リードバックの基本情報
英名:Southern Reedbuck
学名:Redunca arundinum
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 リードバック属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、コンゴ民主共和国、エスワティニ、ガボン、マラウィ、モザンビーク、ナミビア、南アフリカ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ、レソト
保全状況:LC〈軽度懸念〉

リードバック
リードバックという名前のうち、バック(buck)はシカやアンテロープのオスを意味します。
リード(reed)とは多年生のイネ科植物であるアシ(ヨシ)を意味しますが、広義では湿地などに生える背の高い植物を意味します。
その名の通り、リードバックは背の高い草が生えた環境に生息します。
この環境は捕食者の目をかいくぐる上で非常に有利です。
リードバックのメスは、出産後の約2ヵ月間、赤ちゃんを茂みに隠して育てますが、特にこの時、背の高い草は赤ちゃんを隠し、捕食者から守ってくれます。
一方、例えば乾季になり背の高い草がやせ細ったり少なくなったりしてくると、より目立つようになり、捕食されることが増えます。
リードバックの主な捕食者はチーターやヒョウなどの単独性の肉食動物ですが、乾季になるとライオンやリカオンといった社会性のある肉食毒物からも捕食されるようになります。




ちなみに、リードバックのように赤ちゃんを茂みに隠して育てるタイプを置き去り型(ハイダータイプ)と言います。
リードバックの場合、母親は日中1度の頻度で子のもとを訪れ、数分から数十分の間子供に授乳をしたあと再び自分の生活に戻ります。
赤ちゃんを隠す場所は毎回変わりますが、母親は背の高い草の中から、主ににおいで子供の居場所を突き止めているようです。
こうして2カ月ほどして子供が十分に育ったら、子供は母親とともに行動するようになります。
リードバックは、雨季にはペアや小群、単独で見られますが、乾季には単独で見られることは少なくなります。
オスはなわばり性を持ち、臭腺からのにおいや角を地面や草にこすりつけるホーニングなどでマーキングします。
また、プロンキングと呼ばれる垂直にジャンプする方法でも、自分の存在を他の個体にアピールします。
丈の高い草が生える環境でのジャンプは、視覚的に大きな効果があると思われます。
このプロンキングは繁殖の際にも見られるようで、他にスプリングボックがプロンキングをする動物として有名です。

このように、リードバックは背の高い草が生い茂る環境によく順応しています。
リードバックという名前は、彼らの生態をよく表している名前だと言えるでしょう。

リードバックの生態
生息地
標高2,000mまでの、背の高い草が生える氾濫原やサバンナ、ウッドランドなどに生息しています。
森林は避け、水が常にある環境を必要とします。
タンザニア南部ではボホールリードバックと同所的に生息しています。
コンゴでは過剰な狩猟により絶滅しているとされています。

形態
体長は134~167㎝、肩高は65~105㎝、体重は39~80㎏、オスが平均68㎏、メスが平均48㎏、尾長が18~30㎝で、3種いるリードバックの中では最大です。
体色は黄色がかった茶色から灰色がかった茶色まで様々です。
角(ホーン)はオスにのみ生えます。
生後半年頃から生え始め、30~45㎝にまで成長します。

食性
グレイザーであるリードバックはイネ科植物を主食としますが、乾季には多くはないものの木を利用することもあります。
捕食者にはチーター、ヒョウ、ライオン、リカオンがおり、特に隠された子供はサーバル、ジャッカル、パイソンなどにも捕食されます。



行動・社会
乾季を除くと主に夜行性、薄明薄暮性のリードバックは、オスメスのペアや小さい群れ、もしくは単独で暮らします。
オスはなわばり性を持ち、なわばりに入ってきた他のオスと頭をぶつけて争うこともあります。
オスよりもメスの方が早く群れを離れ、オスよりもより遠くに分散します。
採食中は2,3時間の休息や反芻を挟みます。
繁殖
繁殖は年中見られますが12月から5月にかけてがピークです。
メスは7~8ヵ月の妊娠期間の後、4.5㎏の赤ちゃんを1頭産みます。
赤ちゃんは生後2ヵ月頃まで茂みに隠されて育ち、その後母親と行動するようになります。
性成熟はオスが3歳ごろ、メスは2歳ごろ性成熟に達します。
寿命は野生で10~12年です。

人間とリードバック
絶滅リスク・保全
リードバックの個体数は7.3万頭と推測されています。
うち3分の2が保護区内で生活しており、個体数は安定しているとみられています。
肉やトロフィー目的の狩猟や、水が豊富な環境の農地への転換などによる生息地の破壊は脅威となりえますが、現在のところ絶滅は心配されておらず、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

動物園
リードバック含め、リードバック属の種を日本で見ることはできません。