シロアシイタチキツネザルの基本情報
英名:White-footed Sportive Lemur
学名:Lepilemur leucopus
分類:イタチキツネザル科 イタチキツネザル属
生息地:マダガスカル
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉
参考文献
うんちを食べるサル
一般的に葉を食べるサルは、消化のために大きな腸を持っていなければならないので果実食や昆虫食のサルよりも大きくなる傾向がありますが、そんな中でシロアシイタチキツネザルを含めイタチキツネザルのなかまは体重1㎏未満と例外的に小さく、世界最小の葉食の霊長類として知られています。
イタチキツネザルは、食物繊維を分解する機能を持つ盲腸が非常に大きく、例えば盲腸の表面積と体重との関係で言うと、ウサギなどと共に哺乳類の中でも大きい値を示します。
ちなみに、この値が特に小さい種にヒトやオマキザルがいます。
このように、例外的に葉食に適した体を持つイタチキツネザルですが、そうは言っても普通に葉を食べているだけではエネルギー収支がマイナスになってしまいます。
彼らが1日で食べる葉には約15キロカロリーが含まれていますが、彼らの1日の基礎代謝量は20~30キロカロリーです。
この赤字分を埋め合わせるために、イタチキツネザルは様々な工夫を凝らします。
一つは、あまり動かないことです。
夜行性の彼らは、日中休眠することで基礎代謝量を40%も下げています。
夜間になってもあまり動かず、エネルギーの消費を抑えます。
もう一つが、フン食です。
葉食のイタチキツネザルですが、その小ささから他の葉食者と比べると、食物が1度体を通っただけでは十分に栄養を摂取することができません。
そこで、彼らはフンを食べます。
イタチキツネザルの場合、小腸に続く盲腸と大腸を通る間に、そこに住むバクテリアが、消化が難しいセルロースを分解します。
これによりでてきたフンは小腸で吸収しやすい状態になっているので、これを食べることで赤字分のエネルギーを得ているのです。
いやあ、いくら栄養を摂るためと言っても私たちにはマネできませんね。
シロアシイタチキツネザルの生態
生息地
シロアシイタチキツネザルは、マダガスカル南部、南西部の亜熱帯乾燥林などに生息します。
シロアシキツネザルは、キツネザルのなかまによく見られるように、木に垂直にしがみつき、木々の間をジャンプで移動します(ヴァーティカル・クリンギング・アンド・リーピング)。
シロアシイタチキツネザルは夜行性です。
そのため、昼は木のうろや股などでじっとしています。
夜になると動き出しますが、前述のようにあまり行動範囲は広くありません。
そのため生息密度も1ha(100m×100m)に3~10頭と高いです。
また、他の夜行性の原猿類と同様、彼らもタペータムという組織を目に持ちます。
これが光を増幅することで、暗闇の中でも動くことができます。
下の写真では、目が光っているように見えますが、これはタペータムのせいです。
食性
シロアシイタチキツネザル主にトゲのある木の葉を食べます。
この食物は霊長類が食べるものの中で最も栄養が少ないものとして知られています。
形態
体長は25㎝前後、体重は550gほど、しっぽの長さは21~26㎝で、性的二型は小さいです。
行動
シロアシイタチキツネザルは基本的に単独で行動すると考えられています。
オスメスともになわばりをもち、オスとメスの縄張りは重複します。
体格のいいオスの場合は多くて5匹のメスのなわばりと重複し、そうでないオスのなわばりは1,2匹のメスのなわばりとしか重複しません。
他の原猿とは異なり彼らは縄張りをアピールする際、もっぱら音声に頼ります。
コミュニケーションには、この音声の他、特に母親と子供の間でグルーミングが見られます。
繁殖
シロアシイタチキツネザルの繁殖には季節性が見られ、交尾は5月~6月、出産は9月~11月にかけて行われます。
メスの妊娠期間は約4.5カ月で、通常1匹の赤ちゃんが生まれます。
赤ちゃんは母親に育てられ、約18カ月で性成熟に達します。
出産間隔は約1年、寿命は約15年と考えられています。
人間とシロアシイタチキツネザル
絶滅リスク・保全
シロアシイタチキツネザルは、主に牧草地の開拓、炭の製造のための伐採など人間による生息地の破壊のために個体数を減らし続けています。
レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されており、絶滅の危機がかなり高いサルの一つです。
動物園
そんなシロアシイタチキツネザルですが、残念ながら日本で会うことはできません。
どうしても見たい方は、是非マダガスカルまで行ってみてください。
昼間シロアシイタチキツネザルは決まった場所でじっとしています。
現地のガイドはその場所を知っていることもあるため、一度見つければ写真撮り放題です。