ジェレヌクの基本情報
英名:Gerenuk
学名:Litocranius walleri
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ジェレヌク属
生息地:ジブチ、エチオピア、ケニア、ソマリア、タンザニア
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉
参考文献
キリンの首
ジェレヌクという何とも耳なじみのない言葉は、ソマリアで話されている言語、ソマリ語に由来しています。
意味は“giraffe-necked”、「キリンの首をした」です。
ジェレヌクの姿を見ると、キリンには及ばないものの確かに首は他の有蹄類と比べても非常に長く、一目で彼らと分かるほどです。
ところで、キリンは長い首を活かして、他の動物が決して届かない場所のエサを独占的に食べていますが、キリンのような首をしたジェレヌクはどうでしょう。
彼らはやはり長い首を活かしてエサを食べますが、その方法はキリンとは異なります。
彼らは後足で立って、さらに身長を高くしてエサを食べるのです。
ジェレヌクは、後足で立ち上がり、前足で枝を手繰り寄せ、長い首を使って高いところの葉っぱを食べます。
これは、首を長くして身長を伸ばしたキリンとは異なる採食戦略です。
ジェレヌクの頭の高さは1.5m程度ですが、このような採食方法をとることで、2~3mの高さのエサにありつくことができます。
これは他の草食動物には届かない高さです。
そんな高さに生える質の高いエサを、ジェレヌクは独占的に利用しているのです。
質の良いエサには栄養だけではなく、水分も豊富です。
ジェレヌクは乾燥地帯に住んでいるにもかかわらず、こうしたエサにありつけることで、水を飲まずに生きていくことができます。
ちなみに、首が長いキリンの頸椎の数は、意外にも私たち人間と同じく7個ですが、ジェレヌクにおいてもその数は7個(例外はマナティーとナマケモノだけ)。
数は同じでも他の動物よりも長い頸椎を持つことで、キリンやジェレヌクは長い首を実現させています。
一方、ジェレヌクの後頭部は同じ大きさの近縁種に比べて5㎝ほど長いという特徴を持ちます。
これによりほんの少しだけ遠くのエサに口が届きます。
ジェレヌクがこの特徴を持ち続けているのも、このほんの少しが重要だからなのでしょう。
ジェレヌクの生態
生息地
ジェレヌクは、アフリカ東部の標高1,600mまでの乾燥、半乾燥地帯に生息します。
茂みや低木林などで暮らし、深い森林や開けた草原は避けます。
形態
体長は1.4~1.6m、体重は24~58㎏、尾長は22~35㎝で、オスの方が肉付きがよくなります。
角はオスにのみ生え、25~44㎝になります。
眼窩前腺の他、膝や蹄の間にも臭腺があります。
食性
徹底したブラウザーの一種で、草は食べません。
80種以上の植物の葉や花、つぼみ、枝などを食べます。
捕食者にはチーターやヒョウ、ライオン、リカオンなどがいます。
行動・社会
ジェレヌクの成熟したオスは単独で行動し、なわばりを持ちます。
なわばりは眼窩前腺からでる分泌物などでマーキングされます。
一方、メスは10頭程度までの、主に血縁関係のあるメス同士で群れを作ります。
また、独立したてのオスは、他のオスと群れを作り、自分のなわばりを築くまで放浪生活を送ることもあります。
繁殖
繁殖は年中行われますが、雨季に影響されるようです。
メスは1~2年に一度繁殖し、出産前は群れから一時的に離れます。
そして6~7ヵ月の妊娠期間ののち、通常1頭の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは生後しばらくは茂みで隠れながら育ちます。
1~1.5歳ごろ離乳し、2歳ごろまでに独立します。
オスの方が長く母親のもとに留まるようです。
寿命は野生で10~12年と考えられています。
人間とジェレヌク
絶滅リスク・保全
ジェレヌクはここ15年程度の間で25%個体数を減らしたと推測されており、その数は現在も減少傾向であるとされています。
個体数は9.5万頭と推計され、IUCNのレッドリストでは準絶滅危惧に指定されています。
主な脅威は違法な森林伐採による生息地の破壊です。
内戦の影響も少なくなく、狩猟の影響も懸念されています。
ジェレヌクはアフリカでは200年近くゲームハンティングの対象で、今でも肉目的などで狩猟されています。
ある程度の狩猟圧には耐えられるようですが、過度な狩猟は彼らの脅威となります。
動物園
日本ではジェレヌクに会える動物園はありません。