ユーラシアアナグマの基本情報
英名:Eurasian Badger
学名:Meles meles
分類:イタチ科 アナグマ属
生息地:アルバニア、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、ベルギー、ボスニアヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ、デンマーク、エジプト、エストニア、フィンランド、フランス、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イラン、イラク、アイルランド、イスラエル、イタリア、ヨルダン、キルギス、ラトビア、レバノン、リトアニア、ルクセンブルク、モルドバ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、シリア、トルコ、ウクライナ、イギリス、ウズベキスタン
保全状況:LC〈軽度懸念〉
穴熊
ユーラシアアナグマは、その名の通り穴を掘る動物です。
5本の丈夫な爪のついた前足で土を搔き、出来た穴で生活します。
巣穴はセットと呼ばれ、特にユーラシアアナグマのセットは、アナグマの中でも最も複雑だと言われています。
穴は30~80mも続き、いくつもの部屋と、多い時には50にもなる出入り口を持ちます。
道幅は20~60㎝、高さは15~30㎝ほどで、アナグマが通るには十分です。
部屋はいくつもあり、落ち葉や枯草などが敷き詰められています。
また、部屋はきれい好きなユーラシアアナグマにより、よく葉や草を入れ替えられ、掃除されます。
部屋の掃除は動物でもやっているのですね。
ユーラシアアナグマは一年を通して穴を掘り、穴で生活します。
特に秋や冬は、セットで多くの時間を過ごすことになります。
アナグマは真の冬眠こそしないものの、寒くなると活動量が大幅に落ちたり、ほとんど動かなくなることもあります。
この時、それほど密な毛皮を持たないアナグマにとって、セットは寒さから彼らを守る役割を果たします。
アナグマにとって、セットは自然の家なのですね。
ちなみに、セットには複数の家族群がいることもあります。
この時、それぞれの家族は別々の部屋を利用します。
また、面白いことにセットは親世代から子世代に引き継がれることがあります。
このような話を聞くと、ますます家という存在が人間界だけのものではないことを思い知らされます。
ユーラシアアナグマの生態
生息地
ユーラシアアナグマは、ユーラシア大陸西部の森林や農地など、様々な環境に生息します。
ただ、セットを作るために水はけのよい場所を好みます。
食性
雑食の彼らは、ミミズを好んで食べ、その他にもウサギやネズミなどの小型哺乳類や、甲虫、イモムシ、トカゲ、カエル、鳥の卵、ハチ、死肉などを食べます。
ユーラシアアナグマは、食べられるものは何でも、いつでも食べる機会的捕食者で、採食は個別に行います。
形態
体長は55~90㎝、肩高は約30㎝、体重はオスが9~17㎏、メスが6.5~14㎏、しっぽの長さは11~20㎝で、オスの方が大きくなります。
えさの少ない夏には痩せ、秋に最も太ります。
行動
ユーラシアアナグマは、平均2~6頭、多くて20頭にもなる群れを作りますが、単独で行動する個体もいます。
集団を作る動物の中で、社会性はそれほど高くなく、採食は個別で行います。
また、育児に関しても、母親以外のメスが手伝うことはあっても、基本的に他個体は非協力的です。
とはいえ、同じセットに住んでいるため、グルーミングや音声、においによるコミュニケーションはよく見られます。
群れは20~150haほどの行動圏を持ち、行動圏内に複数のセットを持ちます。
セットの出入り口付近には共同のトイレがあり、これはマーキングの役割を果たしていると考えられます。
繁殖
ユーラシアアナグマは、年中繁殖を行いますが、交尾のピークは2~5月に見られます。
メスの発情は年に一度、期間は4~6日で、一度の交尾は15~60分間続きます。
最優位のオスとメスのみが繁殖し、それ以外のメスの子は、最優位メスにより殺されることがあります。
ただ、エサなどの資源が豊富にあれば、劣位の個体も繁殖する場合があるようです。
8~10カ月の着床遅延が見られるため、実質の妊娠期間は9~12カ月と長いです。
一度に約12㎝、75gの赤ちゃんが1~5頭生まれます。
一般的に生まれる子供の数は乳首の数の半分と言われていますが、ユーラシアアナグマの場合も、3対の乳首に対し、平均産仔数は3頭です。
赤ちゃんは生後4~5週で目を開き、8~10週でセットから出るようになります。
生後2.5カ月には離乳し、約1歳で性成熟に達します。
寿命は野生で約10年、飼育下では16年ほどです。
人間とユーラシアアナグマ
絶滅リスク・保全
ユーラシアアナグマは、いくつかの潜在的な脅威に直面しています。
生息地の減少や、狩猟、狂犬病などの病気などがその脅威です。
特に狩猟は生息地でよく行われており、駆除のため、肉や脂肪を薬として使うため、娯楽のためなど様々な目的で狩猟されています。
しかし、このような脅威に囲まれながらも、ユーラシアアナグマはその分布域の広さや生息数の多さなどから、絶滅は懸念されていません。
レッドリストでは、軽度懸念の種として記載されています。
動物園
そんなユーラシアアナグマですが、残念ながら日本では見ることができません。
ただ、日本にはニホンアナグマという彼らに近縁のアナグマが野生にも動物園にもいます。
その生態はユーラシアアナグマとよく似ているので、観察してみるといいでしょう。