コクレルシファカの基本情報
英名:Coquerel’s Sifaka
学名:Propithecus coquereli
分類:インドリ科 シファカ属
生息地:マダガスカル
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉
葉食に適した体
コクレルシファカは、雨季・乾季に関わらず茂る葉っぱをよく食べます。
しかし、多くの動物たちにとって、この葉っぱは繊維を多く含んでいるため、消化には良くありません。
そんな葉っぱを、コクレルシファカは発達した臼歯や小腸をもって消化してしまいます。
盲腸(小腸と大腸の移行部分。草食動物のものはよく発達しており、人間のものは短い)や結腸(大腸の主要部分)も葉っぱの消化に重要な役割を果たしています。
具体的には、ここに住むバクテリアに繊維を発酵させることで、しっかり葉っぱを消化・吸収しています。
消化の裏にはバクテリアという小さな助っ人がいました。
果実や種子などと比べると、葉っぱは豊富に存在する食料です。
その葉っぱを消化できるコクレルシファカは、生きる上で非常に有利になると思われます。
しかし、そんなコクレルシファカも、生息地の破壊や狩猟などによって絶滅が危惧されています。
コクレルシファカの生存戦略も、人間の前では無残に破れてしまいます。
コクレルシファカの生態
生息地
コクレルシファカは、マダガスカル北西部の乾燥林や低木林などに生息します。
食性
昼行性のこのサルは、葉っぱ以外にも果実や花、つぼみなどを食べます。
形態
体長約50㎝、体重約4㎏、しっぽは体長よりやや長いくらいで、シファカのなかまの中では小さい方です。
コクレルシファカは、3~10頭から成る群れを作ります。
群れの中ではメスの方が優位にあり、オスはメスに服従します。
コクレルシファカの社会は、オスが成長すると群れを出ていき、メスは基本的に群れにとどまる母系社会です。
メスも群れを離れることがありますが、それは群れ内でメスが多いために繁殖の機会がほとんどない時に限られるようです。
行動
コクレルシファカを含め、キツネザルのなかまの多くは、ヴァーティカル・クリンギング・アンド・リーピング(下の動画でも見られます)という特徴的な移動方法をします。
後肢が発達していてジャンプ力がものすごく、6mもジャンプするというので驚きです。
また、両手を挙げてサイドステップを踏むように地面を移動する様子は、非常にかわいらしいです。

においによるマーキングもコクレルシファカの特徴です。
陰部にある臭腺(オスは喉のあたりにもある)から出る分泌物を木の幹などに付着させ、なわばりをマーキングします。
コミュニケーションにはにおいいだけでなく音声も使われます。
その中でも捕食者などの存在を仲間に警告する鳴き声は、シファカという名前の由来にもなっています。
繁殖
コクレルシファカの繁殖には季節性が見られ、メスは1月~2月にかけて発情します。
メスは群れ内、もしくは流入してきたオスと乱交的に交尾します。
妊娠期間は約160日で、通常1匹の赤ちゃんが6月~7月の乾季に生まれます。
生まれたばかりの赤ちゃんは約100gで、主に母親によって育てられます。
そして生後5~6カ月には離乳し、2~4年で性成熟に達します。
出産間隔は約1年、寿命は25~30年と言われています。
人間とコクレルシファカ
絶滅リスク・保全
コクレルシファカは、牧場の開拓、炭の生産、焼畑農業などのための森林破壊や狩猟の影響で個体数を減らしています。
近年は特に狩猟圧が高まってきており、現地では食べるための狩猟は伝統的にタブーとされているにもかかわらず、他の土地から来た人々の増加によってそれがないがしろにされているようです。
レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されており、2008年時点の生存数は20万頭と推測されています。

動物園
そんなコクレルシファカですが、日本では会うことができません。
特徴的な移動方法と鳴き声を、直接目にし、聞けないのはなんとも残念です。