コビトカバの基本情報
英名:Pygmy Hippopotamus
学名:Choeropsis liberiensis
分類:鯨偶蹄目 カバ科 コビトカバ属
生息地:コートジボワール、ギニア、リベリア、シエラレオネ
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉
小さいカバ
19世紀に発見され、オカピやジャイアントパンダとともに世界三大珍獣の一角を占めるコビトカバ。
一見したところ、その名の通り小型のカバのように見えますが、その実像はどうなのでしょう。
確かに、現生する哺乳類のうち最も近縁同士なだけあって、その姿もさることながら、生態においても彼らにはいくつか共通点があります。
例えばカバのオスは特になわばりをアピールするために糞をしっぽでまき散らす習性がありますが、コビトカバにもそのような習性があります。
また、カバもコビトカバもどちらも半水生動物です。
その体は毛におおわれておらず、非常に敏感肌です。
そこで彼らは真皮から粘液を出し、太陽から身を守ります。
この粘液は血のように見えることから、“血の汗”と呼ばれています。
ちなみにこの血の汗は、血でも汗でもありません。
このように、よく似たカバとコビトカバですが、異なる点も少なくありません。
いくら見た目が似ているといえど、まず大きさが違います。
コビトカバの体重は通常300㎏に至りませんが、カバは大きいオスだと4t近くにもなります。
また、コビトカバは顔が体に対して小さく、一方脚や首が長いです。
生態の上での違いもあります。
カバは群れを作りますが、コビトカバは繁殖期を除くと単独で行動し、なわばり性もカバほど強くありません。
カバの特にオスはなわばりをめぐって激しい戦いを繰り広げますが、シャイなコビトカバは他の個体も遭遇しても闘争に発展することはほとんどありません。
また、半水生と一口にいっても、コビトカバはカバほど水辺の環境に依存していません。
カバは交尾、出産を水中で行いますが、コビトカバは地上でもそれらを行うとされています。
このような生態に付随して、足の水かきもカバほど発達していません。
もはや相違点の方が多いのではないかと思ってしまうカバとコビトカバ。
コビトカバからすれば、これほど違うのに小型のカバと見なされるのは不服に思っているかもしれません。
コビトカバの生態
生息地
コビトカバは、アフリカのリベリア、コートジボワール、ギニア、シエラレオネの4ヵ国に生息します。
このうちリベリアに最も生息しているとされています。
かつてナイジェリアにも生息していたようですが、1945年を最後に目撃例はありません。
コビトカバは、主に小川などの水辺が近い低地の森林に暮らします。
カバの生息地とは基本的に重複していませんが、シエラレオネの一部地域などでは同所的にみられることもあるようです。
形態
体長は1.5~1.75m、肩高は0.7~1.0m、体重は160~275㎏、尾長は20㎝になります。
犬歯は一生伸び続け、切歯はカバよりも少なく、上顎に2対、下顎に1対です。
食性
コビトカバは陸生植物や半水生植物の葉や茎、根、果実などを食べます。
農作物を食べることもあります。
採食には約6時間が費やされ、4つに分かれた胃で植物を消化します。
反芻はせず、盲腸はありません。
捕食者にはヒョウとワニが知られています。
行動・社会
コビトカバは単独性です。
なわばり性は弱く、行動圏は他個体と重複します。
主に夜行性で、日暮れから夜中にかけて最も活発に活動します。
日中は水中や洞窟、土手などで休息します。
繁殖
野生のコビトカバの生態はほとんど知られておらず、情報の多くは飼育下の個体から得られたものになります。
コビトカバは6~7ヵ月の妊娠期間ののち、4.5~6.2㎏の赤ちゃんを1頭産みます。
赤ちゃんは生後6~8ヵ月で離乳し、3歳ごろに大人のサイズになります。
性成熟には3~5歳で達し、寿命は飼育下で35~40年です。
人間とコビトカバ
絶滅リスク・保全
コビトカバの個体数はよくわかっていませんが、多くても5,000頭程度とされています。
個体数は減少傾向にあると推測されており、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されています。
主な脅威はオイルパームなどのプランテーションや探鉱とそれに伴う開発などによる生息地の破壊、状態悪化です。
また、カバほどその牙に価値があるとされていませんが、肉を目的とした狩猟も脅威となっています。
コビトカバはワシントン条約(CITES)の附属書Ⅱに記載されています。
動物園
コビトカバは東京都の上野動物園、石川県のいしかわ動物園、愛知県の東山動物園、兵庫県の神戸どうぶつ王国、大阪府のNIFRELで飼育・展示されています。
野生では珍獣と言われるほど珍しいコビトカバをぜひ一目見てみてください。