チンカラの基本情報
英名:Chinkara
学名:Gazella bennettii
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ガゼル属
生息地:アフガニスタン、インド、イラン、パキスタン
保全状況:LC〈軽度懸念〉

砂漠のガゼル
インドガゼルとも呼ばれるガゼルの仲間、チンカラは、インドに大半が生息している小型のウシ科動物です。
チンカラはそのインドの中でも北西部に位置するラジャスターン州にほとんどが生息しています。
ラジャスターン州の一部地域では、チンカラは聖なる存在とされることもあり、狩猟は禁じられています。
そのラジャスターン州の西側ではパキスタンと国境を接しており、そこに広がるタール砂漠は、チンカラにとって重要な生息地です。
チンカラは乾燥に適応した動物です。
チンカラの生息地は平原だけでなく砂砂漠をも含み、非常に乾燥しています。
彼らの生息地では年間に150~750㎜しか雨が降りません。
日本の年間降水量の平均値がおよそ1,600㎜、日本で最も雨が降る鹿児島県屋久島の年降水量が4,000㎜を超えることを考えると、チンカラの生息地における降水量の少なさがわかります。
これだけ雨が少ないため、水が非常に希少であり、彼らを含む哺乳類が生きる上ではその水が生命線となります。
チンカラも飲み水は必要としますが、彼らは水を飲まずに何日も生き続けることができます。
殆どの水分は草や葉っぱから得ることができるため、毎日水を飲む必要がないのです。
多くのウシ科動物は草を食べる(グレイザー)イメージが強いですが、チンカラは草も食べますがどちらかというと葉っぱを食べます(ブラウザー)。
また、メロンやカボチャと言った作物を食べることもあります。
彼らはこうしたエサを主に夜間に食べます。
これは暑くて乾燥した日中に活動し、疲弊するのを避けるためであり、適応的な行動と言えます。
ちなみに、チンカラという聞きなれない名前はヒンディー語由来です。
彼らは危険を感じると足を踏み鳴らし、くしゃみのような鳴き声を出すとされますが、「チンカラ」とはくしゃみをすると言った意味の言葉のようです。



チンカラの生態
生息地
チンカラは標高1,500mまでの乾燥した低木林や平原、砂砂漠などに生息します。
形態
体長は0.9~1.2m、肩高は0.6~0.8m、体重は20~25㎏でオスの方が大きくなります。
また、チンカラはアジアでは最小のアンテロープとなります。
被毛は季節によって色を変え、夏には赤茶、冬にはより明るい色となります。
角は雌雄生えますが、オスの方が大きくなります。
オスの角は25~40㎝になる一方、メスのものは20㎝以下であることが多いです。

食性
草や葉、果実などを食べます。
捕食者にはキンイロジャッカルやトラ、ヒョウなどがいます。



行動・社会
主に夜間に採食します。
主に単独性ですが、環境が良いと10頭程度の小さい群れで見られることもあります。
特に繁殖期には集団で見られることが多いです。
繁殖期にオスは特になわばり性が強くなります。
最高時速50~60㎞で走ることができます。
繁殖
繁殖期は8~10月、3~4月の年に2回行われます。
メスの妊娠期間は5~5.5ヵ月で、通常1頭の赤ちゃんが生まれます。
子は2ヵ月ほどで離乳しますが、1歳になるまで母親とともに過ごすこともあります。
寿命は飼育下で12年ほどです。
人間とチンカラ
絶滅リスク・保全
チンカラはかつて過度な狩猟により激減し、現在も減少傾向にあるとされています。
2000年ごろ、彼らの個体数は10万頭(タール砂漠に8万頭)いると推測されましたが、現在はそれよりも少ないと考えられています。
それでも絶滅が心配されるほどではなく、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
狩猟のほか、生息地の破壊などが脅威ですが、彼らはインド、パキスタン、イランでは法的に保護されており、インドでは80以上の保護区に生息しています。

動物園
日本ではチンカラに会うことはできません。
