フクロテナガザルの基本情報
英名:Siamang
学名:Symphalangus syndactylus
分類:テナガザル科 フクロテナガザル属
生息地:インドネシア, マレーシア, タイ
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉
おっさんのような叫び声
すこし前に、「ア”ァーー」という、おっさんのような叫び声をあげるサルが話題になったことがあります。
彼の名はケイジくん。
愛知県の東山動物園で飼育されているフクロテナガザルです。
彼がどんな鳴き声をするかは、下の動画で確認してください。
本当に面白い叫び声をしています。
テナガザルのなかまは、「歌う」ことで知られています。
動画を見ていただくとわかるのですが、このサルはとても長い時間叫び続けています。
これは、ただ叫んでいるのではなく、きちんと規則があり、様々な音やタイミングで構成されています。
なので、歌という言葉が使われているのです。
フクロテナガザルの場合、歌に、オスとメスそれぞれのパートがあります。
その中でも最も特徴的なのは、メスによるグレートコール、オスによるコーダと言われる部分です。
ケイジくんのおっさんのような叫び声は、まさにこのコーダに使われます。
そしてこのコーダは、フクロテナガザルの場合、メスのグレートコールに続く形で現れます。
下のもう一つの動画では、メスのグレートコールの後に、オスのコーダが続く様子がよくわると思います。
この歌は、縄張りをアピールするため、そしてオスとメス、互いのきずなを深めるために行われていると言われています。
会って間もないオスとメスは即座にデュエットできるわけではなく、時間をかけて練習を重ねるみたいです。
ちなみに、声色やリズムなどの歌い方は、性別、個体ごとに違っており、誰もがケイジくんのようなおっさんボイスを出せるわけではありません。
人間と同じです。
フクロテナガザルの生態
生息地
フクロテナガザルは、マレー半島とスマトラ島の低地林などに生息します。
食性
果実や葉っぱを主食とし、虫や花なども食べます。
形態
フクロテナガザルは、テナガザルのなかまの中で最も大きく、体長は70~90㎝、体重はオスが平均12㎏、メスが平均10.5㎏にもなります。
腕は名前の通り長く、広げると体長の2.5倍になるほどの長さ。
この腕を上手に使いブラキエーションで木々を移動します。
1番の特徴は、なんといってもノドにある袋。
これは喉頭嚢(こうとうのう)と言い、この袋が名前の由来になっています。
歌を歌うときに人間の顔程まで大きく膨らみ、これによって発せられる音は増幅されます。
その音は数㎞先まで届くと言われるほどです。
でかすぎます。
近くで歌われたら鼓膜が破れそうです。
行動
フクロテナガザルは、1匹ずつのオスとメス、そしてその子供から成るペア型の群れを作り、厳格な縄張りを持ちます。
先ほどテナガザルは歌うと言いましたが、フクロテナガザルの場合、生後数か月で歌い始めることが確認されています。
歌が大好きなんですね。
繁殖
フクロテナガザルの繁殖に季節性は見られません。
メスは230~235日の妊娠期間の後、通常1匹の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは主に母親に育てられますが、オスもグルーミングをしたり運搬したりと育児に参加します。
赤ちゃんは生後18~24カ月で離乳し、6~7歳で性的に成熟します。
出産間隔は2~3年で、寿命は飼育下で約40年です。
人間とフクロテナガザル
絶滅リスク・保全
フクロテナガザルは現在、パーム油のプランテーションなどにより住む場所を奪われ、個体数を激減させています。
1995年~2000年にかけて、彼らの生息するスマトラ島の森林は40%が伐採や道路の開通で被害を受けたと言われています。
おそらくこの時には多くのフクロテナガザルもいなくなってしまったでしょう。
これらの結果、レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されています。
動物園
そんなフクロテナガザルですが、日本では10ほどの動物園で見ることができます。
宮城県の八木山動物園、千葉市動物公園、愛知県の東山動物園と日本モンキーセンター、大阪の天王寺動物園、岡山県の池田動物園、福岡県の到津の森動物公園、長崎県の九十九島動植物園森きらら、鹿児島県の平川動物公園がフクロテナガザルを飼育しています。
フクロテナガザルの歌を聞きに、動物園に行きましょう!