ムツオビアルマジロの基本情報
英名:Yellow Armadillo
学名:Euphractus sexcinctus
分類:被甲目 アルマジロ科 ムツオビアルマジロ属
生息地:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、パラグアイ、スリナム、ウルグアイ
保全状況:LC〈経度懸念〉
丸くならないアルマジロ
アルマジロという名前は、スペイン語で「鎧を着た小さいもの」という意味です。
その名の通り、アルマジロは鎧のような硬い皮膚をまとっています。
この鎧は皮骨と呼ばれる骨でできており、その上を角質が覆うという構造をしています。
ちなみに、皮骨はキリンやオカピの角の正体でもあります。
アルマジロの鎧は、帯状に重なっており可動性があります。
ムツオビアルマジロの場合、この帯が6~8つ存在します。
ところでアルマジロと言えば、身を守るためにボールのように丸まる姿が思い出されます。
しかし、このムツオビアルマジロはきれいに丸まることができません。
というか、20種ほどいるアルマジロのうち、完全に丸まることができるのはたったの2種、帯が3つのアルマジロだけです。
帯が3つのアルマジロは丸まることで捕食者から身を守りますが、それではムツオビアルマジロはどのようにして敵から身を守っているのでしょう。
危険を感じると、まず彼らはひたすら走って逃げます。
ムツオビアルマジロは意外にすばしっこく走ることができます。
硬い鎧で背面を守りつつ、走ることで脅威から逃げるのです。
そして、走る先にあるのは穴。
ムツオビアルマジロは穴を掘ることができる動物です。
危険から非難するために、彼らはこの穴を活用します。
ひとたび穴に入れば、その鎧も手伝ってほとんど無敵と言えるでしょう。
この穴は避難所の役割の他、家としての役割も果たします。
ムツオビアルマジロは5本の爪が生えた前足で穴を掘り、出入り口が最大5個ある巣穴を作ります。
彼らは普段この巣穴で生活し、個々は複数の巣穴を持っているようです。
巣穴では出産も行われます。
メスは1~3匹の赤ちゃんを巣穴に生み落とし、赤ちゃんは生後3か月ごろまでこの巣穴で生活します。
鎧を着た戦士が帰る先は城。
アルマジロという戦士にとって、穴という城は生活の上で非常に重要な存在なのです。
ムツオビアルマジロの生態
生息地
ムツオビアルマジロは、標高1,600mまでのサバンナなどの開けた環境や、低木地、乾燥した半落葉樹林などに生息します。
二次林も利用し、木材やサトウキビなどのプランテーションでも生きることができるようです。
形態
体長は40~50㎝、体重は3~7㎏、尾長は20~25㎝で、耳は割合大きく3~4㎝あります。
尾の甲羅の付け根あたりに臭腺につながる3~4個の小さな隙間があり、視力の弱い彼らにとってそこからでるにおいが重要なコミュニケーションツールとなっています。
英名の通り、体色は黄色がかったり赤みがかったりしています。
まばらに生えた毛が特徴的です。
食性
肉食寄りの雑食とされるムツオビアルマジロは、死肉や小型脊椎動物(哺乳類、両生類、爬虫類)、昆虫、クモ、鳥類の卵、植物性のものなどを食べます。
行動・社会
主に昼行性ですが、時々夜に活動することもあります。
繁殖期を除くと単独性ですが、他のアルマジロと比べると社会性があるようです。
行動圏はオスで1~100ha、メスで0.1~20haで、行動圏内にいくつかの巣穴を持ちます。
彼らは泳ぐこともできます。
繁殖
交尾は7月~9月にかけて見られることが多いです。
メスは60~64日の妊娠期間ののち、約100gの赤ちゃんを1~3匹巣穴に産みます。
赤ちゃんは生後3週ほどで目を開き、生後3か月まで巣穴で暮らします。
生後9ヵ月頃には性成熟に達し、その頃独立していきます。
寿命について、飼育下では15年以上生きる個体もいるようです。
人間とムツオビアルマジロ
絶滅リスク・保全
ムツオビアルマジロは肉や薬目的で狩猟されることがありますが、生存を脅かすほどではなく、彼らには大きな脅威はないとされています。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
動物園
日本でもムツオビアルマジロに会うことができます。
東京都の上野動物園、千葉県の千葉市動物公園、愛媛県のとべ動物園、大分県の大分マリーンパレス水族館「うみたまご」がムツオビアルマジロを飼育・展示しています。
うみたまごでは、運動不足解消のため、1日に1回彼らが館内を走り回るようです。