スジオイヌの基本情報
英名:Hoary Fox
学名:Lycalopex vetulus
分類:イヌ科 スジオイヌ属
生息地:ブラジル
保全状況:NT〈準絶滅危惧〉
シロアリ食い
スジオイヌは、ブラジルにのみ生息するイヌ科動物です。
和名ではイヌとついてはいるものの、英語ではキツネと呼ばれています。
確かに、イヌともキツネともとれる容姿をしています。
そんなスジオイヌは、動物性のものも植物性のものも食べる雑食性の動物です。
しかし、この動物のエサメニューには他のイヌ科動物にはないものが載ります。
それがシロアリです。
ある調査でいくつもの糞を調べたところ、そのほとんどにシロアリが含まれていることが分かりました。
特にエサが少なくなる乾季には、齧歯類と共にシロアリはスジオイヌの重要な食料となっているようです。
スジオイヌの生息地には、同じイヌ科のカニクイイヌやタテガミオオカミも生息しています。
彼らは齧歯類など一部同じえさを食べますが、こういった競争を避けるためにも、スジオイヌはシロアリを食べるようになったのかもしれません。
シロアリや齧歯類以外にも、スジオイヌは特にフンコロガシやバッタなども好んで食べます。
スジオイヌの臼歯は幅広いですが、これは昆虫をかみ砕くために発達したと考えられています。
また、歯の話をすればスジオイヌの上顎の裂肉歯は7~8mmしかありません。
小さな裂肉歯は、彼らがそれほど哺乳類や鳥類の肉に依存していないことを示していると思われます。
スジオイヌはあまり研究されてこなかったイヌ科動物ですが、今後研究が進めば、シロアリを食べるということ以外にも、彼らを特徴づける興味深い個性が見つかるかもしれません。
スジオイヌの生態
生息地
スジオイヌは、標高90~1,100mまでの、セラードというブラジルの草原、サバンナに生息します。
食性
雑食性のスジオイヌは、シロアリや齧歯類、果実、昆虫、爬虫類、鳥類などを食べます。
捕食者にはネコ科のピューマがいます。
形態
体長は58~64㎝、体重は2.7~4㎏、尾長は約30㎝で、オスの方がわずかに大きくなります。
和名のスジオは、しっぽの中央に筋が通っていることに由来します。
行動
スジオイヌは昼行性ですが、夜や薄明時にも活動することがあります。
繁殖期、子育て期以外は単独で行動します。
行動圏は2~5㎢になります。
巣にはしばしばアルマジロが捨てた巣が使われます。
繁殖
繁殖期になるとペアを作り、秋に交尾を行います。
妊娠期間は約50日で、1~4頭の赤ちゃんが産まれます。
育児には父親も参加すると思われます。
赤ちゃんは生後4カ月で離乳し、9~10カ月齢で独立していきます。
人間とスジオイヌ
絶滅リスク・保全
スジオイヌはいくつかの脅威に直面しています。
彼らの住むセラードは、土壌が強酸性であるため、長らく不毛の地とされてきました。
しかし20世紀後半から、政府の意向でセラードは大豆の生産地として開発されます。
これは大豆の生産には多大な貢献を果たしましたが、一方でスジオイヌを含めた生き物たちの住処を奪う結果となりました。
この他、ロードキルやイエイヌによる捕殺、病気の伝染、牧場主などからの迫害もスジオイヌにとって脅威となっています。
現在、成熟個体数は1~2万頭と推測されており、IUCNのレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されています。
動物園
そんなスジオイヌですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
日本の反対側に住むスジオイヌ。
いつか日本の地でも見ることができるようになるといいですね。