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スジイルカ

スジイルカ
目次

スジイルカの基本情報

英名:Striped Dolphin
学名:Stenella coeruleoalba
分類:鯨偶蹄目 マイルカ科 スジイルカ属
生息地:北太平洋、南太平洋、北大西洋、南大西洋、インド洋
保全状況:LC〈軽度懸念〉

スジイルカ
Photo credit: Tracie Jacques

参考文献

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日本で最も捕獲された鯨

スジイルカというと、日本ではあまりなじみのないイルカですが、実は日本近海にも生息しています。

さらに、捕鯨という点で日本人と彼らとは切り離せないつながりがあります。

なぜなら、彼らは日本で最も捕獲されてきた鯨類の一種だからです


スジイルカ漁の舞台は主に千葉、静岡、和歌山ですが、特筆すべきは静岡県の伊豆半島です。

伊豆におけるイルカ漁は少なくとも17世紀初頭にまでさかのぼることができ、2004年まで続きます。

漁の方法は、追い込み漁

イルカを湾内に追い込み、一網打尽にする方法です。

こうして捕獲されたスジイルカは、静岡県周辺の県で食用として消費されます。

伊豆におけるスジイルカ漁は1940年代から盛んになり、1960年代まで毎年、数千から2万頭が捕獲されます。

1949年から1951年は、他の鯨類が500頭以下しか捕獲されなかったのに対し、スジイルカは1万千頭から1万3千頭が捕獲されています。


ここまでの数が捕獲されると、当然スジイルカの個体数は減っていきます。

実際、伊豆におけるスジイルカの捕獲数は1960年代以降漸減していき、1993年以降には0になります。

このようにして、伊豆のスジイルカ漁は、近海のスジイルカの個体群を壊滅させてしまったわけですが、この例は、資源の管理が伊豆の漁においていかに不足していたか教えてくれます。


一方で、伊豆で捕獲されるスジイルカの年齢や性状態などの情報は、漁獲年ごとに蓄積されたため、我々はイルカ漁がスジイルカに何をもたらしたのか、その一部を知ることができます。

例えば、1950年代から1970年代にかけて、メスの平均成熟年齢は12年の間に2,3歳も若くなりました。

同じ時期、成熟個体のうちもっとも若い年齢が8~9歳から5~6歳となりました。

これは漁により個体数が減ったことによって、一頭当たりの餌資源が増え、栄養状態が良くなったからである可能性があります。

同じような不幸を繰り返さないため、こうした過去の出来事と教訓を現在に生かすことが重要です。


現在スジイルカ漁が行われているのは、和歌山県の太地町のみ。

小型漁船から離頭銛を放つ突きん棒漁と追い込み漁合わせて約500頭の捕獲枠が国から割り当てられていますが、2022年漁期では153頭が捕獲されています。

水産庁 | 捕鯨をめぐる情勢 令和6年1月版

スジイルカ

スジイルカの生態

生息地

スジイルカは最も広い範囲に生息する鯨類の一種です。

熱帯と温帯の海域に広く生息しており、外洋を好みますが、大陸棚や沿岸に接近する場合もあります。

日本近海では、その生息はほとんど太平洋側に限られます。

形態

体長はオスが2.4m、メスが2.2mで体重は150㎏前後です。

上下それぞれ39~55対のとがった歯が生えています。

名前の由来となっている目のあたりから肛門にかけての筋模様が特徴的です。

食性

イワシなどの群集性の小型魚や底魚、頭足類を食べます。

主に夕方から夜にかけて採食し、200~700mを潜ることもあります。

捕食者にはシャチが知られています。

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行動

ブリーチングポーパシング、顎で水面をたたくあごたたき、ジャンプして着水前に尾びれを回す尾びれ回しなどなど、水面行動が盛んです。

スジイルカは季節によって海域を移動することが知られています。

先述の伊豆と太地町について、どちらにも現れる個体群があってもおかしくありません。

スジイルカ
Photo credit: Charlie Jackson

社会

10頭から数百頭の群れを作りますが、千頭を超える場合もあります。

この群れは若いグループや大人のグループ、そこからさらに繁殖、非繁殖グループなどに分かれているようで、これらが離合集散を繰り返して様々な規模の一時的集団を形成しています。

ただ、これらのグループは厳密ではなく、離乳しても大人集団に移動しない個体もいます。

離乳した子供同士で集まる傾向はオスに強い個体群もあります。

繁殖

繁殖の季節性は弱いです。

メスの出産間隔は3年弱で、12~13ヵ月の妊娠期間ののち、体長約1m、体重7~11㎏の赤ちゃんを一頭生みます。

メスの日乳期間は1.5~1.7ヵ月続くようです。

オスは7~15歳で、メスは5~13歳で性成熟に達します。

寿命は最大で44~49歳です。

人間とスジイルカ

絶滅リスク・保全

スジイルカは全体で見ると200万頭以上はいると見積もられており、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

混獲や海洋汚染が地域によっては脅威となる可能性があります。

あわせて読みたい

動物園

日本の動物園や水族館でスジイルカを見ることはできません。

ただ、日本動物園水族館協会に属してはいませんが、和歌山県太地町のくじらの博物館が唯一、国内でスジイルカを飼育しています。

スジイルカの飼育は結構難しいようです。

産経新聞:産経ニュース
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太地町立くじらの博物館 | くじら館の動物たち

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