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クビワペッカリー

クビワペッカリー
©2009 Brian Gratwicke : clipped from the original
目次

クビワペッカリーの基本情報

英名:Collared Peccary
学名:Pecari tajacu
分類:鯨偶蹄目 ペッカリー科 クビワペッカリー属
生息地:アルゼンチン、ベリーズ、ボリビア、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、フランス領ギアナ、グアテマラ、ガイアナ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、スリナム、トリニダード・トバゴ、アメリカ合衆国、ベネズエラ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

クビワペッカリー
Photo credit: Bernard DUPONT

参考文献

ヘソイノシシ

首元の白い輪っかの模様からその名がつけられたクビワペッカリーは、社会性がある哺乳類です。

彼らは1~2頭のオスと複数のメス、そしてその子供たちから成る群れで暮らします。

雌雄ともにそれぞれ序列が存在し、一頭のオスが群れの序列の頂点に立ちます。

そんな彼らは四六時中ともにいるわけではありません。

昼には1~3頭程度の小さい群れに分かれて、採餌したり倒れた木の陰などで休息したりします。

この時、小さい群れ同士は30~250m離れています。

そして明け方や夕暮れ時になるとこれらの小集団は集まります。

長距離の移動が見られるのはこの時です。


クビワペッカリーは他のペッカリーやイノシシの仲間同様、視力が弱いため、群れの絆は音声やにおい、毛づくろいなどの触れ合いによって保たれます。

クビワペッカリーは背中に臭腺を持ち、ここからにおいを出しますが、このにおいは群れの仲間の識別だけでなく、なわばりのアピールにも使われます。

特にオスは、このにおいを岩や木などにこすりつけることでマーキングをしています。

ちなみに、クビワペッカリーは、背中のこの臭腺に由来して日本語でヘソイノシシと呼ばれることもあります。


ところで、厳密にはクビワペッカリー含め、ペッカリーはイノシシではありません。

約4,000万年前、ペッカリーの祖先は北米に、イノシシの祖先はユーラシアに生息しており、このころすでに両者は分かれていたものとされています。

ただ、例えばヒトの祖先とチンパンジーおよびボノボの祖先がたった600万年前に分かれたのを考えると、ペッカリーとイノシシは4,000万年の違いがあるとは思えないほどよく似ています。

短い足にずんぐりした体、そして突き出たその鼻など、一瞥では区別できません。

食性に目を向けると、他の偶蹄類が植物食に特化している一方、彼らはどちらも植物質の他、昆虫や哺乳類など動物質も食べる雑食性です

また、これに関係して他の偶蹄類が犬歯や切歯など一部の歯を失ったり退化させたりしているのに対し、彼らは歯一式を維持しています

クビワペッカリーは切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯を上下合わせて38本の歯を持っています。

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とはいえ、やはりペッカリーはペッカリー。

彼らのことはヘソイノシシではなく、ぜひクビワペッカリーと呼んであげてください。

クビワペッカリー
Photo credit: Bernard DUPONT

クビワペッカリーの生態

生息地

アメリカ南部から南米にかけて、標高3,000mまでの草原や森林、砂漠など様々な環境に生息します。

夜になると氷点下になったり雪が降ったりする寒い環境にも生息します。

形態

体長は84~106㎝、肩高は30~50㎝、体重は15~40㎏でペッカリーの中では最小となります。

上下ともに犬歯が生えていますが、下の方が大きく、またオスの方が大きくなります。

クビワペッカリー
Photo credit: Larry Lamsa

食性

クビワペッカリーは雑食性ですが、植物質の割合が高いです。

根、茎、葉、草、果実、昆虫、小動物などを食べます。

地域によってよく食べるものは異なり、例えば亜乾燥地帯では葉や草、茎などをよく食べるのに対し、熱帯林では果実を、砂漠ではサボテンをよく食べます。

捕食者にはジャガーピューマコヨーテオセロットが知られています。

行動・社会

一般的に夏には夜行性、冬には昼行性となります。

6~30頭超の群れで生活しますが、この群れはよく小集団に分かれます。

泥浴びや砂浴びをよくします。最高時速35㎞で走ることができます。

繁殖

年中繁殖が見られますが、地域によってピークが存在します。

多いと年に2回メスは出産することができます。

メスの妊娠期間は140~150日で、一度の出産で500g程度の赤ちゃんを1~4頭、通常2頭産みます。

子は生後6週で離乳しますが、生後9ヵ月までは母親とともに暮らします。

オスは生後46~47週で、メスは生後33~34週で性成熟に達し、この頃独立します。

寿命は野生で10年未満、飼育下では30年生きる個体もいます。

クビワペッカリー
Photo credit: Bernard DUPONT

人間とクビワペッカリー

絶滅リスク・保全

クビワペッカリーの個体数は安定しており、分布域も広いです。IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

ただ、過剰な狩猟と生息地の破壊は脅威となる可能性があります。

一部の国では狩猟及び取引が認められています。

ペルーではその肉は23ドルで取引されます。

また、毛皮は5ドルで取引され、最終的にヨーロッパに渡り、200ドルを超える靴や手袋となります。

ペルーでは毎年5万頭の毛皮が法の下に輸出されています。

ブラジルでは原住民以外による狩猟は禁止、コロンビアやベネズエラでは生活上必要な場合以外その狩猟は禁止されていますが、果たしてこれらがどこまで効力を持っているかは疑問視されています。

クビワペッカリーは、アメリカとメキシコのもの以外はワシントン条約(CITES)附属書Ⅱに記載されています。

クビワペッカリー
Photo credit; Bernard DUPONT
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動物園

クビワペッカリーは、日本では埼玉県の大宮公園、東京都の上野動物園、静岡県の伊豆シャボテン動物公園、兵庫県の神戸どうぶつ王国、沖縄県のネオパークオキナワで見ることができます。

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