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バンテン

バンテン
©2015 cuatrok77 : clipped from the original
目次

バンテンの基本情報

英名:Banteng
学名:Bos javanicus
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ウシ属
生息地:カンボジア、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ベトナム、ラオス
保全状況: CR〈絶滅危惧ⅠA類〉

バンテン
Photo credit: cuatrok77

参考文献

家畜と野生種のコントラスト

絶滅種であり、原牛とも呼ばれるオーロックス(Bos primigenius)の家畜種はウシ(Bos taurus)と呼ばれ、主に肉や牛乳を目的として世界各国で飼育されています。

その数15億以上と推計されており、有名どころではホルスタインやニュージャージ牛、松坂牛などなど、世界各国で様々な品種が存在します。

「牛」と言うと、これらオーロックスを祖先に持つ家畜種のことをばかりが思い浮かびますが、世界には彼ら以外にも家畜化されたウシたちが存在します。


例えば、現生するウシ科では最大のガウルの家畜種はガヤルミタンと呼ばれ、役用、食用として時に半野生下で飼育されています。

ほかにもチベットの高山に適応した毛の長いヤクや、水辺に適応したスイギュウなども、乳や肉を得るため、そして田を耕したり荷物を運んだりさせるために、家畜化されています。

そうした数いる家畜化されたウシの中の一種が、東南アジアに生息し、ブラックバックのように雌雄で体色が異なるバンテンです。

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ヤク | Photo credit: Dennis Jarvis

オーロックスが家畜化され始めたのは9000~8000年前と言われていますが、バンテンはそこから数千年後に家畜化されたようです。

ただ、人間はそれよりもずっと前に彼らの存在には気づいていたようで、ボルネオ島の1万年前のものとされる洞窟には彼らと思しき絵が描かれています。

家畜化されたバンテンは、インドネシアのバリ島原産ということでバリウシと呼ばれます。

バリ島からはバンテンの化石が見つかっていないため、彼らはよそから持ってこられたと推測されています。

その後バリウシはスラウェシ島など他の島々に導入され、今ではニューギニアやオーストラリアでも飼育されています。

バリウシは特にインドネシアにおいて重要な家畜種とされていますが、インドネシアで飼育されるウシのうち、約4分の1がこのバリウシとされています。


このように、バリウシはウシほどでないにしろ十分繫栄している家畜と言えそうですが、その野生種であるバンテンは全く逆の状況にあります。

バンテンは肉や角を目的とした過度な狩猟や生息地の破壊などにより数を激減させており、1960年代の個体数の5%以下しか生存していないと推測されるほどです。

IUCNのレッドリストでは最も厳しい評価である絶滅危惧ⅠA類に記載されています。

個体数は現在も減少していると言われており、狩猟や生息地の破壊などの他、ウシやガヤルとの交雑が脅威となっています。

バンテンとホルスタインなどのヨーロッパ系のウシとの交雑種には繁殖能力はないとされますが、インドを中心に飼育される肩のコブが特徴的なゼブーとの交雑種には繁殖能力があります。

また、バリウシとの交雑も大きな脅威です。

当然バリウシとの交雑種にも繁殖能力があるため、純粋なバンテンの遺伝子が損なわれる可能性があります。

このようにバンテンの場合、家畜種と野生種の状況に大きな隔たりがあります。

これはウシと絶滅したオーロックスの関係と似ていますが、バンテンがオーロックスの轍を踏むことがないよう、たゆまぬ保全活動が望まれています。

バリウシ
バリウシ | Photo credit: Bart Speelman

バンテンの生態

生息地

バンテンはかつて中国の雲南省から東南アジアにかけて、そしてインドの北東部にも生息していたようですが、中国やインド、バングラデシュ、ブルネイでは絶滅しています。

バンテンは標高2,100mまでの、主に開けた乾燥落葉林に生息します。

このほか湿潤林や二次林にも生息します。

形態

体長は1.9~2.5m、肩高は1.6~1.9m、体重はオスが600~900㎏、メスが400~670㎏、尾長は65~70㎝で、オスの方が大きくなります。

オスが暗い色である一方、メスは明るい色で容易に見分けることができます。

お尻の白いパッチと靴下のような白い足が特徴的で、角は雌雄ともに生えています。

バンテン
Photo credit: cuatrok77

食性

グレイザーでもブラウザーでもある彼らは、草や葉、竹、果実、種子、樹皮、枝などを季節に応じて食べます。

乾季には水なしで数日生きられますが、飲み水は生息環境に必須です。

ミネラルリックを利用します。

捕食者にはトラドールが知られています。

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行動・社会

早朝に活発に活動しますが、狩猟圧が高いところでは夜行性となります。

母子や亜成獣を中心に構成された群れは、特に繁殖期には一頭の成熟オスに率いられます。

群れが集まり大群となることもありますが、それは一時的です。

オスは群れを率いるか単独で生活するか、オス同士で群れを作ります。

繁殖

繁殖は年中見られることもあれば季節性が見られることもあるようです。

メスは9~10ヵ月の妊娠期間の後、1頭の赤ちゃんを産みます。

子供は生後6~9ヵ月で離乳し、2~3歳で性成熟に達します。

寿命は飼育下で25年ほどです。

バンテン
Photo credit: Neli Turner

人間とバンテン

絶滅リスク・保全

バンテンは生息するすべての国々で法的に保護されていますが、密猟や生息地の破壊が耐えません。

現在の成熟個体数は3,300頭程度と見積もられており、さらなる減少が懸念されています。

ただ、タイの一部保護区では回復傾向にあるようで、今後のさらなる成果が待ち望まれます。

IUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠA類の評価ですが、ワシントン条約(CITES)の附属書には記載がありません。

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動物園

日本でバンテンを見ることはできません。

バンテン
Photo credit: Rushen
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