クルペオギツネの基本情報
英名:Culpeo
学名:Lycalopex culpaeus
分類:イヌ科スジオイヌ属
生息地:アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルー
保全状況:LC〈軽度懸念〉
どこでも住めます!
南米に生息するクルペオギツネは、森林や平原を好むものの、標高4500m以上の高い所でも、雪が降り積もる寒い所でも、乾燥した砂漠でも、ほとんどどんなところでも暮らしていけます。
このように彼らが様々な環境で暮らしていけるのは、寒さに耐えうる彼らの密な下毛はもちろんですが、その食性によるところが大きいです。
クルペオギツネは雑食性で、ノウサギや齧歯類などの小型哺乳類や、ヒツジなどの家畜、昆虫、鳥類、トカゲ、卵、植物質やベリーなどの果実、死肉など、あらゆるものを食べます。
つまり、これらの食物があるところはどこでも彼らの生息地となり得ます。
実際彼らは、1900年代初頭に、アナウサギとヤブノウサギが海外から移入されたとき、アルゼンチン東部の低地に分布域を広げたと言われています。
ただ、適応力の高い彼らにも、生存や分布域拡大を阻む要因がいくつかあります。
その一つがピューマです。
ピューマは肉食で、クルペオギツネとはアナウサギなどを巡って競争関係にあります。
さらに、ピューマはクルペオギツネの数少ない捕食者でもあり、彼らの繁栄を妨げます。
もう一つは人間です。
人間は彼らの密な毛皮を狙って、そして家畜を襲う害獣を駆除するため、長年にわたりクルペオギツネを狩ってきました。
このような狩猟圧は、クルペオギツネの個体数を抑制していると考えられます。
実際に、チリのチンチラ国立保護区やボスケ・フライ・ホルヘ国立公園では、狩猟圧の減少と共に、クルペオギツネの数が増えました。アルゼンチンでも、1980~90年代にかけて毛皮の値段が下がり、狩猟圧が減少した際、クルペオギツネの数が増加しています。
ただ、狩猟圧が減少しても個体数は減り続けたというティエラ・デル・フエゴなどの例外はあるようです。
このように彼らの繁栄を阻む要因はあるものの、かつてよりは個体数を増やし、分布域も拡大しているようです。
ところで、クルペオギツネは警戒心が薄く、人間などに狙われても隠れません。
死んだふりをし、時にそのまま気を失うことすらあるようです。
このような習性から、チリの言葉で狂気や愚かを意味する“culpem”に由来した、クルペオと言う名前を持つのかもしれません。
クルペオギツネの生態
生息地
クルペオギツネは、アンデス山脈やパタゴニアなど、南米の西側にかけて広く生息します。
アルゼンチンやペルーでは夜に、チリの砂漠地帯などでは日中に活動します。
形態
体長は45~93㎝、体重はオスが約11.5㎏、メスが約8㎏、尾長は30~50㎝で、南米に生息するイヌ科動物の中では、タテガミオオカミに次いで大きいです。
標高が高くなるほど大きくなる傾向にあり、毛は冬になるとより蜜に長くなります。
行動
クルペオギツネは、繁殖期以外は基本的に単独で行動します。
行動圏は生息環境によりますが、およそ3~10㎢です。
移動距離もえさの密度が小さいほど長くなり、砂漠では一日に20km以上移動することもあります。
生息密度は1㎢に0.2~1.3匹です。
繁殖
繁殖には季節性が見られ、交尾は8月~10月にかけて見られます。
妊娠期間は約60日で、170gほどの赤ちゃんが3~8頭(通常5頭)産まれます。
育児は、岩の間や齧歯類が残した巣穴で主に母親によって行われますが、父親による育児も報告されています。
赤ちゃんは生後2カ月で離乳し、7カ月には大人の大きさになります。
性成熟は1歳の時に達し、寿命は野生下で生きて約10年、飼育下では最長13年です。
人間とクルペオギツネ
絶滅リスク・保全
クルペオギツネにとっては、前述した狩猟などの脅威の他、野良犬や飼い犬による攻撃、捕食も脅威となっています。
生息環境の破壊はそれほど脅威となっておらず、むしろ例えば人間による鉱業活動は、水や隠れ家などそこには不足していたものを彼らに与えているという側面もあります。
現在、彼らの個体数は非常に安定しており、絶滅の危機にもありません。
レッドリストでは軽度懸念で登録されています。
動物園
そんなクルペオギツネですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
ぜひ間近で、彼らの死んだふりとやらを見てみたいものです。