トピの基本情報
英名:Topi
学名:Damaliscus lunatus
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ダマリスクス属
生息地:アンゴラ、ベナン、ボツワナ、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、コンゴ民主共和国、エチオピア、ガーナ、ケニア、ナミビア、ニジェール、ルワンダ、南アフリカ、南スーダン、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

参考文献
採食遷移と促進効果
サブサハラの草原に生息する、顔や体の模様が特徴的なウシ科動物、トピ。
成熟したオスはなわばりを作り、なわばり内にいるメスたちを他のオスから守りますが、侵入しようとしている他のオスや捕食者を見つけるためか、彼らはシロアリ塚の上に立ち、周囲を見渡すという習性が特徴的です。
そんなトピは、一部地域でシマウマやヌーなど、同じく草を食べる他の動物と同じ地域に生息しています。
こうした草食獣たちはエサが少なくなると新しいエサを求めて季節的に移動をすることが知られています。
トピもそうした草食動物の一種で、移動時には数百頭が集まり大集団になることもあります。


ところで、エサを求めて移動をするということはえさが限られているということ。
同じ地域に生息する動物たちは、エサをめぐる競合はないのでしょうか。
タンザニアのセレンゲティでは、こうした問題を時間や採食部位による食べ分けによって解決しています。
まず、エサが少なくなる乾季になると、アフリカスイギュウが移動を始めます。
それに続いて、シマウマ、トピ、ヌーが移動し、最後にトムソンガゼルがその地を離れます。
こうしてその地の草を食べる時期をずらすことで、結果的に競合が弱まっているのです。
このような採食に関する時間的変化を、採食遷移と言います。


また、彼らは食べるものが全く一緒というわけではありません。
例えばシマウマは比較的丈の高い草を食べ、オグロヌーはその下にある草を食べます。
そうしてイネ科植物が取り除かれた後、トムソンガゼルは最も良質な部分を食べるのです。
ちなみにトピは低質なものも良質なものも食べますが、良質なエサにありつけた場合は、水なしで1カ月以上生存することができます。
このように食べ分けることで種間のエサをめぐる競合は小さくなっています。
むしろ、こうした食べ分けがトムソンガゼルにとっては良質なエサにありつけるために重要な役割を果たしています。
これを促進効果と言います。
その生態系は様々な種が様々な形で影響し合って成り立っています。
そしてその全貌は、まだまだ明らかになっていないことの方が多いです。
トピの生態は、そうした自然界の複雑さを教えてくれます。

トピの生態
分類
主に5亜種が知られています。
頭や被毛の色の形態学的特徴から、ザンビア北東部のものをバングウェウルダマリスクス(Damaliscus superstes)、アンゴラザンビア、コンゴ民主共和国南部のものをトピ、それ以外のものをコリガムダマリスクス(D. korrigum)とする研究者もいます。
生息地
トピは標高1,500mまでの氾濫原や草原に生息します。
ブルンジやガンビア、マリ、モーリタニア、モザンビーク、セネガルでは絶滅しており、ナイジェリアでもおそらく絶滅しています。
エスワティニでも絶滅しましたが、再導入により現在は定着しています。

形態
体長は150~205㎝、肩高は104~126㎝、体重は90~150㎏、尾長は40~60㎝でオスの方が大きくなります。
また、オスの方が体色は濃くなり、子供で最も明るくなります。
角(ホーン)は雌雄ともに生え、30~40㎝程度になります。
食性
グレイザーである彼らは、食べるもののほとんどを草が占めます。
捕食者にはライオンや、チーター、リカオン、ハイエナなどがいます。




行動・社会
薄明薄暮時に最も活発になります。
メスは通常メスとその子供からなる15~20頭の群れで暮らします。
一方、オスは若いオス同士で群れを作るか、単独で行動します。
成熟したオスはなわばりを作り、糞尿や目の下にある臭腺から出る分泌部でマーキングします。

繁殖
繁殖には季節性が見られ、一部の個体群では育児期のピークが年に2回あることもあります。
メスは約8ヵ月の妊娠期間の後、1頭の赤ちゃんを産みます。
子供は生後4ヵ月以降に離乳し、1歳ごろ独立します。
メスは1.5歳、オスは3歳で性成熟に達しますが、オスは4歳ごろ実際に繁殖するようになります。
寿命は12~15年です。

人間とトピ
絶滅リスク・保全
トピは過去1世紀、肉目的の狩猟や家畜との競合により数を減らしてきました。
今では約30万頭と推定されるまでになり、その4分の1は管理と保護が行き届いた地域に生息しますが、個体数は減少傾向にあるとされています。
亜種によっては数が少ないものもあり、例えばコリガムダマリスクスは2,000頭前後と推測されています。
ただ、全体的には絶滅を心配するほどではなく、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

動物園
日本でトピを見ることはできません。
