オタリアの基本情報
英名:South American Sea Lion
学名:Otaria byronia
分類:食肉目 アシカ科 オタリア属
生息地:アルゼンチン、ブラジル、チリ、ペルー、ウルグアイ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

参考文献
シーライオン
アシカ科の仲間は、大きくアシカとオットセイに分けられますが、このうちアシカは英語で“sea lion(海のライオン)”と呼ばれます。
その由来は、アシカのオスもまた、ライオンのオスのようにたてがみを持つからです。
このたてがみという特徴から、アシカの仲間は英語で“maned seal(たてがみのあるアザラシ)”と呼ばれることもあります。
オタリアは日本語ではわかりづらいですが、英語では“South American Sea Lion”。
アシカのなかまであることがわかります。
ちなみに同じようにアシカ科最大のトドもオットセイではなくアシカの仲間です。


ライオンの雌雄を見分けるのが容易なように、オタリアの雌雄を見分けるのも簡単です。
もし仮にたてがみがなかったとしても、見分けがつきます。
なぜなら、オスの方がメスよりも圧倒的に大きいからです。
オスはメスの体重の3倍以上になることもあります。
このように性的二型が顕著であることは、彼らの配偶システムに関係しています。
つまり、オタリアの社会はメスをめぐるオスの競争が激しい社会ということです。
オスは12月中ごろ、繁殖場となる海岸に上陸し、他のオスとの闘争の末、繁殖なわばりを築きます。
こうしてなわばりを築けたオスは4~10頭のメスと交尾します。
ちなみにこのなわばりは上陸する場所によって、なわばり(移動可能)内のメスを独占し防衛する交尾なわばりとなったり、メスが水を求めるなどして動き回り防衛が難しい場合は、一部の有蹄類やセイウチなどに見られるレックのような、メスがオスのなわばりを巡り歩くようなタイプとなったりします。
また、気温の上昇が限定的な潮だまりがある場所では、そこをメスに魅力的な資源としてなわばりとする資源防衛型のなわばりが作られることもあります。


一方、なわばりを築けなかったオスたちは、隙を見てメスたちに奇襲をかけることがあります。
例えばライオンの場合、メスは子育て中に発情しないため、群れを乗っ取ったオスが子供を殺してメスの発情を再開させる子殺しという現象が見られます。
オタリアの場合メスは出産後1週間程度で発情するため、子殺しの必要がありません。
にもかかわらず、この奇襲により子供が母親から引き離されたり、下敷きになって死んでしまったりすることがあります。
結果として自らの繁殖を成功させるためにメスの子を殺してしまうとうのは、オタリアとライオンのなんとも言えない共通点です。

オタリアの生態
生息地
南米の南半分を囲うようにして、太平洋側、大西洋側の沿岸域に生息します。
沿岸性ですが、大人のオスは海岸から300㎞以上離れた沖合で見られることもあります。
ブラジルには繁殖場はありませんが、休息や採餌などしてオタリアが生息しています。
また、フォークランド諸島にも生息しています。
形態
体長はオスが2.1~2.6m、メスが1.5~2m、体重はオスが300~350㎏、メスが140~170㎏で、オスの方がずいぶん大きくなります。
オスは首が太く、たてがみが生えています。
アザラシと違い、泳ぐときは前の鰭を使います。

食性
魚類やイカやタコといった頭足類、甲殻類、ホヤ類、オキアミなどの多毛類などを食べます。
まれにミナミアメリカオットセイの子供やミナミゾウアザラシの子供、イワトビペンギンなどのペンギン類も捕食します。
捕食者にはシャチやサメの他、陸上にいるところを狙うピューマが知られています。


行動・社会
繁殖期以外では、単独や少数、多数の群れで過ごします。
潜水の深度や時間は、性別や年齢、子持ちかどうかなどによって様々です。
回遊はしないとされていますが、季節的な移動は見られます。
特に母子は音とにおいで相互を認識しています。
繁殖
繁殖は南半球の夏に行われます。
低緯度ほど繁殖期は長くなる傾向にあります。
12月中旬から雌雄の上陸が始まり、1月中頃にピークを迎えます。
メスは上陸から2~3日後に前年に身ごもった子供を産みます。
妊娠期間は約1年で、一度の出産で体長75~85㎝、体重11~15㎏の赤ちゃんを一頭産みます。
この時すでにオスの方が大きく、1㎏程度の差があります。
母親は1週間飲まず食わずで赤ちゃんにつきそった後、2~3日の採餌に出かけます。
かえってきて1~2日授乳したのち、再び採餌に出かけます。
このサイクルが、子供が離乳する8~10ヵ月間続きます。
子供は生後1~2ヵ月で最初の換毛を経験し、3~4週齢で初めて水に入ります。
離乳は1年以上続くこともあり、母親が年の違う子供を連れることも少なくありません。
性成熟には雌雄ともに4歳以降達しますが、オスが実際に繁殖できるのは9~11歳の時です。
寿命は約20年です。

人間とオタリア
絶滅リスク・保全
古くから原住民によって利用されていたオタリアですが、欧州人の定着に伴い、肉や脂肪、皮革を目的として商業的に乱獲された過去があります。
今ではその影響は軽微で、個体数は40万頭を超え安定しています。
IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。
一方、混獲や漁具、海洋ゴミ、餌の減少は今後脅威となる可能性があります。
人間との間には海洋資源をめぐる軋轢が少なからずあり、違法な報復措置が取られる場合もあります。
また、気候変動の影響も無視できません。
1997年から1998年にかけて発生したエルニーニョ・南方振動は、ペルーのオタリアの個体数を14万頭以上から3万頭以下にまで減らしました。
2006年には12万頭近くまで回復しましたが、今後も気候変動がオタリアに与える影響が懸念されています。


動物園
日本では全国各地の動物園や水族館でオタリアに会うことができます。
なかでも北海道のおたる水族館ではオタリアショーを見ることができます。