コビトマングースの基本情報
英名:Dwarf Mongoose
学名:Helogale parvula
分類:マングース科 マングース属
生息地:アフリカ, アンゴラ, ボツワナ, コンゴ民主共和国, エスワティニ, エチオピア, ケニア, マラウィ, モザンビーク, ナミビア, ソマリア, 南アフリカ, スーダン, タンザニア, ウガンダ, ザンビア
保全状況:LC〈軽度懸念〉
階級社会
コビトマングースは、2~30頭から成る複雄複雌の群れを作ります。
この群れには厳格な階級があり、高齢のメスが最も優位に立ちます。
そのメスとペアを組むオスが続いて優位で、最も若いメンバーがその次の順位になります。
コビトマングースの社会では、基本的にどの齢階級でもメスの方が優位になります。
面白いのは、最も優位なメスとオスだけが繁殖することです。
他の劣位メスも交尾をしますが、妊娠しなかったり流産したりし、産んだとしてもその子供の生存率は極めて低くなるようです。
このようなメスは母乳を出すことができ、優位メスの子の授乳をすることもあります。
最も優位なペアしか繁殖しないという特徴は、南米のサル、マーモセットやタマリンに似ていますね。
ビビリ
コビトマングースは開けた草原などに生息し、なおかつ体が小さいので、捕食者から狙われやすいです。
そのため、彼らの警戒心は高く、集団を作ることで敵を察知する目を増やしています。
また、ミーアキャットのように見張り番を置くこともあります。
興味深いのは、鳥類のサイチョウとの関係です。サイチョウも、コビトマングースと同じく昆虫を食べます。
そして、コビトマングースと同じく周囲の捕食者を警戒します。
つまり、両者は捕食者を警戒するという点において協力関係にあるのです。
サイチョウは特に空を飛ぶ猛禽類を発見するのが得意で、見つけると警告音を出します。
それを聞くと、コビトマングースたちは素早く逃げます。
コビトマングースはサイチョウがいると見張り役を出すことがないほど、彼らを信頼しています。
彼らの関係は下の動画でも見ることができます。
死んだふりをして気を引こうとするコビトマングースを、サイチョウは面倒くさそうな目で見ているのが笑えてきます。
コビトマングースの生態
生息地
コビトマングースは、エチオピアから南アフリカ北部にかけて、サバンナなどに生息します。
食性
1日のほとんどを採食に費やし、コオロギやバッタ、シロアリ、クモなどの無脊椎動物や、ネズミ、ヘビ、鳥などの脊椎動物を食べます。
採食は日中行われ、夜はシロアリ塚や岩陰などで寝ます。
形態
体長は18~28㎝、肩高は約12㎝、体重は210~350gで、マングース科の中では最小になります。
なお、メスの方がわずかにオスよりも大きくなります。
行動
コビトマングースは、母系社会を形成します。
オスが2~3歳で別の群れを探して生まれた群れを離れるのに対し、メスは基本的に群れに留まります。
群れは30~60haのなわばりを持ち、肛門や頬の臭腺から出る分泌物や糞尿でマーキングします。
他の群れとのなわばりの重複はわずかで、群れ同士は敵対的です。
コミュニケーションには、においの他、音声やグルーミングなどが用いられます。
繁殖
繁殖には季節性が見られ、10月~4月にかけて行われます。
妊娠期間は49~56日で、通常3頭、最大6頭の赤ちゃんが一度に生まれます。
赤ちゃんは群れ全体で育てられます。
最初の2~3週の間は、群れが採食に出かけても、赤ちゃんを見守る個体が巣に残ります。
また、生後6~7週で完全に離乳するまでは、群れのメンバーが子どもにえさを与えることもあります。
性成熟には2~3年で達し、寿命は飼育下で最長12年の記録があります。
人間とコビトマングース
絶滅リスク・保全
コビトマングースには、もちろん捕食者という脅威はありますが、彼らを絶滅に陥れるような脅威はこれといってありません。
そのため、個体数は非常に安定しており、絶滅は危惧されていません。
レッドリストでは軽度懸念の種として登録されています。
動物園
そんなコビトマングースには、日本の動物園でも会うことができます。
東京都の上野動物園と大阪府の天王寺動物園が、コビトマングースを飼育・展示しています。
彼らの社会性を垣間見ることができると思うので、是非これらの動物園に足を運んでみてください。