アメリカアナグマの基本情報
英名:American Badger
学名:Taxidea taxus
分類:イタチ科アメリカアナグマ属
生息地:カナダ, アメリカ合衆国, メキシコ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
コヨーテは友達?
アナグマの前肢の長くて鋭い爪は、穴を掘るスコップとして使われます。
アナグマは、この爪で穴を掘ることにより、ほとんどの獲物を捕らえます。
獲物を捕らえるために掘られた穴は深さ3m、長さ10mにも及び、身を隠したり眠ったりするのにも使われます。
特に出産・子育てに使われる穴はより複雑になり、付加的な側道を設けることですれ違うことができます。
アナグマは行動圏にいくつかの巣穴を持ち、同じ穴を長く使うことはありません。
そのため、キツネやスカンク、アナホリフクロウなど他の動物が使われていないアナグマの穴を巣穴として使うことがあります。
さて、穴掘り大好きのアメリカアナグマですが、イヌ科のコヨーテとの面白い関係が知られています。
彼らの獲物であるジリスなどの地下性哺乳類は、穴の中まで追いかけてくるアナグマから逃げるべく、穴の外に逃げようとします。
そこで待つのが、穴に入れないコヨーテです。
コヨーテはアナグマに追われて穴から出てきた獲物を、待ってましたと捕らえます(下の動画で見ることができます)。
ある報告によると、この方法によりコヨーテが獲物を捕らえることができた確率は、通常の1.3倍以上にまで上昇したようです。
一方、コヨーテに獲物を奪われたアナグマですが、彼らがどのようにコヨーテから利益を得ているかはあまりよく分かっていません。
ただ、穴の出口にコヨーテがいることで獲物の退路がふさがれたり、コヨーテが狩り場を見つけるのを手伝ったりすることで利益を得ているとは言われています。
ともに狩りをし、遊ぶことすらあるコヨーテとアメリカアナグマですが、面白いことに、アメリカアナグマの捕食者にはコヨーテが名を連ねています。
一方で、アメリカアナグマがコヨーテの赤ちゃんを食べたという記録もあります。
彼らは果たして友達なのでしょうか、それとも敵なのでしょうか。
アメリカアナグマの生態
生息地
アメリカアナグマは、カナダ、アメリカ合衆国、メキシコにかけて、プレーリーや牧草地などの乾燥し開けた環境に生息しています。
食性
彼らは肉食で、ホリネズミなどの哺乳類や、鳥類、爬虫類、昆虫を食べます。
時々植物質も食べます。
彼らを食べる捕食者には、コヨーテの他、ボブキャットやピューマ、猛禽類がいます。
形態
体長は60~75㎝、肩高は20~25㎝、体重はオスが8~12㎏、メスが6~8㎏、しっぽの長さは10~15㎝で、性的二型が顕著です。
また、彼らは埃や砂から目を守るための瞬膜を持ちます。
行動
アメリカアナグマは主に夜行性で、単独性ですが、人間がいないところでは昼にも活動するようです。
行動圏は1㎢前後で、繁殖期には広く、冬に狭くなります。
冬になると彼らの活動は劇的に減少します。
冬眠することはありませんが、トーパーという、体温を一時的に環境温度近くにまで下げた状態になることがよくあります。
この時、体温は9度にまで下がり、心拍数も通常の半分になります。
繁殖
アメリカアナグマの繁殖には季節性があり、交尾は夏の終わりから秋の初めにかけて行われます。
しかし、着床は12月~2月にかけて見られます(遅延着床)。
メスの妊娠期間は約6週間で、1~5匹、通常3匹の赤ちゃんが春の初めに産まれます。
赤ちゃんは巣穴で母親に育てられ、生後2~3カ月で離乳し、生後5~6カ月で独り立ちします。
性成熟に達するのはオスが14カ月、メスが12カ月で、寿命は野生下で12~14年、飼育下で最長26年の記録があります。
人間とアメリカアナグマ
絶滅リスク・保全
アメリカアナグマは、いくつかの脅威により個体数を減少させていますが、絶滅に関してはレッドリストで軽度懸念とされているように、今のところ危惧されてはいません。
彼らの脅威としては、新たな農地による生息地の代替、交通事故、駆除や生息地破壊によるえさであるプレーリードッグなどの減少、穴が家畜や車に被害を及ぼすなどの理由による駆除等があります。
動物園
そんなアメリカアナグマですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
しかし、日本にはニホンアナグマがいます。
ニホンアナグマは、日本全国の動物園や野生下でも見ることができるので、アナグマの穴を掘る姿を見たいと言う方は、彼らを観察してみるといいかもしれません。