ハナジロハナグマ

ハナジロハナグマ©2013 Eric Kilby: clipped fron the ooriginal
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ハナジロハナグマの基本情報

ハナジロハナグマ


英名:White-nosed Coati
学名:Nasua narica
分類:アライグマ科 ハナグマ属
生息地:ベリーズ、 コロンビア、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、パナマ、アメリカ合衆国
保全状況:LC〈軽度懸念〉

ハナジロハナグマ@Photo credit: pedrik

Photo credit: pedrik

ハナグマ

ハナジロハナグマは、その名の通り白い鼻が特徴的です。

しかし、特徴的なのはその白さだけではありません。

白くなくても、その鼻は特徴的で、ハナグマと名前に付けられるほどです。

 

ハナグマはやはり嗅覚が鋭く、エサを探す際にはこの鼻を地面につけてクンクンにおいながら歩きます。

この時、よく見ると分かるように、鼻はよく動き、その柔軟性に驚きます。

ハナグマ(鼻熊)の名前にふさわしい特徴ですね。

 

ところで、ハナジロハナグマは、バルサという木と面白い関係にあります。

バルサとは、メキシコ原産のバルサ材という木材にもなる木で、あのコンチキ号もこの木で造られたそうです。

この木が咲かせる花の蜜を、ハナジロハナグマは花に長い口吻部(マズル)を突っ込んで食べるのですが、この時、彼らの鼻の周りにはバルサの花の花粉が付着します。

ハナジロハナグマは、当然そのバルサの木だけの蜜を吸うわけではなく、他のバルサの木の蜜も食べます。

この時、先ほどのバルサの木の花粉が、今いるバルサの木の柱頭にくっつき受粉します。

 

そう、ハナジロハナグマがバルサの受粉を手伝っているのです。

バルサはハナジロハナグマに受粉を手伝ってもらえる一方、ハナジロハナグマも栄養や水分に富む蜜を摂取することができます。

 

このようなどちらも利益を得るバルサとハナジロハナグマの関係を、双利共生と呼びます。

このような関係にある代表的な例としては、アリに密をあげるアブラムシと、その蜜の代わりにアブラムシをナナホシテントウなどの捕食者から守るアリの共生関係があります。

ちなみに、花粉の媒介に関する共生関係には、送粉共生という名前がついています。

 

このような関係を知った上で彼らの名前を考えてみると、ハナジロハナグマのハナグマは、鼻熊でも花熊でもどちらにも当てはまりますね。

ハナジロハナグマ@Photo credit: Gary Leavens

Photo credit: Gary Leavens

ハナジロハナグマの生態

生息地

ハナジロハナグマは、中米を中心に、低地熱帯雨林から標高3,000mまでの乾燥林まで、多様な森林地帯に生息します。

 

食性

雑食性の彼らは、甲虫やクモ、サソリ、アリ、シロアリ、齧歯類、トカゲ、カエル、果実、卵などあらゆるものを食べます。

機会的捕食者で、エサを求めて1日に2㎞移動します。下の動画では、ハナジロハナグマが卵を食べる様子を見ることができます。

 

形態

体長は55㎝前後、体重は3~5㎏、尾長は40~60㎝で、前肢よりも後肢の方が長くなります。

 

行動

ハナジロハナグマは性別によって異なる社会を持つ珍しい肉食動物です。

オスは単独性で、尿や肛門腺からでる分泌物でなわばりをマーキングします

なわばりは重複しないため、遭遇した場合はケンカに発展します。

一方、メスは4~30頭から成るバンドと呼ばれる群れを作ります。

このバンドには、メスの他に未成熟のオスも含まれます。

バンドの行動圏は直径1kmほどで、メンバー間のコミュニケーションには音声やグルーミングなどが用いられます。

ハナジロハナグマは主に昼行性ですが、人が住む近辺では夜行性になることがあります。

また、特にオスは夜に活動することもあります。

 

繁殖

単独性のオスがメスの群れに合流できるのは繁殖の時だけです。

オスは2月~3月にかけて、バンドに入り、メスたちと交尾します。

その後しばらくはバンド内に留まりますが、すぐにメスたちに追い払われることになります。

メスの妊娠期間は77日前後で、メスは出産の3~4週前にバンドを離れ、巣を作ります

そこに100~180gの赤ちゃんを2~7頭産み落とします。

赤ちゃんは生後11日で目を開き、4カ月で離乳します。

5カ月目からバンドに再合流し、生後15カ月で大人の大きさになります。

性成熟にはメスが2歳、オスが3歳で達します。

寿命は野生下で14年の記録があります。

ハナジロハナグマに会える動物園

ハナジロハナグマは、生息地の破壊や毛皮および肉を目的とした狩猟の影響で、個体数を減少させています。

この他、コヨーテなど他の動物を対象とした駆除、犬ジステンパーや狂犬病などの影響もあります。

彼らの生息域の北限であるアメリカ合衆国のニューメキシコ州において、ハナジロハナグマは絶滅危惧種とされていますが、全体的に見ると絶滅は危惧されるほどではなく、レッドリストでは軽度懸念とされています。

 

そんなハナジロハナグマですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません

ただ、近縁種であるアカハナグマには北海道の円山動物園や兵庫県の王子動物園などで見ることができるので、機会がある方はぜひ足を運んでみてください。

https://carnivore.jp/south-american-coati/


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