カワイノシシの基本情報
英名:Bushpig
学名:Potamochoerus larvatus
分類:鯨偶蹄目 イノシシ科 カワイノシシ属
生息地:アフリカ、アンゴラ、ボツワナ、ブルンジ、コンゴ民主共和国、エスワティニ、エチオピア、ケニア、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、ルワンダ、ソマリア、南アフリカ、スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ、マダガスカル
保全状況:LC〈軽度懸念〉

育児をするイノシシ
アフリカに生息するイノシシの仲間、カワイノシシ。
彼らはその英名が示す通り、比較的植物が茂っている環境に住み、その和名の通り川などの水資源が近くにあるところにも生息します。
マダガスカルやコモロ諸島などの島にも生息していますが、彼らが一体どのようにそこに定着したのかは今のところわかっていません。
そんな彼らの特徴は、夜行性であることです。
比較的涼しいところでは日中活動する場合もあることから、気温に関係して夜に活発になると考えられます。
体温を下げるため、そして寄生虫を防ぐための泥浴びは彼らの日課です。
ブタの仲間は視力が弱いですが、嗅覚と聴覚に優れているため、夜でも問題なく生活することができます。
カワイノシシは雑食性で、植物から動物の死体まで様々なものを食べます。
サトウキビやトウモロコシ、ピーナッツといった作物も大好物で、骨が通った鼻で土を掘り起こし(ルーティングと呼ばれる)、農地を荒らします。
こうした地域で彼らは害獣としてみなされ、殺されることもあります。
しかし、夜行性である彼らをコントロールすることは難しく、彼らの存在は農業にとって脅威となっています。
特にアフリカ東部やマダガスカルなどのイスラム教が信仰される地域ではカワイノシシ含めブタは食べられないため、被害が深刻になることもあるようです。
夜行性と並ぶカワイノシシの特徴は、オスも子育てに貢献するということです。
カワイノシシは6~12頭の群れで生活します。
群れには一頭のオスと複数のメス、そしてその子供たちが含まれます。
メスが授乳などで子を育てる一方、オスは主に群れのメンバーを捕食者や他のオスから守ることで育児に貢献しています。
イノシシの仲間には、普段は単独もしくはオスだけの群れで過ごし、繁殖期だけメスと暮らし、育児はメス任せという種が多いですが、カワイノシシは1年を通してオスが群れに留まり、育児にも貢献する珍しいイノシシです。

カワイノシシの生態
生息地
カワイノシシは標高4,000m(キリマンジャロ)までの森林や茂み、ウッドランドなど、比較的植物が生い茂っている環境に生息します。
形態
体長は100~150㎝、体重は54~115㎏、尾長は30~40㎝で、オスの方が大きくなります。
上顎の犬歯が小さい一方、下顎の犬歯は15㎝以上になることもあります。

食性
雑食性である彼らは、根や茎、果実、幼虫、爬虫類、昆虫、鳥類、哺乳類の死肉など様々なものを食べます。
ウガンダでは、霊長類について移動し、彼らが落とした果実を食べる様子が観察されています。
捕食者にはライオンやヒョウ、ブチハイエナ、猛禽類などが知られています。



行動・社会
日中は茂みや行動範囲の涼しいところに自ら掘った巣で暮らします。
定住性で、なわばり性も見られます。
群れを持たないオスは単独ないしオスだけの群れで暮らします。
走りや泳ぎが得意で、イボイノシシがしっぽを上げて走るのに対し、カワイノシシはしっぽを下げたまま走ります。

繁殖
繁殖は年中見られますが、出産は乾季の終わりや雨季の始めに見られることがほとんどです。
妊娠期間は120~127日で、体重700~800gの縞模様や斑点のある赤ちゃんが一度に3~4頭生まれます。
生後2~4ヵ月で離乳し、生後半年頃に独立します。
性成熟には生後18~21ヵ月で達します。
寿命は約20年です。
人間とカワイノシシ
絶滅リスク・保全
カワイノシシは広範囲に生息しており、個体数は安定しているとみられています。
絶滅の心配は今のところなく、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
大きな脅威も特にありませんが、肉やスポーツ、報復を目的とした狩猟や生息環境の破壊、悪化などは今後脅威となる可能性があります。

動物園
日本でカワイノシシを見ることはできません。
ただ、近縁のアカカワイノシシは神奈川県のよこはま動物園ズーラシア、栃木県の那須どうぶつ王国、愛媛県のとべ動物園で見ることができます。