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テングザル

テングザル
©2009 Peter Gronemann
目次

テングザルの基本情報

英名:Proboscis Monkey
学名:Nasalis larvatus
分類:オナガザル科 テングザル属
生息地:ブルネイ, インドネシア, マレーシア
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉

テングザル
Photo credit: Charles J Sharp

“天狗”のような長くて大きな鼻

天狗と言えば、あの長くて立派な鼻が思い浮かびますよね。

その天狗を名に持つサルが実は存在するのです。

その顔を見てみると、天狗のようにまっすぐとはいかないものの、長くて大きな鼻が顔の中心で圧倒的な存在感を誇っています。

ここまで立派だとテングという名前は大げさでも何でもありません。

英語名では“proboscis”という「大きな鼻」という意味を持つ単語が使われており、誰が見てもテングザルの第一印象はこの大きな鼻のようです。

しかし、この大きな鼻はオスしか持ちません

メスの鼻はもっと小ぶりで先がとんがっています。

では、なぜオスだけこのような大きな鼻を持っているのでしょうか。

ある研究によると、テングザルのメスは低くてイイ声を持っているオスに魅了されるようです。

そして、イイ声を出せるかどうかが、この鼻の大きさにかかっているというのです。

つまり、鼻が大きければ大きいほど鼻の空洞も大きくなり、それにより生まれたイイ声でメスを魅了するのです。

そして、この鼻の大きさは体の大きさや生殖力(要は金玉の大きさ)とも関係しています

テングザルは1頭のオスと複数頭のメスから成るハーレムを形成しますが、鼻の大きなサルの方がより大きなハーレムを作っており、鼻の大きさは強いオスの証であると言えるようです。

しかし、テングザルについては鼻の大きさ含め解明されていないことがまだまだ少なくないと言います。

今後の研究に期待しましょう。

ところで、もし人間界に「鼻の大きさ=強さ」という等式が持ち込まれたら、我々小鼻のアジア人に居場所はなさそうですね。

テングザル
Photo credit: James J Sharp

テングザルの生態

生息地

テングザルは東南アジアにあるボルネオ島マングローブ林や、湿地森に生息しています。

木々が生い茂るようなところでは、情報伝達手段として声が重要になります。

そう考えると、先ほどの声でメスを魅了するというのは一定の説得力があるように思えます。

食性

テングザルは主として若葉果実などを食べます。

ところで、葉っぱは繊維が多いため、本来は消化しにくいエサです。

しかし、牛や鹿などの草食性哺乳類は、胃を4つ持ってそこにバクテリアを共生させたり、反芻といって胃の中の食べ物をもう一度口に戻して噛んだりすることでようやく葉っぱを消化しています。

テングザルの場合はどうでしょう。

テングザルはコロブス亜科というグループに属します。

このコロブス亜科のサルの胃は非常にユニークで3つか4つにくびれています。

テングザルの胃も4つにくびれており、これが牛や鹿が持つ複数個の胃と似たような働きをするのです。

テングザルのおなかがビール腹なのも胃が複雑で大きいからだったのです。

ちなみにテングザルは、霊長類で唯一、反芻行動が報告されています。

このように葉っぱを消化するのに適した構造を持つテングザルですが、葉っぱの消化に時間がかかるためか、ほとんど動きません。

1日の7割は休息をし、平均移動距離も800メートルという怠けっぷりです。

大きい鼻にビール腹のように膨れたおなか、気だるそうな座り方、なんだか居酒屋にいるおっさんのように見えてきました。

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形態

体長はオスが約70㎝、メスが約60㎝、体重はオスが16~22㎏、メスが7~12㎏、尾長は約65㎝でオスの方が大きくなります

テングザルは昼行性で、特に夕方に活発に動きます。

ほとんど樹上で生活し、水を怖がらず泳ぐこともできます。

行動

テングザルは重層社会を持ちます。

3~32頭から成る単雄複雌の群れ(ワンメイル・ユニット)は、夜寝るときなどに複数が同所に集まり大きな群れ(バンド)になることがあります。

ちなみに、テングザルの社会はオスが生まれた群れを離れ、メスが留まる母系の社会です

繁殖

繁殖には季節性が見られ、約1年間隔でメスは出産することができます。

メスは約170日の妊娠期間の後、1匹の赤ちゃんを産みます。

赤ちゃんは母親に育てられ、約7カ月で離乳します。

性成熟には約7年で達し、飼育下での寿命は約20年です。

人間とテングザル

絶滅リスク・保全

テングザルは、生息地の破壊や火事、狩猟などの影響を受けて個体数を減らし続けています

ボルネオ島では、ここ半世紀で半分もの森林が失われており、森林の消失はテングザルを含め、森林で生活する動物たちの大きな脅威となっています。

テングザルはレッドリストにおいて絶滅危惧種ⅠB類(近い将来、野生での絶滅の危険性が高い)に指定されており、さらなる個体数の減少が懸念されています。

WWFジャパン
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動物園

そんなテングザルですが、実は日本でも一か所だけ見ることができる動物園があります。

それが神奈川県のよこはま動物園ズーラシアです。

ここではテングザルだけでなく、チンパンジーハイイロウーリーモンキー、世界一美しいサルと言われているアカアシドゥクラングールなどいろんな珍しいサルが見られるので、是非一度足を運んでみてください。

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