サバクワタオウサギの基本情報
英名:Desert Cottontail
学名:Sylvilagus audubonii
分類:兎形目 ウサギ科 ワタオウサギ属
生息地:メキシコ、アメリカ合衆国
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
隠れる場所
サバクワタオウサギは、その名の通り植物が少ない砂漠地帯にも生息するアナウサギです。
本来、ノウサギと比べて移動能力が低く、小さいアナウサギは、身を隠すための植物が生い茂る環境に生息します。
そして、日中は植物の陰で休息し、採食もそうした陰の近くで行います。
砂漠ではそうした生い茂る植物がないため、サバクワタオウサギは岩の隙間などを隠れ家とします。
体色もその環境に紛れるような色をしており、捕食者から見つかる確率を小さくします。
それでもなお、サバクワタオウサギはイタチやキツネ、そして猛禽類の餌食となります。
彼らはこうした捕食者の危険を察知した際、岩のように固まり危険が通り過ぎるのを待つか、近くの物陰に逃げます。
逃げ方は非常に特徴的で、ジグザグに走ることで捕食者を攪乱します。
アナウサギは大型のノウサギと比べて走るのは遅いですが、それでも彼らは時速30㎞ほどで走ることができます。
ウサギは歩くとき、足の裏全体を付けて歩きますが、走るとき、特に後足は足先だけが地面につきます。
こうすることでストロークが長くなり、早く走ることができるのです。
とはいえ、多くのウサギが捕食者に捕らえられるため、飼育下では最長7年以上生きるサバクワタオウサギの多くは野生では2年も生きられないとされています。
捕食者から身を隠す物陰は、サバクワタオウサギにとっては他の役割も持ちます。
それが日よけの役割です。
死の谷と訳され、気温が50度を超えることもあるデスバレーにも生息する彼らにとって、昼の太陽は強敵です。
彼らはそれを岩などの陰で過ごすことでしのいでいるのです。
この時、彼らの7㎝にもなる大きな耳は、熱を逃がすために大きな役割を果たしています。
生息地を一部で同じくし、見た目もよく似たヤマワタオウサギと比べると、耳の大きさが違うことがよくわかります。
サバクワタオウサギを含め、動物たちが生息する環境は所与のものですが、彼らはそれに自らを適応させることで今日まで生きのびることができているのです。
サバクワタオウサギの生態
生息地
サバクワタオウサギは、標高約1,800mまでの、乾燥した草原や低木林、砂漠に生息します。
開けた環境では基本的に見られません。
形態
体長は35~38㎝、体重はオスが平均約850g、メスが平均約1㎏で、他のウサギ同様メスの方が大きくなります。
食性
季節に応じて草や低木、果実、ナッツ、花などを食べます。
捕食者にはコヨーテやアメリカアナグマ、アカギツネ、猛禽類などが知られています。
行動・社会
昼間の暑さを避けて、夜や薄命薄暮時に活動します。
基本的に単独性で、泳ぐこともできます。
出産に先立ち、メスは20㎝程度の穴を掘り、草や毛を敷いて巣を作ります。
繁殖
繁殖は12月から夏の終わりにかけて行われます。
メスは年間最大5回出産できます。
妊娠期間は約1ヵ月で、一度に平均3匹の赤ちゃんを産みます。
未熟な状態で生まれた赤ちゃんは生後10日で目を開き、その後巣立っていきます。
母親は1日に1回だけ、授乳のために子供のもとを訪れます。
性成熟は3ヵ月齢ごろですが、実際に繁殖するのはまだ先になります。
寿命は野生化で1~3年、飼育下では最大7年以上生きます。
人間とサバクワタオウサギ
絶滅リスク・保全
サバクワタオウサギには、家畜との餌資源における競争、生息地の破壊、スポーツ、肉目的の狩猟、火事などの脅威があるとされていますが、絶滅を懸念するほどではありません。
彼らは広い範囲に生息し、個体数も十分と考えられており、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
動物園
サバクワタオウサギを日本で見ることはできません。