カニクイイヌの基本情報
英名:Crab-eating Fox
学名:Cerdocyon thous
分類:イヌ科 カニクイイヌ属
生息地:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、フランス領ギアナ、ガイアナ、パナマ、パラグアイ、スリナム、ウルグアイ、ベネズエラ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
蟹食うイヌ?キツネ?ジャッカル?
霊長類の一種に、カニクイザルというサルがいます。
彼らは名前にカニクイ(蟹食い)とついているものの、雑食性で、カニが主食というわけではなくなんでも食べます。
このカニクイザル同様、カニクイイヌはカニを食べるものの、雑食性でカニ以外にもなんでも食べます。
このような柔軟な食性のおかげで、カニクイイヌは農地など人の手が入ったところなど、多様な環境で生きていくことができます。
また、エサの少ない乾季があっても生き延びることができます。
カニクイイヌは、雨季には標高が高い所で、主に昆虫や豊富になった果実を食べます。
これが乾季になると、彼らは低地に移動し、カニなどの甲殻類や脊椎動物中心の植生に切り替えます。
好き嫌いがないということは、厳しい自然で生き延びるには非常に大事なことなんですね。
ところで、我々はこの動物のことをカニクイイヌと呼んでいますが、英名を見てみてください。
彼らの英名はCrab-eating Fox。
直訳すると、カニクイギツネです。
あれ?
学名も見てみましょう。
カニクイイヌの属名(学名の前半)は、Cerdocyon。
これは、ギリシャ語でキツネを指すkerdoと、イヌを指すcyonに由来します。
んん?
さらにさらに、種小名(学名の後半)のthousはギリシャ語でジャッカルを意味する言葉に由来します。
イヌ、キツネ、ジャッカル。
まあ確かに、カニクイイヌはどれにも見えますが、和名と属名に一部ついているイヌが最も適当でしょう。
紛らわしいですが、意外にこれらの言葉の使い分けはあいまいなものなのです。
カニクイイヌの生態
生息地
カニクイイヌは、南米の乾燥林や湿潤林、サバンナなど、標高3,000mまでの多様な環境に生息します。
食性
彼らは雑食性で、小型哺乳類や爬虫類、鳥類、両生類、魚類、昆虫、甲殻類、卵、果実、野菜、死肉など何でも食べます。
形態
体長は60~70㎝、体重は5~8㎏、尾長は約30㎝で、短くたくましい肢が特徴的です。
これは森林の下生えの中でも動けるよう適応した結果だと考えられます。
行動
カニクイイヌは主に夜行性で、日中は他の動物の巣穴などで過ごします。
単独、もしくはペア、そしてペアを中心とした家族群で行動します。
ペアで行動する場合でも、採食は単独で行われることが多いようです。
ペアはなわばりを持ち、特に資源が減る乾季にはよりなわばり性が強くなります。
繁殖
繁殖は年中行われますが、交尾のピークは11月~12月に見られます。
出産間隔が7~8カ月なので、年に2度繁殖が行われることもあります。
妊娠期間は約56日で、120~150gの赤ちゃんが、一度に3~6頭産まれます。
赤ちゃんは母親にも父親にも育てられます。
生後14日で目が開き、生後1か月には固形物を食べ始めます。
生後6週で親の狩りについて行くようになり、生後3カ月ほどで完全離乳します。
生後5~8カ月には独り立ちし、生後9カ月で性成熟に達します。
寿命は飼育下で約11年です。
カニクイイヌに会える動物園
保全状況
カニクイイヌの個体数は非常に安定しており、絶滅は懸念されていません。
レッドリストでも軽度懸念の評価を与えられています。
ただ、イエイヌからもらう感染症は脅威になっています。
カニクイイヌは人間のゴミをワクチンが打たれていないイヌたちと漁ることもあるので、この時感染のリスクは非常に高まります。
感染症は人間にもうつる可能性があるので、早めの対策が待たれます。
動物園
そんなカニクイイヌですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
彼らのようなあまり知られていない動物こそ、日本でも見られるようになってほしいものです。