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アメリカバイソン

アメリカバイソン
©2016 American Bison / USFWS : clipped from the original
目次

アメリカバイソンの基本情報

英名:American Bison
学名:Bison bison
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 バイソン属
生息地:アメリカ合衆国、カナダ
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉

アメリカバイソン
Photo credit: USFWS Montain-Prairie

アメリカの哺乳類

現地ではバッファローとも呼ばれる、北米最大の陸生哺乳類、アメリカバイソン。

かつて彼らは、西はロッキー山脈から東はミズーリ川まで、北はアラスカやカナダ南部からメキシコまで、グレートプレーンズと呼ばれる大平原を中心に分布し、当時の個体数はなんと約4,000万頭とも推測されています。

しかし、20世紀の初め頃、彼らの数は1,000頭以下とされるまで激減してしまいます。

その最も大きな原因は人間、特に入植してきた白人による狩猟でした。


アメリカバイソンは、発展する毛皮産業の中において、その毛皮を求めた白人の猟師たちによって極めて多くが殺されました。

南北戦争(1861~1865)後に訪れた最盛期の1870年代には、猟師一人が1日に平均50頭も狩猟していたようです。

これにはアメリカの東西を結ぶ大陸横断鉄道の発展も貢献しています。

加えて、アメリカ軍兵士による殺戮も見過ごせません。

南北戦争後に白人入植者が増加し、本格化した西部開拓時代、前線の兵士たちは食料目的だけではなく、射撃の実践やフラストレーションの発散を目的としてアメリカバイソンは殺されました。

さらに、開拓の障壁となった先住民を追い払うために、彼らの食料となるバイソンが大量殺戮されていたことが知られています。


こうして主に白人による狩猟によって激減したアメリカバイソンの状況を打開すべく、ようやく保護政策が始まります。

時の大統領でありスポーツハンティングを愛好していたセオドア・ルーズベルトや動物学者のウィリアム・ホーナデイらが、アメリカバイソンソサイエティー(the American Bison Society)を立ち上げ、彼らを絶滅の危機から救おうとします。

これはアメリカでは、野生生物を保護する最初の国家的試みとされています。

ほかに、アメリカ内務省の保護活動や民間の活動もあり、バイソンの個体数は次第に回復していき、例えばイエローストーンでは、かつて20頭程度だった個体数は、4,900頭程度まで増えます。

全体の個体数は、今では約3万1千頭と推測されるまでになっています。

これら野生(半野生含む)のものに加え、現在30万~40万頭のアメリカバイソンが4,000近くある牧場などで家畜として飼育され、毛皮や肉を提供しています。

ただ、この中には家畜のウシと交雑しているものが多いため、純粋なアメリカバイソンではありません。


一方、バイソンの個体数の回復に伴い、バイソンを自分たちの生活に取り戻そうとする先住民の動きも出てきます。

ITBC(the Intertribal Buffalo Council)は、そうした活動をサポートする組織で、現在80以上の先住民族が属しています。

バイソンは肉や毛皮など物質的な面で先住民の生活を支えていただけでなく、彼らの精神的な存在にもなっており、文化の面においても重要な役割を果たしていました。

白人によりそうした生活を奪われた先住民が、かつての生活を取り戻そうとバイソンの復活を望むのは当然のことでしょう。


こうして絶滅の危機から復活したアメリカバイソンは、2016年、オバマ大統領の時に、アメリカの国の動物に哺乳類としては初めて指定されます。

絶滅の危機から復活した歴史や、文化的、経済的な貢献が評価され、彼らはハクトウワシと同じようにアメリカという国のシンボルとなったのです。

ただ、人間の都合で殺され、保護され、シンボルにされたことを、彼らは一体どう思っているのでしょう。

雄大なアメリカの平原を闊歩する彼らの心境はいかに。

ちなみに、国の動物として指定されている哺乳類は他に、カナダのアメリカビーバー、アフガニスタンのユキヒョウ、オーストラリアのアカカンガルー、フィンランドのヒグマなどが知られています。

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19世紀後半のアメリカ社会と動物 — バッファロー乱獲をめぐる議論の分析を中心に | 白石(那須)千鶴

アメリカバイソン
Photo credit: Larry Lamsa

アメリカバイソンの生態

分類

アメリカバイソンは約40万年前、ベーリング陸橋を渡って北米に来たとされており、その頃のサイズは今よりも大きかったようです。

アメリカバイソンにはヘイゲンバイソン(Bison bison bison)とシンリンバイソン(B. b. athabascae)の2亜種が知られています。

現在生息する3万1千頭の内訳はそれぞれ2万頭、1.1万頭です。

生息地

アメリカバイソンは、標高180~2,750mまでの平原に暮らします。

もとの生息地にはメキシコの乾燥地帯や雪が積もる地域も含まれます。

かつては北米の草食動物では最大版図を誇っていましたが、今ではその1%程度にしか生息していません。

アメリカバイソン
Photo credit: Free Public Domain Illustrations by rawpixel

形態

体長はオスが3.6~3.8m、メスが2.1~3.2m、体高はオスが1.6~1.9m、メスが1.5~1.6m、体重はオスが約900㎏、メスが約400㎏で、オスの方が大きくなります。

最大のオスは1tを超えます。

角(ホーン)は雌雄ともに生えており、60㎝ほどになります。

食性

グレイザーである彼らは草を主に食べます。

夏になると食性は多様になり、花や木の葉、地衣類なども食べます。

飲み水は必須です。

1日に9~11時間を採食に費やし、冬は雪を蹄や吻部でかき分けて採食します。

アメリカバイソンは胃を4つ持ち、反芻を行う反芻動物です。

捕食者にはオオカミピューマが知られています。

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行動

ヘイゲンバイソンはかつて季節移動をしていましたが、今では人間の影響で見られません。

ずんぐりしていますが走るのは意外に早く、最高時速は約60㎞。

泳ぐこともできます。

視力はよくないですが、聴覚と嗅覚が優れています。

よく地面に横たわり体をこすりつけますが、これは寄生虫の除去の他、におい付けの役割もあるとされています。

アメリカバイソン
Photo credit: Mark Gunn

社会

オスとメスは基本別で暮らします。

メスが群れを作る一方、オスは単独か、30頭までのオスだけの群れで暮らします。

オスの群れには序列があり、序列が高いオスほど多くのメスと交尾できます。

繁殖期は6月~9月で、この頃雌雄は合流します。

オスは自分が囲ったメスたちを他のオスから守るため、頭をぶつけ合って闘争します。

繁殖

メスの妊娠期間は9~10ヵ月で、15~25㎏の赤ちゃんを群れから離れた場所で通常1頭産みます。

赤ちゃんは赤毛で覆われており、英語では“red dogs”と呼ばれます。

この赤毛は生後2.5~4ヵ月で大人の茶色に変わっていきます。

生後1歳までに離乳し、2~3歳で性成熟に達します。

ただ、オスが実際に繁殖できるのは6歳ごろからで、10歳までがオスの最盛期となります。

寿命は野生で15~20年、飼育下では40年近く生きる個体もいます。

アメリカバイソン
Photo credit: Amaury Laporte

人間とアメリカバイソン

絶滅リスク・保全

現在野生には68群、3.1万頭が生息していると推定されていますが、そのうち48群は自由に生活しているわけではなく、完全には自然下にいません。

残りの20群、約1.9万頭のうち、13群は400頭以下。

長期的に存続できるとされる1,000頭を超える個体群は4つしかありません。

個体数は安定していますが、ほとんどが管理下にあるため、彼らの命運は今後の管理次第です。

IUCNのレッドリストでは準絶滅危惧の評価です。

アメリカバイソン
Photo credit: Larry Lamsa
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動物園

アメリカバイソンには全国10以上の動物園で会うことができます。

群馬サファリパークや栃木県の那須サファリパーク、静岡県の富士サファリパーク、大分県の九州自然公園アフリカンサファリなどのサファリパークでは、彼らの迫力をより感じられると思うので、ぜひ足を運んでみてください。

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