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ミナミアメリカオットセイ

ミナミアメリカオットセイ
©2012 Brian Gratwicke : clipped from the original
目次

ミナミアメリカオットセイの基本情報

英名:South American Fur Seal
学名:Arctocephalus australis
分類:食肉目 アシカ科 ミナミオットセイ属
生息地:アルゼンチン、ブラジル、チリ、ペルー、ウルグアイ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

ミナミアメリカオットセイ
Photo credit: Brian Gratwicke

参考文献

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アシカの中のオットセイ

ミナミアメリカオットセイはアシカ科に分類される鰭脚類です。

オスとメスの体サイズが大きいアシカ科の繁殖にはある特徴があります。

それはなわばりを築ける少ないオスが多くのメスと交尾できること、そして母親は授乳と自らの採餌のサイクルを子の離乳まで繰り返すことです。

ミナミアメリカオットセイの繁殖も、このアシカ科の繁殖の特徴にならっています。


ミナミアメリカオットセイのオスはルッカリーと呼ばれる繁殖場で闘争の末なわばりを築きます。

そうしてなわばりを築いたオスはあとから上陸してきた20頭程度までのメスを独占します。

一方、メスは交尾の前に出産をします。

出産後は10日ほど絶食して子に付き添ったのち、4~5日間海に採餌に出かけます。

その後、陸に戻り1~2日授乳したのち、再び採餌に出かけますが、母親はこのサイクルを子が離乳するまで続けます。

ちなみに採餌に出かける期間は子が育つにつれて伸びていきます。

なぜなら子は育つほど絶食に長期間耐えられるようになり、一方で母親は育つ子のお腹を満たす乳量を確保するだけでなく、おなかの子を育てる必要があるからです。


ところでアシカ科のなかまは、大きくアシカとオットセイに分けることができますが、彼らの最も大きな違いは被毛です。

オットセイは防寒のために下毛と保護毛の2層の被毛を持っているため、英語で“fur seal”と呼ばれる通り、陸上ではアシカよりぼさぼさした感じがあります。

そんなオットセイはこの被毛のために、あることに対して非常に脆弱です。


それが原油や石油の海への流出です。

事故などにより海に流出した油はオットセイの被毛にまとわりつき、防寒効果を奪います。

1997年、ウルグアイのロボス島で5,000tもの原油が流出しました。

これにより付近の海岸にいた生後2~3ヵ月のミナミアメリカオットセイの幼獣約5,000頭が原油をかぶり、多くが死に至ったとされています。


アシカ科のなかまでありオットセイのなかまでもあるミナミアメリカオットセイ。

彼らはアシカ科のオットセイの特徴を表す典型的な種と言えるでしょう。

ミナミアメリカオットセイ
Photo credit: Dick Culbert

ミナミアメリカオットセイの生態

分類

ブラジルから南米南部の沿岸部、およびフォークランド諸島に分布する亜種Arctocephalus australis australisと、ペルーからチリ北部にかけて分布する亜種(まだ命名されていない)の2亜種が認められています。

生息地

南米大陸の沿岸部やその周囲の島々に生息します。

形態

体長はオスが1.9~2m、メスが1.4~1.5m、体重はオスが120~160㎏、大きいもので200㎏、メスが40~60㎏で、体サイズにおける性的二型が顕著です。

前肢の鰭は比較的細くて長いです。

ミナミアメリカオットセイ
Photo credit: Jimmy Baikovicius

食性

ジェネラリストである彼らは、アンチョビなどの魚類やイカ類、オキアミなどの甲殻類を食べます。

同所的にオタリアが生息する場合は、沖合で採食するようです。

捕食者にはシャチが知られ、オタリアも子供を捕食します。

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行動・社会

夜に採食することが多く、潜水は50~600mの間で行われます。

なわばりを持つオスはメスを他のオスから守り、ハレム型の繁殖システムを示しますが、ウルグアイではオスが小さななわばりを持ち、それらをメスが回って好みのオスと交尾するという哺乳類では珍しいレック型を示すという報告があります。

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繁殖

繁殖期は10月~1月。

メスは3~4ヵ月の着床遅延を含む約11ヵ月の妊娠期間の後、50~65㎝、3~7.5㎏の赤ちゃんを一頭産みます。

そして出産から1~6日後にはオスと交尾します。

離乳は生後6~12ヵ月で見られますが、長いと3年続くこともあります。

性成熟にはオスが7歳で、メスが3~5歳で達し、寿命は長くて30年です。

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ミナミアメリカオットセイ
Photo credit: Ashley Coates

人間とミナミアメリカオットセイ

絶滅リスク・保全

1970年代および1980年代、チリやアルゼンチンでは、彼らはチリイバラガニを捕まえるためのエサとして利用されていました。

また、ペルーでは海貝のエサとしても利用されていたようです。

現在は生息国の多くで何らかの管理が行われていますが、ペルー沖などでは漁業への被害があるようで、人間との軋轢が懸念されています。

脅威としては混獲の他、気候変動が挙げられます。

特にエルニーニョ・南方振動(ENSO)の年は、餌生物の減少により育児中のメスの採餌期間が長くなる傾向にあり、子供の死亡率が高まる要因となっています。

現在、ミナミアメリカオットセイの個体数は20万頭以上と推測されており、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

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動物園

日本では全国10程度の水族館・動物園でミナミアメリカオットセイを見ることができます。

特に埼玉県の東武動物公園、栃木県の那須どうぶつ王国などではミナミアメリカオットセイのショーが行われています。

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