ニルガイの基本情報
英名:Nilgai
学名:Boselaphus tragocamelus
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ニルガイ属
生息地:インド、ネパール、パキスタン
保全状況:LC〈軽度懸念〉

青いウシ
アジアでは最大級のアンテロープとなるニルガイ。
まずはその学名に注目してみましょう。
属名のBoselaphusは「雄牛」を意味するラテン語の“bos”と、「鹿」を意味するギリシャ語の“ekaphos”からきています。
一方、種小名のtragocamelusは、「山羊」を意味するギリシャ語の“tragos”と「ラクダ」を意味するギリシャ語の“kamelos”に由来します。
確かにその姿はとらえどころがなく、初見では何の仲間かわかりません。
このようにどの動物の仲間かよくわからないことが名前に関係している動物としては、他にシカの仲間のシフゾウや、ウシの仲間のターキンなどがいます。


続いて種名に注目してみましょう。
耳なじみのないニルガイという言葉は、ヒンディー語に由来しており、「青い牛」を意味します。
ニルガイは確かに青っぽい灰色をしています。
ただし、この色をしているのは大人のオスだけ。
メスや子供は明るい黄土色をしています。
このように雌雄で体色が異なる草食動物はバンテンやブラックバックなど多くはありません。
また、多くのウシ科動物では雌雄ともに角(ホーンと呼ばれる)が生えますが、ニルガイの場合オスにしか角は生えません。


かれらのように、雌雄で体サイズや体色など見た目が違うことを性的二型があると言いますが、性的二型がある種では、メスをめぐるオスの闘争が激しい傾向にあることが知られています。
ニルガイもその例にもれません。
ニルガイは普段は雌雄別で暮らします。
オスが単独ないし小さいオス同士の群れを作るのに対し、メスは10頭程度の群れを作ります。
繁殖期になると、オスはこのメスの集団に入り、ハーレム(ハレム)を作ります。
他のオスからメスを守るという任務を遂行できれば、オスは群れのメスたちを独占することができます。
ハーレムにオスは一頭しかいないので、それを見た人間からすると、青い大きな個体に目が引かれ、ニルガイの名前が付けられたのでしょう。
ちなみに、ニルガイは、牛を神聖視するヒンズー教が多いインドでは、ほとんど狩猟対象となってきませんでした。
おかげで彼らは他の野生動物と比べて、インドでは比較的安定した状況にあります。

ニルガイの生態
生息地
殆どがインドに生息するニルガイは、乾燥した草原や茂み、開けた森林に生息し、深い森林や砂漠は避けます。
パキスタンでは少数のみが存在し、バングラデシュでは絶滅したとされています。
アメリカ合衆国のテキサスやメキシコの農園や牧場に導入され半野生の環境で定着しています。
形態
体長は1.8~2m、肩高は1.2~1.5m、体重は120~240㎏、尾長は40~45㎝で、オスの方が大きくなります。
黒い角(ホーン)はオスにのみ生え、20~25㎝になります。

食性
ブラウザーでもありグレイザーでもある彼らは、草や葉、花、果実、種子などを食べます。
テキサスでは草をより食べるようです。
捕食者にはトラやヒョウがいます。



行動・社会
薄明薄暮時に活発になるニルガイは、日中も活動します。
視覚や聴覚に優れています。
繁殖
繁殖は12~3月に行われますが、年中見られることもあります。
メスの妊娠期間は240~258日で、1頭の子供が生まれます。
ニルガイでは双子も珍しくありません。
子供は生後10か月までに離乳し、1.5~3歳で性成熟に達します。
寿命は飼育下で20年程度です。

人間とニルガイ
絶滅リスク・保全
ニルガイの成熟個体数は7~10万頭と推測されています。
インドでは10万頭以上が生息しているとされています。
また、テキサスでは3.7万頭が、テキサスやメキシコの国境周辺には3万頭が生息していると推定されています。
個体数は安定しており、減少の報告はありません。
ただ、パキスタンでは生息地の破壊や狩猟が脅威となっているようです。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

動物園
日本ではニルガイに会うことはできません。
