オオアリクイの基本情報
英名:Giant Anteater
学名:Myrmecophaga tridactyla
分類:有毛目 アリクイ科 オオアリクイ属
生息地:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、フランス領ギアナ、ガイアナ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、スリナム、ベネズエラ
保全状況:VU〈絶滅危惧Ⅱ類〉
“大”蟻食い
中南米に生息する、特徴的なシルエットをしたオオアリクイ。
彼らはその名の通り大きな体をしています。
頭からしっぽまで、大きいと2mを超えるものもおり、4種いるアリクイの中では最大です。
また、特に吻部は45㎝にもなり、そこから飛び出す舌はなんと60㎝にもなります。
舌は粘着性の強い唾液に覆われており、獲物を逃しません。
オオアリクイはこの舌を1分間に150回も出し入れすることができます。
この舌を使って、オオアリクイはこちらも名前の通りアリやシロアリを食べますが、その量も半端ではありません。
彼らは日に3万5,000匹のアリやシロアリを食べていると言われています。
ここでオオアリクイの採食について見てみましょう。
彼らは前肢に10㎝にもなる大きな爪を持っていますが、この爪を使ってアリ塚や木をはがし、舌を入れる隙間を作ります。
この時、彼らはコロニーが回復できるよう、巣のすべてを壊すことはしません。
そしてできた隙間から舌を何度も出し入れし、獲物やその幼虫、卵をなめとります。
その巣での採食時間はものの1分。
長い時間をかけると兵隊アリがやってきて噛みつかれてしまうためです。
オオアリクイは非常に鋭い嗅覚を持っており、どんな種類の獲物がそこにいるのか分かると言われています。
ちなみに、アリやシロアリの巣を壊す鋭い爪は、採食のためだけではなく、身を守るためにも使われます。
通常、彼らは危険を感じるとそそくさと逃げますが、追い込まれた時には二本足としっぽで直立し、威嚇のポーズをとります。
そして最終的には爪で攻撃するのです。
彼らはこの爪でジャガーやピューマなどの大きな捕食者すら撃退することもあるようです。
この鋭い爪は歩くときには邪魔なため、彼らは長い爪が生える前足のみ手の甲側の関節を地面につけて歩く、ナックルウォークという歩き方をします。
彼らほど名前にすべて詰まっている動物はそうそういませんが、爪の要素もあればなおよしですね。
オオアリクイの生態
生息地
オオアリクイは、中南米の湿潤林や乾燥林、開けた草原やサバンナに生息します。
形態
体長は1~1.4m、体重は18~45㎏、尾長は65~90㎝です。
爪は前足、後足にそれぞれ5本生えており、第三指の爪が最長になります。
他のアリクイ同様、歯は生えていません。
食性
アリとシロアリが主食です。
このほか、甲虫の幼虫やハチなどを食べることもあります。
捕食者にはジャガーとピューマが知られています。
行動・社会
単独性のオオアリクイは主に昼行性ですが、人がいる地域や天候によっては昼間に活動することもあります。
行動圏は広く90㎢ほど。ほとんどを地上で過ごしますが、必要に駆られれば泳ぐことも木に登ることもできます。
彼らは最高時速45㎞ほどで走ることができます。
掘る能力はありますが、巣を作ることはなく、休息は茂みなどでとります。
繁殖
繁殖は年中行われますが、一部生息地では季節性があるようです。
メスの妊娠期間は171~184日。
1度の出産で約1.2㎏の毛に完全に覆われた赤ちゃんを1匹産みます。
赤ちゃんは生後6ヵ月頃まで母親におんぶされて移動します。
離乳もそのころまでに完了し、1~2歳で独立します。
性成熟は2~4年、寿命は飼育下で最長25年ほどです。
人間とオオアリクイ
絶滅リスク・保全
オオアリクイの個体数は減少傾向にあるとされており、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
また、ワシントン条約(CITES)では附属書Ⅱに記載されており、国際取引が規制されています。
特に中米では最も絶滅に近い哺乳類の一種として認識されており、分布域の南部でも急減しています。
最も大きな脅威は生息地の破壊です。
特に自然な山火事だけでなく、家畜の牧草地やサトウキビなどのプランテーションのための野焼きは、彼らの生息地を奪うだけでなく、焼け死ぬこともあるため大きな脅威です。
このほか、彼らの体は肉や皮革製品、薬としての需要があるため狩猟される場合があります。
また、ロードキルや害獣としての駆除も脅威となる可能性があります。
動物園
オオアリクイには東京都の江戸川区自然動物園、神奈川県のよこはま動物園ズーラシア、静岡県の日本平動物園、愛知県の東山動物園、兵庫県の王子動物園で見ることができます。