アカカワイノシシの基本情報
英名:Red River Hog
学名:Potamochoerus porcus
分類:鯨偶蹄目 イノシシ科 カワイノシシ属
生息地:ベナン、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ、コンゴ民主共和国、コートジボワール、赤道ギニア、ガボン、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、南スーダン、トーゴ、ウガンダ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

紅のブタ
ブタの仲間には地味な色をしたものが多いですが、アフリカの森林に生息するアカカワイノシシは例外的にカラフルです。
特に赤い毛で覆われた胴体は他のブタと彼らを見分けるのに十分です。
細部に目を移せば、彼らがおしゃれな動物であることがより分かります。
頬に生えた白い毛や大きな耳先の房毛はとてもゴージャスですし、特に長い下顎の犬歯、そしてオスにある目元のコブは力強さを感じさせます。
このように特徴的な見た目をしたアカカワイノシシですが、実は夜行性です。
昼は茂みや自分で掘った穴などで過ごし、日が落ちるころから活発に動き始めます。
アカカワイノシシは社会性があるブタです。
一頭のオスと6~20頭のメス、そしてその子供たちから成る一夫多妻の群れで過ごします。
群れの大きさはエサが豊富な場所だと100頭近くにもなるようです。
群れは行動圏内を1日に4~6㎞移動し、エサを探します。
ブタの仲間も分類される、偶数の蹄を持つ偶蹄類の多くは複数の胃を持ち、植物を効率的に消化します。
反芻と呼ばれる行為も、効率的な消化に貢献しています。
一方、アカカワイノシシ含むブタの仲間は、偶蹄類では例外的に胃が1つしかありません。
反芻行動も見られないため、反芻獣と比べると植物の消化効率は低いです。
しかし、ブタの仲間は植物質だけでなく、昆虫や卵、哺乳類の死肉などなど動物質の物も食べるので、この雑食性が植物質の消化効率の相対的な低さを補っています。
アカカワイノシシもまた雑食性を示し、昆虫や爬虫類、死肉も食べます。
一方、果実や種子、植物の茎など植物質もよく食べ、重要な餌となっています。
時にゾウなどの糞をあさり、未消化の種を食べることもあるようです。
彼らは鼻先や牙を使って土を掘り起こし、採餌します。
これはルーティングと呼ばれるブタの仲間に特徴的な習性です。
彼らのエサメニューにはトウモロコシなどの作物も含まれていますが、この習性によって作物が文字通り食い荒らされるため、人間から嫌われることもあります。
さて、こうした彼らの生活の中で、彼らの見た目がどれだけの役割を果たしているかは不明ですが、おしゃれに理由はいらないのかもしれません。

アカカワイノシシの生態
生息地
アカカワイノシシは、西アフリカから中央アフリカにかけて、熱帯雨林に生息します。
その周辺の乾燥林やウッドランドなどを訪れることもあります。
川や沼がある環境を好み、ヒトの居住地近くに現れることもあります。
形態
体長は100~145㎝、体重は45~115㎏、尾長は30~45㎝で、アフリカのブタでは最小となります。
上下の犬歯は雌雄ともに生え、下顎犬歯は10㎝以上になるまで伸びます。

食性
雑食性で、草や果実、根、種子、昆虫、鳥類やその卵、哺乳類の死肉などを食べ、種子散布者としての役割を果たしていると考えられます。
主な捕食者はヒョウで、このほかにはライオンやブチハイエナなどが知られています。



行動・社会
主に夜行性で、群れで暮らしますが、雌雄とも単独で見られることもあります。
泳ぎが上手で、川を渡ることもあります。
メスは子どもを育てるための長さ3m、深さ1mほどの巣を、草や葉っぱで作ります。
繁殖
地域に依りますが9月から4月にかけて繁殖が行われます。
メスは年に1度出産します。
妊娠期間は120~127日で、650~900gの赤ちゃんを4頭程度産みます。
赤ちゃんは生後2週ほどまで巣で育ち、生後2~4ヵ月で離乳します。
性成熟には生後18~24ヵ月で達し、寿命は飼育下で20年ほどです。
人間とアカカワイノシシ
絶滅リスク・保全
広範囲に生息しており、今のところ絶滅は心配されていません。IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
ただ、個体数は減少傾向にあります。
最も大きな脅威は狩猟です。
アカカワイノシシは中央アフリカのブッシュミート市場において、主要な動物種の一つで、地域によっては過剰に狩猟されているとされています。
狩猟は、作物被害に対する報復や、人間の居住地の拡大に助長される可能性があります。


動物園
日本では神奈川県のよこはま動物園ズーラシア、栃木県の那須どうぶつ王国、愛媛県のとべ動物園でアカカワイノシシを見ることができます。
