世界のいきものを動画でチェック!YouTube

シロイワヤギ

シロイワヤギ
©2022 Laura M : clipped from the original
目次

シロイワヤギの基本情報

英名:Mountain Goat
学名:Oreamnos americanus
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 シロイワヤギ属
生息地:カナダ、アメリカ合衆国
保全状況:LC〈軽度懸念〉

シロイワヤギ
Photo credit: USFWS Mountain-Prairie

高山への適応

真っ白なコートに身を包んだ、その名もシロイワヤギ。

北米に生息する彼らは、その名の通りアラスカからロッキー山脈まで、岩場や崖の多い高山、亜高山地帯に暮らす哺乳類です。

シロイワヤギは高山地帯での生活に適応するために様々な特徴を持っています。


体つきはがっしりしており、短い四肢のおかげで重心が低くなり、悪い足場でも安定した移動が可能となります。

胸板は厚く、脚力にも優れており、3m以上の跳躍をすることもできます。

蹄は険しい岩場の歩行を助けます。

偶蹄目に分類される通り、2つに分かれた蹄は大きく、広げることができます。

また、蹄の縁は硬くなっている一方、底は柔らかくグリップ力を高めています。

こうした特徴のおかげで、シロイワヤギは60度以上の急峻な崖を軽々と渡り歩くことができるのです。


寒さへの適応もぬかりありません。

冬の毛は二層になっており、外側の保護毛は20㎝程度になります。

この冬毛は6月から7月にかけて抜け落ちますが、9月には早速新たな冬毛が生え始めます。

短い四肢は安定した移動を可能にするだけでなく、防寒にも役立っていると思われます。

外に出る四肢が短いと、表面積が比較的小さくなるため、熱の放散が防がれるのです。


このように高山に適応することで、シロイワヤギはどのようなメリットを享受しているのでしょう。

一番は捕食者の回避です。

彼らにはピューマをはじめとした捕食者が存在しますが、ひとたび険しい崖や岩場に逃げ込めばそれ以上追われることはありません。

また、彼らの生息地は人間にとってはアクセスが難しい環境であり、高山への適応は人間による狩猟圧が減ずるという結果ももたらしています。

ちなみに捕食者の回避においては、白い体色も雪景色に紛れるカモフラージュとして効果を発揮しています。

あわせて読みたい
ピューマ ピューマの基本情報 英名:Puma /Cougar/ Mountain lion学名:Puma concolor分類:ネコ科 ピューマ属生息地:アルゼンチン、ベリーズ、ボリビア、ブラジル、カナダ、チ...

一方で、高山での生活は彼らをもってしても過酷です。特に成長段階にある子供はその影響を大きく受けます。

出産は5月から6月にかけて、1年の中でも温かくエサが豊富な時期に見られますが、それでも1歳までの死亡率は平均60~70%、2歳までは50%にもなります。

死亡原因としては、雪崩や転落、捕食などで、脆弱な子供にとって崖が切り立つ高山という環境は厳しいものであることがわかります。


ところで、シロイワヤギは雌雄ともに同じ大きさの20~30㎝の角を持ちますが、この角には年輪が刻まれているため、輪が1本であれば2歳、2本であれば3歳というように、角を見ればその個体の年齢がわかります。

彼らにとって角は、厳しい環境に耐えてきた己の歴史を示すプライドのようなものなのでしょうか。

いつか直接聞いてみたいものです。

シロイワヤギ
Photo credit: Yellowstone National Park
あわせて読みたい

シロイワヤギの生態

生息地

標高4,000mまでの、崖や岩場が点在する亜高山および高山地帯に生息します。

アメリカ合衆国では、アラスカ州、アイダホ州、ワシントン州が彼らの本来の生息地です。

ワイオミング州やコロラド州は、彼らのもとの生息地ではありませんが、導入個体が定着しています。

形態

体長は1.2~1.8m、肩高は0.9~1m、体重はオスが80~155㎏、メスが60~80㎏、尾長は10~20㎝で、オスの方が大きくなります。

角は雌雄ともに生え、同じくらいの大きさですが、オスの方が後ろ側へのカーブがきつくなります。

シロイワヤギ
Photo credit: Laura M

食性

草や広葉草本、スゲ、シダ、コケ、地衣類、枝、木の葉など様々な植物を食べます。

雪を蹄で掘ってエサを食べることもします。

春や夏にはソルトリックを利用します。

捕食者にはピューマの他、オオカミヒグマイヌワシが知られています。

あわせて読みたい
オオカミ オオカミの基本情報 英名:Grey Wolf学名:Canis lupus分類:食肉目 イヌ科 イヌ属生息地:アフガニスタン、アルバニア、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、...
あわせて読みたい
ヒグマ https://youtu.be/e7g4s9EUmEo https://youtu.be/G9xjHxOwivw ヒグマの基本情報 英名:Brown Bear学名:Ursus arctos分類:クマ科 クマ属生息地:アフガニスタン、アル...

行動

薄明薄暮時に採餌を行います。

日中や夜は、土に掘った深さ数㎝程度のくぼみで休息したり砂浴びをしたりします。

季節的に垂直移動をし、夏には標高の高いところに、冬には低いところに移動します。

行動圏は20㎢程度で、冬には小さくなります。

社会

メスは20頭までのメスと子の群れを作ります。

オスは単独か2~6頭のオスだけの群れを作ります。

群れの規模は季節によって変わり、餌場が限られる冬やソルトリックが出現する春には大きくなります。

繁殖期付近、メスはオスを許容しますが、それ以外はメスがオスより優位にあり、メスがいいスポットを占有します。

繁殖期、メスをめぐって闘争しますが、頭をぶつけ合うのではなく、横に並んで角を相手の横腹にぶつけて戦います。

優位なオスはメスを世話して守るようにしますが、劣位のオスはメスに付きまわって交尾の機会を狙うという戦略をとります。

繁殖

繁殖は10月~12月に見られます。

メスは約半年の妊娠期間の後、2.5~3.5㎏の赤ちゃんを、通常1頭、稀に2頭産みます。

子は生後3~4ヵ月で離乳し、次の赤ちゃんが母親に生まれるまで母親と行動を共にします。

性成熟には2.5歳ごろ達します。

寿命は野生でオスは10年未満、メスは16年未満です。

シロイワヤギ
Photo credit: Yellowstone National Park

人間とシロイワヤギ

絶滅リスク・保全

現在のところ、シロイワヤギに大きな脅威はなく、個体数は安定しています。

原住民や免許を持った猟師による狩猟が行われていますが、国に管理されているため脅威にはなっていません。

カナダでは4~7万頭が生息していると推測されており、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

ただ、その生態から地球温暖化の影響を今後受ける可能性があります。

また、他の有蹄類より人間による攪乱に脆弱で、ヘリコプターなどの航空機の影響を受けていると言われています。

あわせて読みたい

動物園

日本でシロイワヤギを見ることはできません。

シロイワヤギ
Photo credit: mark byzewski
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次