セーブルアンテロープの基本情報
英名:Sable Antelope
学名:Hippotragus niger
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ブルーバック属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、コンゴ民主共和国、ケニア、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、南アフリカ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ、エスワティニ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
メスに興味を持つの禁止
ザンビアやマラウィを中心にアフリカ10ヵ国以上にまたがり300万㎢以上に広がるミオンボ林。
ミオンボ林とは、その名が意味するブラキステジア属(Brachystegia)などの樹木が優占する熱帯草原やサバンナ、低木林のことで、年間降水量1,000㎜前後しかない半乾燥地帯から半湿潤熱帯地域にかけて広がります。
ミオンボ林に生息する動植物は、他のタイプの森林と比べると少ないとされていますが、その多様性が非常に高いことで知られています。
植物だけでも8,500種ほどが知られており、ゾウやサイ、ライオンなどの哺乳類にとっても重要な生息地となっています。
そんなミオンボ林との関係が強いのが大きな角を持ったセーブルアンテロープです。
セーブルアンテロープは、1800年ごろに絶滅したブルーバックと同じブルーバック属に分類されるアンテロープで、セーブル(sable:英語で黒色を意味する)の名のごとくオスの黒色が特徴的です。
彼らはミオンボ林の中でも林地と草地の境界部分であるエコトーンによく定着しています。
雨季には水はけのいい土壌に背丈が30㎝を越えない草が生える林で、そして乾季になると草地でエサを食べます。
オスはこうしたいいエサ場を他のオスたちから守り、メスを惹きつけます。
セーブルアンテロープのメスは10~30頭程度の群れを作りますが、群れのメスを独占できるのは1頭の大人のオスだけです。
前肢の膝をついて角をぶつけ合う闘争の末、勝利したオスだけが群れのメスたちと交尾することができます。
群れを独占したオスは、群れの周囲300~500mをなわばりとし、他のオスから守ります。
他のオスたちは、群れを率いるオスに対し従順な姿勢を示せば、なわばり内でエサを食べることは許されます。
しかし、ひとたび群れのメスに興味を示せば、群れを率いるオスはそれを許しません。
戦闘の始まりです。
どこの世界でも異性の存在はいつもトラブルの火種です。
Hippotragus niger – Sable antelope | Brent Huffman, www.ultimateungulate.com
セーブルアンテロープの生態
分類
H. n. niger, H. n. kirkii, H. n. rooseveltiと、ジャイアントセーブルアンテロープ(H. n. variani) の4亜種が知られています。
ジャイアントセーブルアンテロープはアンゴラに生息しており、他の個体群とは孤立しています。
生息地
セーブルアンテロープはサバンナやウッドランドなどに生息します。
水資源から遠く離れることはありません。
彼らはもともと生息していなかったエスワティニに導入され定着しています。
最も生息する国はジンバブエで約2万頭、次にタンザニアで約1万頭です。
形態
体長は190~255㎝、肩高は116~142㎝、体重は190~270㎏、尾長は40~75㎝で、オスの方がやや大きくがっちりします。
一般的に成熟したオスは黒く、メスや子供は栗色をしています。
角は雌雄に生えますが、メスの角が60~100㎝である一方、オスの角は80~165㎝にもなります。
食性
主にグレイザーである彼らは、草を食べますが、場合によっては葉を食べることもあります。
また、ソルトリックも利用します。
捕食者にはライオンやヒョウ、ハイエナ、リカオンが知られていますが、大人が襲われることは稀です。
行動・社会
薄明薄暮時に最も活発になります。
オスはメスをめぐって闘争しますが、その結果死ぬことは稀です。
群れのメスのランクは年齢に依ります。
彼らは最高時速60㎞ほどで長距離を走ることができますが、基本はゆっくりと過ごします。
繁殖
繁殖は5~7月にかけて、少ない餌場に多くが集まる乾季に行われます。
メスは8~9ヵ月の妊娠期間ののち、通常1頭の赤ちゃんを雨季の終わりに産みます。
赤ちゃんは最初の1~2週間は群れの仲間からは隠されて過ごし、その後群れに合流します。
生後半年ごろ離乳が見られ、メスは2.5歳ごろ性成熟に達します。
一方オスは3~4歳で群れを離れ、オスだけの群れで生活します。
その後5~6歳で性成熟に達すると自分のなわばりを確立するようになります。
寿命は野生で最大16年、飼育下では20年近く生きる個体もいます。
人間とセーブルアンテロープ
絶滅リスク・保全
セーブルアンテロープの全個体数は7万5千頭ほどと見積もられており、また、そのうち半分が保護区に生息しており絶滅は心配されていません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
一方、彼らは人間の定住地、農地の拡大や肉、トロフィーを目的とした狩猟、家畜の影響でかつての生息地からすでに姿を消しています。
特に孤立したジャイアントセーブルアンテロープは100頭程度しか生存しておらず、また、ローンアンテロープとの交雑が確認されており、絶滅が危ぶまれています。
動物園
セーブルアンテロープに日本で会うことはできませんが、同じブルーバック属のローンアンテロープはアドベンチャーワールドや姫路セントラルパークで見ることができます。