ボルネオオランウータンの基本情報
英名:Bornean Orangutan
学名:Pongo pygmaeus
分類:ヒト科 オランウータン属
生息地:インドネシア・ボルネオ島
保全状況:CR〈絶滅危惧ⅠA類〉
参考文献
メタボ体質
東南アジアの熱帯雨林では、数百種の樹木(特に優占するフタバガキ科)が一斉に結実する一斉結実という現象が数年に一度、不定期に起こります。
この期間は多くの生物にとってパラダイスなのですが、その後数年の間、森林の果実の生産は低調になってしまいます。
つまり、東南アジアでは果実欠乏期の終わりが予測できず、長いと言えます。
ちなみに、この一斉結実の前には一斉開花が見られますが、何をきっかけに起こるのかなど、そのメカニズムは未だに解明されていません。
一斉開花・結実の他に、東南アジアの熱帯雨林は、アフリカやアマゾンの熱帯雨林と比べると果実の生産量が少ないことが分かっています。
オランウータンを含め、東南アジアに生息する動物たちはこのように厳しい環境で暮らしています。
そんな東南アジアに位置しており、オランウータンの生息地であるスマトラ島とボルネオ島の内、ボルネオ島はより厳しい環境にあります。
それは、ボルネオオランウータンにのみケトン体(カロリー摂取が不足し体脂肪が燃焼されたときに排出される)が検出されていることや、ボルネオ島においてカロリー収支がマイナス(=消費>摂取)になる期間が最大70%にも昇ることなどに現れています。
そのため、オランウータンはいかに食べられるときに食べておけるかということが生存上非常に重要になってきます。
ある調査によると、非結実期には約4000kcalだったオスの摂取カロリーが、一斉結実期には約8500kcalにまで上昇したと言います。
オランウータンは他の類人猿と比べても非常に太りやすい体質を持っています。
そのため、食料が少なくなる心配のない動物園では、オランウータンの肥満が問題になってきました。
かつて日本でも300㎏を超えるオスが飼育されていたそうです。
しかし、厳しい自然界においては、この体質は生きるために必要不可欠です。
果実の少ない時期を乗り越えるために、エネルギーをできるだけ貯蓄する。
オランウータンのメタボ体質は、生き延びるための鍵と言えるでしょう。
ボルネオオランウータンの生態
生息地
ボルネオオランウータンは、ボルネオ島の熱帯雨林に生息します。
基本的に10m以上の樹上で生活しますが、オスは地上に下りてくることもあります。
樹上での移動はゆっくり慎重に行われ、基本的に2種類以上のツルや枝を手足の3点でつかみながら移動します。
また、自重を生かした木揺すり(スウェイ)で移動することもあります。
食性
ボルネオオランウータンは、主に果実を食べます。
果実が欠乏している時期には、葉や樹皮、種子を食べることもあります。
形態
体長は1.1~1.4m、体重はオスが約90㎏、メスが約40㎏と性的二型が顕著です。
行動
スマトラオランウータンは複数で行動することがありますが、ボルネオオランウータンは基本的に単独で行動します。
これは先述のように果実の少なさが影響していると考えられます。
それぞれはそれぞれの遊動域を持ち、オスメス問わずそれは重複しています。
オランウータンの社会は非父系社会で、メスが出生地から近い所に遊動域を設けるのに対し、オスは出生地から遠く離れます。
特にフランジオス(顔に大きなひだのあるオス)の遊動域は非常に広く、観察の難しさからそれを明らかにした研究はほとんどないと言われています。
繁殖
繁殖に季節性は見られず1年中行われます。
発情したメスは外形的な特徴を表しませんが、妊娠するとお尻が腫脹します。
オランウータンの繁殖は非常にゆっくりとしています。
初産年齢は15歳前後、出産間隔は約7年で、その遅さは陸生哺乳類一です。
妊娠期間は約8カ月で、メスは約1500gの1匹の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは約3年で離乳し、約7歳で独り立ちします。
人間とボルネオオランウータン
絶滅リスク・保全
ボルネオオランウータンは、農業用地のための森林破壊、山火事などで個体数を減少させています。
また、オランウータンの子供はペットとして違法に取引されており、子供を手にいれるために母親が殺されることもあります。
人間という大きな脅威にさらされているボルネオオランウータンは、レッドリストでは絶滅危惧ⅠA類に指定されており、生存数は約5万7千頭と推測されています。
動物園
そんなボルネオオランウータンですが、日本では多くの動物園で会うことができます。
北海道の旭山動物園、東京都の多摩動物公園、石川県のいしかわ動物園、静岡県の日本平動物園、兵庫県の王子動物園、愛媛県のとべ動物園、福岡県の福岡市動物園などがボルネオオラウータンを飼育しています。
「森の哲人」とも呼ばれる彼らに会いに、是非これらの動物園に足を運んでみてください。