グアナコの基本情報
英名:Guanaco
学名:Lama guanicoe
分類:鯨偶蹄目 ラクダ科 ラマ属
生息地:アルゼンチン、ボリビア、チリ、パラグアイ、ペルー
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
ラクダ科
約4,500万年前に北米で誕生したラクダ科には現在、野生種が3種しかいません。
フタコブラクダとビクーニャ、そしてグアナコです。
このほか、ヒトコブラクダ、家畜化されたフタコブラクダ、アルパカ、ラマが家畜種としてラクダ科に名を連ねますが、ラクダ科はこれで全部です。
鯨偶蹄目に分類されるラクダ科は、他の偶蹄類と比べてもかなり特殊な位置にいます。
指は他の「偶」蹄類のように四肢に2本ずつありますが、その指先は他の偶「蹄」類とは異なり蹄ではなくパッド状の構造に覆われています。
これにより蹄に覆われた指よりも広く開くことができ、不安定な足場をしっかりと踏みしめて歩くことができるとされています。
ちなみに初期のラクダ科には蹄があったようです。
また、座り方も独特です。
他の偶蹄類は膝関節を地面につけることはありませんが、ラクダ科は膝関節を地面につけて座ります。
形態で言うと、歯も特徴的です。
彼らはイノシシ類を除く他の偶蹄類には極めて珍しく、犬歯が存在します。
ラクダ類はこの歯を闘争に使いますが、下の動画ではまさにグアナコが相手の首や急所に噛みつく様子を見ることができます。
また、特にビクーニャでは下顎の門歯が永久に伸び続け、エナメル質は歯の前面にしか存在しません。
ラクダ科は反芻動物です。
ラクダ科は消化が難しい植物を主食としていますが、食べたものを吐き出して改めて咀嚼する、つまり反芻することで消化効率を上げています。
反芻と言えばウシが思い浮かびますが、ラクダ科の反芻はウシやシカなどの反芻亜目に分類される動物とは別に進化したものだとされています。
このようにラクダのなかまは非常にユニークな特徴をいくつも持っています。
中でも私たちに身近なのは、彼らが唾を吐くことではないでしょうか。
上唇が左右に分裂した口から発せられるつばはとても不快ですが、彼らの立派な意思表示です。
家畜科されたラクダ科動物は、人間に抵抗する際、座って動かなくなるだけでなく蹴ったり唾を吐いたりします。
ラクダ科のユニークさを確かめようと彼らに近づきすぎたら、いつの間にか唾まみれになってしまうのでご注意下さい。
グアナコの生態
生息地
グアナコは、標高5,000mまでの草原や低木林などで暮らします。
全個体の8割以上はアルゼンチンに生息しており、チリがそれに続きます。
アルティプラーノと呼ばれる高原では、同じラクダ科のビクーニャと生息地が重複しています。
形態
体長は1.9~2.2m、肩高は0.9~1.3m、体重は90~140㎏で、見た目上の性差はありません。
特にオスは大きい犬歯を持っており、闘争の際に使用します。
下顎門歯は、ビクーニャのように伸び続けることはなく、エナメル質は全面を覆っています。
食性
グアナコは100種以上の植物を食べますが、わずか数種が半数を占めます。
草本類だけでなく木本類も食べ、草や葉の他、果実や花、棘のあるサボテンを食べます。
捕食者にはピューマとクルペオギツネが知られています。
行動・社会
グアナコは5~13頭からなる単雄複雌の群れを作ります。
群れは定住性のものもあれば移動性のものもあります。
特に冬にはエサを探したり雪を避けたりして900㎢もの広範囲を移動します。
定住する場合は2~9㎢を行動範囲とし、なわばりを築きます。
オスは成長して群れを離れると、単独やオスだけの群れを作ってしばらく放浪し、4~6歳になると自分のなわばりを築くようになります。
繁殖
グアナコのメスは、ネコ科動物のように交尾の刺激で排卵します。
妊娠期間は11.5ヵ月で、南半球の夏である11月から12月にかけてメスは1頭の赤ちゃんを出産します。
赤ちゃんは生後8カ月で完全に離乳します。
メスの出産間隔は1年で、世代の違う子供が同じ群れにいる場合もあります。
しかし、下の子が離乳し始めるとその時約1歳の上の子は群れを去ります。
オスは2~4歳で、メスは2歳ごろに性成熟に達します。
寿命は最長で30年ほどです。
人間とグアナコ
絶滅リスク・保全
グアナコの生息地はかつての4分の1になっており、家畜との競合や肉や毛皮目的の密猟、生息地の破壊、ラマとの交雑などが脅威となっています。
ただ、個体数は150万~220万頭と見積もられており、上昇傾向にあります。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
ワシントン条約では附属書Ⅱに記載されており、ビクーニャほど厳しい規制下にはありません。
動物園
日本ではグアナコを見ることはできません。
ただ、グアナコの家畜種であるラマには全国各地で会うことができます。
唾にだけは気を付けてください。