スタインボックの基本情報
英名:Steenbok
学名:Raphicerus campestris
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ボック属
生息地:アンゴラ、ボツワナ、エスワティニ、ケニア、モザンビーク、ナミビア、南アフリカ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

小さいウシ
アフリカ南部を中心に生息する可愛らしいスタインボック。
彼らは非常に小さいですが、ウシ科に分類されるウシの仲間です。
確かに反芻をするなどウシとの共通点はありますが、その見た目同様、一般的なウシのイメージとは異なる部分も多いです。
例えば、ウシ科の角はホーンと呼ばれ雌雄ともに生えることが多いですが、スタインボックの場合ホーンはオスにしか生えません。
また、多くのウシ科動物は集団で暮らしますが、スタインボックは単独性です。
一頭のオスが多くのメスを独占するような繁殖システムではないため、雌雄の体サイズにおける性差は小さく、むしろメスの方が大きい場合もあるほどです。
食性に関して、一般的にウシは地面に生える草を食べる姿が思い出されます。
草を食べる動物はグレイザーと呼ばれますが、スタインボックはグレイザーではなく、ブラウザーです。
ブラウザーは木の葉などを食べる動物のことで、スタインボックは特に緑が濃い葉やベリー、花、蕾など高質なエサを食べます。
水分はこうした高質の餌から摂取できるため、彼らは水を飲まなくても長期間生存できます。
彼らが広い範囲に生息できるのも、こうした特性のおかげです。
チーターなどの捕食者への対応についても、彼らは小さいがゆえの方法をとります。
ウシ科動物にはガゼルなどの走力に長けたものや、バッファローなど屈強な体を持つものが多いですが、スタインボックはそのどちらの能力も持ちません。
彼らにあるのは小さいからだと大きい耳だけ。
まずは聴覚を使って捕食者の存在を感知しますが、もし捕食者がすでに近くにいた場合、彼らはフリーズして身を潜めます。
体が小さい彼らを見過ごしてしまう捕食者も少なくありません。
もし見つかった場合はジグザグに逃げ、ツチブタなどが掘った穴に逃げ込みます。
ツチブタは世界最大の穴を掘る動物ですが、体高が低いため彼らの作った穴に捕食者は入ることができません。
スタインボックは小さい体を利用して、このシェルターを大いに利用するのです。



このように、私たちのイメージの中のウシの姿とはかけはなれた実態を持つスタインボック。
小さくてかわいらしい彼らですが、日々を懸命に生きるその姿には、ウシのようなたくましさを感じます。

スタインボックの生態
生息地
スタインボックは、標高3,500m(ケニア山)までの半砂漠やサバンナなどに生息します。
生息地はタンザニアなどの東部アフリカと、南部アフリカに隔てられていますが、ザンビア、マラウィ、モザンビークに広がる背の高いミオンボ林が自然のバリアとなっています。
形態
体長は70~95㎝、肩高は45~60㎝、尾長は4~6㎝、体重は7~16㎏です。
角はオスにのみ生え、9~19㎝になります。

食性
ブラウザーである彼らは、葉や広葉草本などを主食としますが、乾季になると根や茎なども食べます。
また、エサが欠乏していると死肉を食べることもあるようです。
捕食者にはチーターやリカオン、ヒョウ、ブチハイエナ、ゴマバラワシなどの猛禽類が知られています。



行動・社会
薄明薄暮時に採餌を行うスタインボックは、4~5haの行動圏を持ちます。
なわばり性があり、糞などでマーキングします。
電話線や道路が境界となることもあります。
繁殖
繁殖は年中見られます。メスは168~177日の妊娠期間の後、体重1㎏の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは最長4カ月ほど茂みに隠れて暮らし、母親はそこを日に何度か訪れます(ハイダー型)。
この時、子供が捕食者に見つからないよう、母親は子の排泄物を食べます。
子供は生後2週で固形物を食べるようになり、生後3ヵ月で離乳します。
寿命は飼育下で約9年です。
人間とスタインボック
絶滅リスク・保全
個体数は少なく見積もって60万頭はいるとされています。
個体数は安定しており、特に大きな脅威も存在しません。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

動物園
日本でスタインボックに会うことはできません。
