毛色を変える種がいますが、ウサギのなかまにもそのような種が存在します。
冬季に白化するのはノウサギでは5種が知られています。
日本の固有種であるニホンノウサギ、北海道のエゾユキウサギを含むユーラシアのユキウサギ、北極圏に生息するホッキョクノウサギ、個体数の周期的な変動で有名な北米のカンジキウサギ、そしてオジロジャックウサギです。
オジロジャックウサギが白くなるのは、他の白化する動物同様、カモフラージュの効果を得るためです。
冬にあたり一面が雪景色になるような環境では、茶色の夏毛は周囲から浮いてしまい、捕食の危険が高まります。
そこで彼らは冬に白くなるのですが、環境によってその時期や程度は様々です。
オジロジャックウサギは、積雪の多い北部地域では耳の先を残して完全に白化しますが、中部地域では部分的に白化したり、南部地域では体の側面だけ白化したりします。
カモフラージュという役割を考えると当たり前のことですが、種内でも多様なバリエーションがあるのは興味深いですね。
ところで現在地球では温暖化が進行中ですが、いずれオジロジャックウサギの生息地にも影響を及ぼし始めると推測されています。
つまり、冬季の積雪量が変わるかもしれないということです。
そうなると、現在冬に白化する個体が、将来雪が少なくなると、カモフラージュの効果が得られなくなることになります。
そうなった場合、その環境に応じて彼らの毛色は変化すると推測されています。
寿命も短く、繁殖力が高い彼らだからこそできる適応なのでしょうが、その過渡期には雪のない景色に白化した個体がいるというミスマッチな状況が現れると予想されます。
捕食者からしたら嬉しい状況かもしれませんが、オジロジャックウサギからしたらたまったものではありません。
おそらく彼らも地球温暖化を恨む生物の一員となることでしょう。
オジロジャックウサギの生態
分類
Lepus townsendii campaniusとL. t. townsendiiの2亜種が知られています。
ジャックウサギにはオグロジャックウサギやシロワキジャックウサギなどがいますが、オジロジャックウサギは他のジャックウサギとは系統的には近くありません。
生息地
オジロジャックウサギはカナダとアメリカに分布します。
標高4,300mまでの開けたプレーリーや草原などに好んで生息します。
形態
体長は50~65㎝、体重は2.5~4㎏、尾長は6~10㎝でメスの方がわずかにオスよりも大きくなります。
食性
草本類や広葉草本類を食べ、特に冬には低木の枝などが占める割合が増えます。
捕食者にはピューマ、ボブキャット、コヨーテ、アメリカアナグマ、キツネ、猛禽類、ヘビ類などが知られています。
行動・社会
冬には集団で見られることがありますが、基本的には社会性は希薄であるとされています。
夕暮れから明け方にかけて活発に動き、日中は深さ10~20㎝程度のフォームと呼ばれる自分で掘った小さなくぼみで休息します。
繁殖
繁殖期は2月~7月で、地域によっては短期間になる場合もあります。
メスは交尾刺激で排卵し(交尾排卵)、30~43日の妊娠期間ののち、通常4~5匹の赤ちゃんを産みます。
メスは出産後すぐに発情でき(後分娩発情)、年に4回まで出産することができます。
赤ちゃんは完全に毛におおわれ、目が開いた状態生まれます。
生後2週には植物を食べ始め、約1月で離乳し、生後7~8ヵ月には性成熟に達します。
寿命は飼育下で5~8年です。
人間とオジロジャックウサギ
絶滅リスク・保全
オジロジャックウサギは減少傾向にあるとされています。
カナダのブリティッシュコロンビア州やアメリカのコロラド州、カンザス州、ネブラスカ州、サウスダコタ州、アイオワ州、ミネソタ州などでは珍しいか姿を消したとされています。
主な理由としては、プレーリーが低木ステップに変わりつつあることやそれに伴うオグロジャックウサギの進出などが考えられており、地球温暖化が遠因である可能性が指摘されています。
とはいえ、その個体数と分布域の広さから絶滅が懸念されるほどではなく、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
動物園
日本ではオジロジャックウサギを見ることはできません。