オジロヌーの基本情報
英名:Black Wildebeest
学名:Connochaetes gnou
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ヌー属
生息地:南アフリカ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

草原のピエロ
アフリカ南部に生息する、白い尻尾が特徴的なオジロヌー。
彼らは西洋人に発見された当初、ウマのようなタテガミとしっぽ、ウシのような頭と角、そして脚と優美なその姿がアンテロープに似ているということで、どのように分類すればよいか、学者たちを悩ませました。
また、彼らは多いと100頭以上の群れを作りますが、その群れが突如走り出したかと思ったら、今度は急に止まり来た道を振り返る。
こうした行動も西洋人を戸惑わせ、彼らは「草原のピエロ(clowns of the veld)」と形容されることもありました。
しかしそんな彼らも西洋人に発見されてしばらくすると、他の動物同様、毛皮や肉を目的として多くが狩られます。
例えば1866年、南アフリカのフリーステート州のある農園では、オジロヌーとボンテボックの毛皮15万7千頭分が出荷されたと記録されています。
このような過度な狩猟の結果、オジロヌーは激減し、フリーステート州の2つの農園に生存するのみになってしまいました。
ここでようやく農園のオーナーを中心に保護の機運が高まり、オジロヌーは各地に導入されていきます。
狩猟により絶滅したエスワティニやレソト(どちらも南アフリカ内にある国)に再導入された他、元はいなかった南アフリカの地域やナミビア、ボツワナなど他の国に導入されました。
その結果、個体数は増加し、今では少なくとも1万6千頭以上が生存しているとされています。
オジロヌーの保全活動は、その成果が農園主の持つ保全心に起因した、アフリカでは珍しい成功例として知られています。
しかし、油断は禁物です。
今や狩猟は脅威ではなくなりましたが、新たな脅威が迫ってきているのです。
それがオグロヌーとの交雑です。
それまで両者が同じところで生活することはありませんでしたが、オジロヌーやオグロヌーの生息環境が破壊された結果、彼らはのこった環境に同所的に生息するようになり、交雑を始めたのです。
交雑種は稔性を持ちます。
つまりオジロヌーとオグロヌーの間に生まれた子供は繁殖可能で、例えばその子がオジロヌーと交配すると純粋なオジロヌーの遺伝子が損なわれるのです。
このような交雑は19世紀初頭から見られたようですが、1990年代になると頭や足首などに形態的な変化が見られるようになります。
現在、純粋な遺伝子を持つオジロヌーは南アフリカ内のいくつかの農園に限られ、その数はわずか1,300頭ほどとされています。
このような状況に対し、農園内でオジロヌーとオグロヌーを分けたり、どちらかを遠くに移動させたりといった対処が求められています。
真の「草原のピエロ」の現状は、改めて調査されるべき段階にあります。
オジロヌーの生態
名前
オジロヌーの学名のうち、属名は「ひげ」と「たてがみ」を意味するギリシャ語に由来し、種小名は繁殖期のオスの“ge-nu”という鼻をならす鳴き声に由来しています。
生息地
南アフリカのフリーステート州やカルー(半乾燥地帯)に主に生息しています。
標高2,000m程度までの開けた草原や低木地で暮らします。
開けた環境は、捕食者を見つけやすくするだけでなく、オスにとってはなわばりを守る上でも重要で、彼らがこの地でのみ繁栄できた理由でもあります。
生きる上で水が必須なので、水がある場所からそう離れずに暮らします。

形態
体長は1.6~2.2m、肩高は1.1~1.2m、体重はオスが160~205㎏、メスが130~140㎏でオスの方が大きくなります。
角(ホーン)は雌雄ともに生え、75㎝程度になりますが、オスの方が太く大きくなります。
オスの方が被毛の色は濃くなり、タテガミはオグロヌーよりも顕著に逆立っています。


食性
グレイザーであるオジロヌーは、丈の短い草を主食とします。
そのほか、低木や広葉植物を利用することもあります。
オジロヌーが高密度になると、その地の植生に大きな影響を与える可能性があります。
捕食者にはライオンやリカオン、チーター、ヒョウ、ハイエナ、ワニなどがいます。





行動・社会
薄明薄暮時に最も活発になります。
通常オスメス別で暮らし、オスは単独でなわばりを作るか若いオスだけの群れで暮らす一方、メスは10~60頭程度の群れで暮らします。
メスの群れには独立前の子供もおり、序列が存在します。
なわばりを持つオスは他のオスの侵入を許さず、また群れの子供を群れから追い出し独立させることもします。
繁殖
繁殖は3月から4月にかけて見られます。
メスの妊娠期間は8~8.5ヵ月で、1頭の赤ちゃんが生まれます。
赤ちゃんは生後10分で歩けるようになり、生後1か月までには草を食べ始めます。
離乳するのは4ヵ月以降で、次の年の赤ちゃんが生まれるまで子は群れに留まり、その後独立します。
性成熟は1.5歳ごろですが、オスが実際に繁殖できるようになるのは3歳以降です。
寿命は約20年です。

人間とオジロヌー
絶滅リスク・保全
オジロヌーは多くが人間の管理下にあり、個体数は目下増加中です。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
一方、先述の通りオグロヌーとの交雑の影響が懸念されており、現状の再評価が求められています。

動物園
日本でオジロヌーに会うことはできません。
ただ、近縁のオグロヌーには静岡県の伊豆アニマルキングダムで会うことができます。
