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スイギュウ

スイギュウ
©2022 Mike Prince : clipped from the original
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スイギュウの基本情報

英名:Wild Water Buffalo
学名:Bubalus arnee
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 アジアスイギュウ属
生息地:ブータン、カンボジア、インド、ミャンマー、ネパール、タイ
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉

スイギュウ_1
Photo credit: Thimindu Goonatillake

水牛

アジアスイギュウの名でも知られるスイギュウ。

その名の通り、彼らは水に依存したウシ科動物です。

1日のかなりの時間を水や泥の中で過ごしますが、幅広い足のおかげで底に沈まずに済みます。

彼らが水や泥を浴びたりその中で過ごしたりするのは、体温調節が主な目的です。

スイギュウは汗腺が比較的少ないため、水や泥を汗の代わりとして体温を調節しているのです。

特に泥は体にまとわりつくため冷却効果が高く、寄生虫を防ぐなどの副次的効果もあります。


そんなスイギュウは家畜としても存在します。

野生種(Bubalus arnee)と家畜種(B. bubalis)は別種として扱われることもあります。

約5,000年前に彼らは家畜化されたようですが、少なくとも独立した家畜化が2度あったとされています。

家畜のスイギュウはさまざまな目的で飼われています。

例えば牛乳としてだけでなく、チーズやバターなどにも使われるその乳は非常に高質で、ウシと比べると水分が少なく、脂肪やラクトース、タンパク質が多く含まれます。

水牛の牛乳は世界で供給される牛乳の5%を占めると言われています。

また、スイギュウはその肉や毛皮も利用されています。

さらに、彼らは農耕や運搬などを担う使役動物としても飼われており、東南アジアでは農業に用いられる動力の2~3割を賄っているとされています。

家畜化されたスイギュウは東南アジアだけでなく、中米や南米、オーストラリアなどにも存在しており、世界中で約1.8億頭がいると推測されています。


このように、人間の生活に多くの貢献をしている家畜の水牛ですが、野生のスイギュウにとって、その存在は大きな脅威となっています。

特に問題なのが、野生種と家畜種の交雑です。

野生種の生息域において、家畜種は森林や草原に放し飼いされていることが多く、交雑の機会があります。

放し飼いされた家畜種が近くにいる野生種の個体群は全体の9割にものぼるとされており、交雑による純粋な野生種の喪失が懸念されています。

スリランカやスマトラ島、ジャワ島など、野生のスイギュウのかつての分布域かどうか議論があるところはありますが、彼らはかつてメソポタミアからインドシナまで広く分布していたとされます。

しかし今、野生のスイギュウはブータン、インド、ミャンマー、ネパール、タイ、カンボジアのごく一部にしか生息しておらず、その数4,000頭未満と推測されています。

家畜種とは対照的な状況にある野生のスイギュウは、絶滅危惧種に指定されており、積極的な保全が必要とされています。

スイギュウ
家畜化された中国のスイギュウ | Photo credit: David Stanley

スイギュウの生態

生息地

スイギュウは標高1,500mまでの氾濫原や草原、落葉林や混交林などの森林に生息します。

バングラデシュやインドネシア、ラオス、スリランカ、ベトナムなどでは野生種は絶滅したとされます。

スリランカには2,000頭のスイギュウが生息していますが、彼らは家畜種の末裔とされています。

カンボジアでは絶滅したとみられていましたが、最近その存在が確認されました。

生息域にはインドサイアジアゾウなどもいます。

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形態

体長は2.4~3m、肩高は1.5~1.9m、体重はオスが1.2tまで、メスが800㎏まで、尾長は0.6~1mでオスの方が随分大きくなります。

家畜種は野生種よりもずっと小さく、250~550㎏です。

角(ホーン)はウシ科では最も横に広がっており、雌雄ともに生えます。

近縁のアフリカスイギュウは額で角の基部がつながっていますが、アジアスイギュウには見られません。

スイギュウ
Photo credit: Mike Prince

食性

主にグレイザーで草を選択的に食べますが、木の葉や果実、樹皮、枝、水生植物などを食べることもあります。

また、米やサトウキビなどの作物を食べることもあり、時に大きな被害をもたらすことがあります。

捕食者にはトラが知られています。

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行動

スイギュウは昼夜ともに活動します。

昼の暑い時間は森で水や泥に浸かり、夜になると開けた場所に移動します。

水の存在が非常に重要で、行動はそれに左右されます。

雨季には小さい群れで広くちらばり、乾季には常に水がある場所に多くの個体が集まります。

水場への道には非常に忠実で、何度も通られることでその道では水への土壌の浸食が顕著に見られます。

スイギュウは比較的塩分が高い水でも寛容で、汚い水でも利用するようです。

社会

スイギュウのメスは緩やかなつながりを持った母系の群れを作ります。

通常10~20頭程度ですが、100頭近くが集まる場合もあります。

成熟したオスは単独で暮らす傾向にあり、その他のオスはオス同士で10頭までの群れを作ります。

繁殖期になると優位なオスはメスの群れに入り、その群れのメスたちと交尾します。

メスは1.5歳、オスは3歳ごろ性成熟に達しますが、その際メスが群れに留まる一方、オスは群れを出ていき、オスの群れに合流します。

繁殖

繁殖は10月から11月にかけて行われることが多いですが、季節性がない場合もあります。

メスは2年に1度のペースで出産します。

妊娠期間はウシ科最長で10~11ヵ月。

35~40㎏の明るい色をした赤ちゃんを通常1頭産みますが、双子も見られます。

子供は生後6~9ヵ月で離乳します。

寿命は野生で最長25年、飼育下では30年以上生きる個体もいます。

スイギュウ
Photo credit: Sai Adikarla

人間とスイギュウ

絶滅リスク・保全

野生のスイギュウの個体数は4,000頭未満、成熟個体数は2,500頭程度と見積もられており、2万㎢にも満たない範囲で暮らしています。

個体数は過去約30年で50%以上減少したとされ、現在も減少傾向にあります。

全個体のうち約3,000頭は、カジランガ国立公園などインドの北東部に集中しています。


脅威としては家畜種との交雑の他、肉やトロフィー目的の密猟や家畜ウシの過食などによる生息環境の悪化、牛疫などの病気が挙げられます。

小さい個体群では近親交配も大きな脅威です。

現在彼らはインド、ネパール、ブータン、タイで法的に保護されています。

IUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されており、ワシントン条約(CITES)ではネパールのスイギュウが附属書Ⅲに記載されています。

スイギュウ
Photo credit: Adrian Scottow
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動物園

スイギュウの家畜種は岩手県の岩手サファリパーク、東京都の多摩動物公園、和歌山県のアドベンチャーワールド、愛媛県のとべ動物園、山口県の秋吉台自然動物公園サファリランドで見ることができます。

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