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オグロヌー

オグロヌー
©2010 oliver.dodd: clipped from the original
目次

オグロヌーの基本情報

英名:Common Wildebeest
学名:Connochaetes taurinus
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ヌー属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、エスワティニ、モザンビーク、ナミビア、南アフリカ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

オグロヌー
Photo credit: John Hickey-Fry

大移動

「果てしない草原」というマサイ族の言葉に由来するセレンゲティ。

セレンゲティのサバンナは、ケニアとタンザニアに広がり、ケニアのマサイマラ国立保護区、タンザニアの世界遺産、セレンゲティ国立公園を含み、こちらもタンザニアの世界遺産ンゴロンゴロ保全地域に隣接しています。

セレンゲティはゾウキリンライオンなどなど大型哺乳類が大多数を占める世界で唯一の場所であり、何百万年もの間その姿は変わっていないと言われています。

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そんなセレンゲティにおいて、最も目を引くのが動物たちの大移動です。

そこにはシマウマガゼルインパラなどの有蹄類が含まれますが、その主体はオグロヌーです。

オグロヌーは世界中に約155万頭いると推測されていますが、なんとそのうち130万頭がセレンゲティに生息しています。

これほどの数がいるため、環境は彼らを養うことができません。

そこで彼らはエサを求めて大移動をするのです。

他の動物と合わせると150万頭以上にもなる、数㎞続く大群が移動をするというので、それはもう圧巻です。

大移動は1年にわたって、セレンゲティを時計回りに一周するように行われますが、ここでその様子を見てみましょう。

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ヌーの移動は12月に始まります。

10月ごろに始まった雨季が終わるころ、彼らは南下し、ンゴロンゴロ保全地域付近に到達します。

そして3月ごろまでこの付近の草を食べながら、セレンゲティの南部をゆっくりと移動していきます。

この間の2月、出産が見られます。

出産期に生まれるヌーの赤ちゃんは約40万頭ですが、そのうち約9割がたった3週間の間に一斉に生まれます。

母親は赤ちゃんに連れ添い、主ににおいによって刷り込みをし、母子の関係を築き上げます。

生まれた赤ちゃんは生後3~7分で歩き始め、すぐに母親についていけるようになります。

4月から5月にかけてヌーの大群はセレンゲティを北上しますが、この間子供はすくすく育っていきます。


5月から6月にかけて、グルメティ川付近に到着するころ、繁殖期のピークとなります。

オスはなわばりを確立するために頭をぶつけて闘争し、うまくいけば複数のメスと交尾します。

一方でこの期間は危険です。

グルメティ川にはワニが潜んでおり、それらが横断するヌーを捕食するからです。

ワニという捕食者の存在は、この後に続く最大の難関、マラ川でも見られます。

8月、マサイマラに突入するにあたり、彼らは幅100mを超えるマラ川を超える必要があります。

この横断で大群はパニックに陥りやすく、ナイルワニなどによる捕食だけでなく、溺死によっても多くが死んでいきます。

毎年約6,000頭がこのマラ川で命を落としています。

一方で、マサイマラに行かずセレンゲティに残るものもいます。

こうした群れは10月ごろには合流し、12月にかけてエサとなる植物が再生したセレンゲティ東部を南下していきます。


こうしてオグロヌーの1年にわたる大移動は終わりますが、エサがなくなれば再び大移動が始まります。

1度の大移動における移動距離は1,000㎞を超えることもあり、陸生哺乳類の移動の中では最大のものの一つです。

また、その道中は過酷を極め、生まれた子供の半数以上は死んでしまいます。

しかし、移動しなければさらに多くのヌーが死ぬことでしょう。

生きるために彼らは今日も、果てしない草原を歩いています。

オグロヌー
Photo credit: Thomson Safaris Tanzania Safaris and Kili Treks
Serengeti National Park
Wildebeest Migration Cycle | The great wildebeest migration Wildebeest Migration Cycle is described as the circular movement that wildebeests take across the East African plains of the savannah...
The-Great-Migration-Map-ENG-xxl-940x628
出典:When and Where to See the Great Wildebeest Migration | Rhino Africa Blog

オグロヌーの生態

名前

オグロヌーの学名のうち、属名は「ひげ」と「たてがみ」を意味するギリシャ語に由来し、種小名は雄牛を意味します。

ヌーという言葉は、繁殖期のオスの“ge-nu”という鼻をならす鳴き声に由来しています。

英語ではその体色からBlue Wildebeestとも呼ばれます。

生息地

オグロヌーは標高2,500mまでの、丈の低い草が広がる平原に主として生息します。

アカシアサバンナや開けた茂み、乾燥した低木地などが住処です。

マラウィでは絶滅しています。

オグロヌー
Photo credit: abi.bhattachan

形態

体長は1.5~2.4m、体重は118~270㎏でオスの方が大きくなります。

オスの方が体色は濃くなります。

角(ホーン)は雌雄ともに生えています。

近縁のオジロヌーとはしっぽの色で見分けることができます。

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食性

グレイザーである彼らはイネ科植物を主食とします。

捕食者にはライオンチーターハイエナリカオンワニなどがいます。

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行動・社会

大移動をせず定住傾向にあるタイプのオグロヌーのメスは数頭の群れを作り、オスはそのメスをめぐって他のオスとなわばり争いをします。

大群を作る場合は、母子の関係のみが残ります。

水へのアクセスが必須です。

オグロヌー
Photo credit: Derek Keats

繁殖

メスの妊娠期間は約8ヵ月で、1頭の赤ちゃんを産みます。

20㎏程度の赤ちゃんはすぐに歩けるようになります。

生後8か月までには離乳し、独立していきます。

性成熟には1.5~2歳で達しますが、オスが実際に繁殖できるようになるのは4~5歳です

寿命は約20年です。

オグロヌー
Photo credit: Don DeBold

人間とオグロヌー

絶滅リスク・保全

個体数は約155万頭と多く、安定していることから、絶滅は心配されていません。

IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

ただ、ヒガシシロヒゲオグロヌー(C. t. albojubatus)が6,000~8,000頭しかいないように、亜種によっては状況が変わってきます。

脅威としては人間と家畜の拡散による生息環境の破壊や肉目的の狩猟、牛疫などの病気が知られています。

また、防疫のために国境付近に張り巡らされたフェンスは、彼らの移動を妨げ、時に脅威となります。

例えばかつてボツワナでは、干ばつに起因して移動しようとしたヌーが防疫フェンスに阻まれ、サウ湖付近で約4千頭死亡しています。

Africa Geographic
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動物園

オグロヌーは、セレンゲティに住む亜種、ニシシロヒゲオグロヌー(C. t.mearnsi)を静岡県の伊豆アニマルキングダムで見ることができます。

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オグロヌー
Photo credit: Kandukuru Nagarjun
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