リーチュエの基本情報
英名:Southern Lechwe
学名:Kobus leche
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ウォーターバック属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、コンゴ民主共和国、ナミビア、ザンビア
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉
参考文献
水への適応とレック
オスの角が特徴的なアフリカのアンテロープ・リーチュエは、水場に適応した動物です。
泳ぐことだって何のその。
水場の天敵・ワニから逃げることすらできます。
また、彼らの蹄は細長く、湿原や沼地に足がとられにくいようにできています。
リーチュエは地面に生える草を主食としますが、水生植物を食べることすらあります。
そんな彼らにとって、水場付近はぜひとも確保したいエリアです。
生きていくうえで水が必須だからという理由からだけではありません。
草食動物の特にオスにとっては、貴重な水場を含むエリアを守ることはメスとの繁殖のチャンスにも関わるからです。
実際、グレビーシマウマなどのなわばり性のある草食動物にとって、水場がなわばり内にあることはメスをより惹きつける要素となります。
しかし、水場を愛するリーチュエはこのような資源を守るなわばりを築きません。
その一方で、リーチュエのオスは繁殖のためだけの独特ななわばりを作ります。
繁殖期になると、20~200頭のオスが一点に集まり、それぞれが直径15~数十m程度のなわばりを作り防衛します。
そして、そのなわばりをメスたちが訪れ、最終的に魅力的なオスのみと交尾をするのです。
こうしたメスを待つオスたちが集まる場所のことをレックと言い、レック型は哺乳類ではセイウチやウマヅラコウモリ、ブラックバックなどごく一部にしか見られない稀な配偶システムです。
メスたちはレック内のさまざまなオスのなわばりを訪れますが、いいと思うオスは皆同じ。
レック内でメスを魅惑し、実際に繁殖できるオスはほんの一握りだけです。
ライオンやチーターなどによる捕食の可能性が高まるにもかかわらず、なぜ一部の動物だけがレックを作るのかは未だに謎ですが、水に依存するリーチュエも繁殖となったらその存在を忘れるほど。
生きる上では水も大事ですが、自らの子供を作るというのもそれ以上に大事なのです。
リーチュエの生態
生息地
リーチュエは、標高1,000mまでのアフリカ南部の内陸部の、湿原や沼地、氾濫原などに生息します。
形態
体長は130~180㎝、肩高は90~112㎝、体重は60~130㎏、尾長は30~45㎝で、オスの方が大きくなります。
角はオスのみに生え、45~92㎝になります。
後肢が長く、お尻の位置は肩よりも高くなります。
食性
グレイザーであるリーチュエは、地上や水中の草を食べます。
捕食者にはライオンやヒョウ、チーター、ハイエナ、リカオンなどがいます。
行動・社会
薄明薄暮時に活発に活動するリーチュエは、群れは作るものの個々の関係は希薄です。
通常、オスとメスは繁殖期以外は別で行動します。
メスが序列のない緩やかな群れを作り水場近くで暮らすのに対し、オスは単独か若いオスだけの群れで水から離れたところでも暮らします。
資源が豊富な場所では1㎢に200頭近くの個体が見られます。
繁殖
主に雨季に交尾、乾季に出産が見られます。
メスは7~8ヵ月の妊娠期間ののち、通常1頭の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは生後2~3週までは茂みなどに隠れて過ごし、母親は授乳のために日に何度かそこを訪れます(置き去り型:ハイダータイプ)。
生後5~6ヵ月で離乳し、オスは約5年、メスは早いと1.5年で性成熟に達します。
寿命は野生で長いと15年ほどです。
人間とリーチュエ
絶滅リスク・保全
リーチュエの個体数は15万頭以上いるとされていますが、現在減少傾向にあるとされています。
理由としては、肉やスポーツを目的とした狩猟や、人間の定住地、農地の拡大に伴う生息地の減少や家畜の存在が挙げられます。
リーチュエは、1999年から2015年の間に25%減少したとされており、IUCNのレッドリストでは準絶滅危惧に指定されています。
動物園
日本でリーチュエを見ることはできません。