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ホッキョクジリス

2026 4/26
リス科
2026年4月26日
ホッキョクジリス
©2020 Alaska Region U.S. Fish & Wildlife Service : clipped from the original
目次

ホッキョクジリスの基本情報

英名:Arctic Ground Squirrel
学名:Urocitellus parryii
分類:齧歯目 リス型亜目 リス科 ジリス属
生息地:カナダ、ロシア、アメリカ合衆国
保全状況:LC〈軽度懸念〉

ホッキョクジリス
Photo credit: National Park Service, Alaska Region

参考文献

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最も冷たい哺乳類

北米、ロシアの北極圏を含むツンドラを中心に分布する地上性リスの仲間、ホッキョクジリス。

彼らの生息地は1年の3分の2が冬で、その期間は毎日-20℃を下回り、積雪も1m近くなります。

そんな極寒の環境で暮らすホッキョクジリスは、どのようにしてこの過酷な冬を乗り越えているのでしょうか。


ホッキョクジリスの生活の拠点は地中の巣です。

彼らは自ら地中に巣穴を掘ることができます。

掘る土の量は年間1haあたり18tとも言われ、土壌の栄養の循環を促すなどの重要な役割を果たしています。

彼らが掘る巣穴には捕食者からの逃避用のシンプルなものの他、全長10m以上に達することもある居住用の巣穴があります。

この巣穴は深さ1m未満のところに掘られ、いくつものトンネルや部屋、出入り口を持ちます。

特にメスは血縁関係がある他のメスたちと集団を作りますが、彼女たちはこの巣穴を共有して育児も行います。

冬を越す際に最も重要なのは冬眠用の巣穴です。

そう、ホッキョクジリスは冬眠をして冬を乗り切る動物なのです。

この冬眠用の巣穴は普段の生活の巣穴と繋がっている場合もありますが、別で作られることもあります。

巣穴は湿っておらず、植生による保護がある場所に好まれて掘られます。

この冬眠の場所の確保のために、特にオスは冬眠前に攻撃的になります。

この巣穴の中で、彼らは早ければ8月から長いと4月頃まで冬眠します。


冬眠をするためには準備が必要です。

その準備とは脂肪の蓄積です。

彼らは脂肪のエネルギーで冬眠中に必要なエネルギーを賄います。

7月ごろ、ようやく植物が豊富になるころ、彼らは集中的にエサを食べ、脂肪を貯めます。

植物が生い茂るたった5~7週間の間に、彼らは元の体重の30~40%もの脂肪を蓄積させるのです。

そして準備が整った8月ごろから順次冬眠に入っていきます。

メスが最も早く、その1ヵ月後にオスが冬眠に入ります。

また、若い個体よりも大人の方が早く冬眠に入ります。

これは若い個体の方が脂肪の付きが悪いため、より長期間エサを食べなければならないからです。


巣の中と言えど、冬眠中の巣穴の温度は-20度近くになることもあります。

そんな環境の中、彼らは自らの体温を極限まで下げ、エネルギー消費を抑えます。

普段の彼らの体温は36℃程度ですが、冬眠中は-2.9℃まで下がります。

これは哺乳類の体温としては最も低い温度です。

下がるのは体温だけでなく、代謝や呼吸、心拍数も激減します。

心拍数は活動時で毎分200回ですが、これが10回未満にまで下がります。

完全に凍って生命活動を停止させないためか、2~3週間おきに彼らはこの冬眠状態の体温から活動時並みの体温に戻します。

眠った状態のまま12時間以上震えることで彼らは体温を回復させますが、この時に多くのエネルギーを必要とします。

活動時並みの体温になった1~2日後、彼らは再び体温を低下させていき、これを冬眠中何度も繰り返します。


こうして彼らは厳しい冬を乗り越えますが、冬眠を終えても特にオスは油断できません。

すぐに繁殖が始まるからです。

4月頃、まずはオスが冬眠から目覚めます。

これから迎える繁殖とその時期の餌の欠乏を補うため、特にオスでは冬眠前に巣穴にエサを貯め、それを冬眠後に食べる行動が見られます。

オスは冬眠から目覚めると、後から目覚めてくるメスと交尾するため、なわばりを争います。

この争いは熾烈で、死亡する個体も出るほどです。

そうしてオスはなわばり内の複数のメスと交尾しますが、繁殖期間中、オスはエサをほとんど食べません。

体重は20%も落ち、力尽きて死ぬ場合もあります。

北米からユーラシアまで、広い範囲に分布するホッキョクジリスですが、その繁栄の裏にはこうした厳しい生活とそれに耐える彼らの能力が隠れているのです。

 Arctic Ground Squirrel | Yukon Beringia Interpretive Centre

 Arctic Ground Squirrel | Denali National Park & Preserve (U.S. National Park Service)

ホッキョクジリスの生態

生息地

標高1,400mまでのツンドラに分布し、森林や谷、草地などに生息します。

森林限界を超えた場所や、人里の周辺地でも見られます。

形態

全長は33.2~49.5㎝、体重は524~1,500gで、ジリスと名の付くリスの中では最大です。

オスの方が体長が長く、冬眠前が最も重くなります。

年に2回、冬眠後の春と冬眠前の秋に換毛します。

大きな頬袋を持ち、頬と背中には臭腺があります。

メスは4~6対の乳頭を持っています。

他のリス同様、前足に4本、後足に5本ずつの指を持っています。

ホッキョクジリス
Photo credit: Bering Land Bridge National Preserve

食性

雑食性の彼らは、冬眠明けの春は鳥類やその卵、死肉、レミングなどの小型哺乳類をよく食べ、その後草木が生い茂るとベリーや花、葉、菌類、地衣類、コケ類などを食べるようになります。

特にオスでは冬眠前に巣にエサを貯めることで知られています。

捕食者にはカナダオオヤマネコやコヨーテ、クズリ、アカギツネ、ホッキョクギツネ、オオカミ、ヒグマ、猛禽類などがいます。

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行動

年に3~5ヵ月の活動期間中、彼らは昼行性で、朝5時から夜11時にかけて活動します。

行動圏は4haまでで、メスは定住傾向があります。

一方、オスは独立後、より遠くまで分散するので、被食リスクなどが高く、1年目の死亡率はオスの方が高いです。

危険を感じた際などは音声を使用し、空からの捕食者と地上の捕食者では異なる音声を使うようです。

ホッキョクジリス
Photo credit: Gregory “Slobirdr” Smith

社会

メスは血縁関係のある他のメスと50頭程度までの群れを作ります。

繁殖期である4月頃、オス同様、メスは行動圏が重なる複数のオスと交尾します。

メスがオスを受容するのは年にたった半日の間だけです。

一度に出産する子供の父親は、複数いる場合がありますが、一番最初に交尾したオスを父親に持つ子供が多い傾向にあります。

メスは集団で育児しますが、これは捕食者に対する目を増やすことと、オスによる子殺しを防ぐことの2つの目的があると考えられています。

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繁殖

メスは25~30日の妊娠期間の後、6~8匹、最大14匹の赤ちゃんを産みます。

未熟な状態で生まれた赤ちゃんは生後2日から毛を生やし始め、生後10日までには毛で覆われます。

生後27日ごろには巣の外に出始め、生後35日までに離乳します。

生後5~6週には体重は出生時の6~10倍、大人の体重の8割にもなります。

生後8~10週で独立し、オスは分散していきます。

メスも密度が高い場合などは分散していきます。

性成熟は1歳頃で、寿命は野生で長いと8~10年です。

1年目の死亡率は5~7割にも上ります。

ホッキョクジリス
Photo credit: Alaska Region U.S. Fish & Wildlife Service

人間とホッキョクジリス

絶滅リスク・保全

個体数の詳細は知られていませんが、分布域が広いため、現在のところ絶滅はあまり心配されていません。

ただ、現地では肉や毛皮目的に狩猟されており、これが脅威となっています。

また、家畜とのエサをめぐる競合や干ばつなども脅威とされています。

IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

 Urocitellus parryii | The IUCN Red List of Threatened Species

動物園

ホッキョクジリスを日本で見ることはできません。

ホッキョクジリス
Photo credit: Western Arctic National Parkland
リス科
ジリス属 リス科 リス型亜目 齧歯目 軽度懸念 北米 ヨーロッパ アメリカ合衆国 カナダ ロシア
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