アカホエザルの基本情報
英名:Colombian Red Howler Monkey
学名:Alouatta seniculus
分類:クモザル科 ホエザル属
生息地:ブラジル, コロンビア, エクアドル, ペルー, ベネズエラ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
子どもを殺すサル
アカホエザルは南米に住む新世界ザルの1種です。
その名の通り、赤い毛におおわれ、ものすごい声量で吠えます。
その声は数キロ先にも届くほど。
そんなアカホエザルですが、4~10頭から成る単雄複雌の群れを作ります。
アカホエザルの社会は母系社会で、メスが生まれた群れに一生留まる一方、オスは成長すると、群れから離れます。
群れから離れたオスは、繁殖するためにも群れを持たなければなりません。
そこで何をするかというと、彼らは他の群れを乗っ取ります。
たしかに、群れを1から作るのは非常に大変なので、乗っ取る方が容易かもしれません。
オスが、その群れのオスを追い出せたら、乗っ取り成功。
しかし、その後には残虐な結末が待っています。
オスが、群れにいる元のオスの子どもをみんな殺してしまうのです。
これは子殺しと言い、ライオンなど他の動物にもみられます。
また、ハヌマンラングールやチンパンジーなど他のサルにも見られます。
アカホエザルでは子殺しがよく見られるようで、生き残ることができるアカホエザルの子どもは、全体の4分の1にも満たないと言われています。
ではなぜ子殺しが行われるのでしょう。
子殺しは、群れのメスの発情を早めることができると言われています。
子供が小さい間、メスは発情しません、というかできません。
そこで、メスから子供を奪うことで、メスの発情を再開させようというのが子殺しの説明では一般的となっています。
子殺しの詳細に関しては下記の記事をご覧ください。
アカホエザルの生態
生息地
アカホエザルは、コロンビア、ブラジル、ペルーなどの南米の国々にある湿潤林や、マングローブ林に広く分布しています。
食性
主に果実を食べますが、葉っぱや花も食べます。
ホエザルは新世界ザル唯一成熟した葉を食べることができるサルです。
詳細はカッショクホエザルの記事をご覧ください。
形態
体長はオスが50~70㎝、メスが45~60㎝、体重はオスが5~9㎏、メスが4~7㎏で、オスの方がメスよりも一回り大きくなります。
しっぽは50~75㎝あり、このしっぽには把握性があります。
またしっぽの先には毛が生えておらず、肌がむき出しになっています。
このあだには尾紋という模様があり、これがグリップ力を高めています。
行動
アカホエザルは先述のように単雄複雌の群れを作ります。
群れはなわばりを持ち、なわばりは他の群れと一部で重複しています。
なわばりは声によってアピールされます。
アカホエザルは、その名の通り大きな声で鳴くのですが、これは大きなノドと、のどの下にある共鳴袋と言われる袋によって可能になります。
吠えることで、自分たちの存在を他の群れに知らせ、無駄な争いを避けていると言われています。
ちなみに、この声、不快に感じる人もいるかもしれません。
それでも聞きたい方は下の動画をご覧ください。
繁殖
アカホエザルの繁殖に季節性は見られませんが、地域によっては季節性が見られることもあるようです。
メスの排卵周期は16~20日で、2~4日間だけ交尾をします。
妊娠期間は約190日で、通常1匹の赤ちゃんが生まれます。
赤ちゃんは主に母親に育てられ、メスは5歳、オスは7歳で性成熟に達します。
人間とアカホエザル
絶滅リスク・保全
アカホエザルは低地から、標高3,000メートル以上にもなる高山まで、いろいろな所に広く生息しており、絶滅の危機は高くないとされています。
レッドレストにおいても、絶滅の危機に関して軽度懸念にとどまっていますが、森林の縮小などによって個体数は減ってきているようです。
動物園
そんなアカホエザルですが、残念ながら日本の動物園では会うことができません。
絶対に会いたいという方は、アマゾンに行ってみてください。
きっとここにいるよと、大きな声で教えてくれるでしょう。