トムソンガゼルの基本情報
英名:Thomson’s Gazelle
学名:Eudorcas thomsonii
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 トムソンガゼル属
生息地:ケニア、タンザニア
保全状況:LC〈軽度懸念〉

乾燥に強いアンテロープ
スコットランドの探検家、ジョセフ・トムソンに因んでその名を付けられたトムソンガゼル。
彼らはケニアとタンザニアに生息する小型の有蹄類です。
トムソンガゼルは小さいながらも最高時速は65㎞に達し、場合によっては短距離しかもたない天敵のチーターを振り切ることもできます。

トムソンガゼルの多くはタンザニア、中でもセレンゲティ国立公園にほとんどが生息しています。
セレンゲティと言えば、陸棲哺乳類の楽園であり、ヌーやシマウマの大移動が有名です。
実はトムソンガゼルもこの大移動に参加する一員です。
しかし、ヌーやシマウマと常に帯同するわけではありません。
彼らは雨季には長いことその場にとどまり、乾季には他の動物のようにケニアのマサイマラにまでは北上しないことが知られています。

トムソンガゼルは同じ地域に生息する有蹄類よりも、比較的乾燥に強い生き物です。
そのため、他の有蹄類が移動してもなお、彼らは同じ場所に留まることができます。
ちなみにこうした特性により、彼らは他の有蹄類が利用したあとにその場を訪れることになりますが、これは採食にいい意味で影響します。
なぜなら、トムソンガゼルは丈が非常に短い草を食べますが、先に到着したヌーやシマウマはそれよりも長い草も食べるため、また、何万頭もの群れに踏みつけることになるため、トムソンガゼルが到着するころには彼らが食べたい草があらわになっているのです。
他の有蹄類もトムソンガゼルと同じものを食べるため、確かに競合はあるのですが、こうした食べ分けや利用時間の差によって、エサをめぐる競合は緩和されています。
ところで、セレンゲティの大移動を行うトムソンガゼルの個体数は減少していることがわかっています。
1980年代初頭には約50万頭が生息していましたが、2010年には16万6千頭にまで減少しています。
これにはヌーの増加や観光の影響、道路の建設などなど様々な要因が影響していると考えられています。
トムソンガゼルが生存のために逃げ切らなければならないのは、チーターや乾燥だけではないのです。

トムソンガゼルの生態
生息地
トムソンガゼルは標高500~1,000mの平原やアカシアサバンナに生息しています。
今ではかつての生息地の半分にしか生息していないとされています。

形態
体長は80~120㎝、肩高は55~82㎝、体重はオスが20~35㎏、メスが15~25㎏、尾長は15~27㎝でオスの方が大きくなります。
角(ホーン)はオスだけでなくメスにも生えることがありますが、メスの角はオスよりも小さくなります。
目の下にある臭腺、眼窩前腺が発達しています。
食性
グレイザーである彼らは、イネ科植物を主食としますが、エサが少ないと広葉草本(イネ科以外の草)や果実、種子、枝なども利用します。
捕食者にはチーターの他、ライオンやヒョウ、ブチハイエナ、リカオン、ジャッカルなどがいます。





行動・社会
メスは5~60頭の序列のない群れを作ります。
一方のオスは若いオス同士で群れるか、メスの群れと過ごします。
繁殖期になるとオスはなわばり性が強まり、なわばり内のエサを求めて移動してくるメスを他のオスから守ります。
糞や臭腺からの分泌物でなわばりはマーキングされます。
ヌーやシマウマ、インパラ、グラントガゼルなどと混群を作ることがあります。
危険は主に視覚で察知し、その場でジャンプするストッティングが見られることもあります。


参考;ストッティングについて

繁殖
繁殖は年に2回行われるようです。
メスは約半年の妊娠期間の後、2~3㎏の赤ちゃんを1頭産みます。
トムソンガゼルはハイダー型で、最初の数日赤ちゃんは茂みに隠されて育ちます。
母親は授乳のためにそこを何度か訪れ、数日後子とともに群れに合流していきます。
子供は生後2~3ヵ月で離乳し、1~2歳で性成熟に達します。
寿命は約10年です。

人間とトムソンガゼル
絶滅リスク・保全
トムソンガゼルの個体数は全体的に減少傾向にあります。
1990年代末、彼らは約44万頭いましたが、現在では21万頭ほどと推測されています。
タンザニアに約17万頭、ケニアに約4万頭が生息しています。
とはいえここ最近は減少速度が遅くなっており、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

動物園
日本でトムソンガゼルに会うことはできません。
