アクシスジカの基本情報
英名:Chital
学名:Axis axis
分類:鯨偶蹄目 シカ科 アクシスシカ属
生息地:バングラデシュ、ブータン、インド、ネパール、スリランカ
保全状況:LC〈軽度懸念〉

世界一美しいシカ
シカ科には白い斑点を持つ種がいます。
子供のころにだけ斑点があるバンビのモデルとなったノロジカやワピチや、夏に斑点が現れるニホンジカなどがその例ですが、インド亜大陸に生息するアクシスジカは、年中斑点を持つシカ科動物で、その姿から「世界一美しいシカ」と称されています。
英名の“Chital”はヒンディー語で「斑点のある」を意味する言葉に由来しており、彼らの姿を象徴しています。



アクシスジカをより美しく見せるのは、オスの角です。
シカの角は枝角、英語ではアントラーと呼ばれ、トナカイを除くとオスにしか生えません。
枝角の名の通り、アクシスジカの角も左右それぞれ3つに分かれており、最大のもので1mにも及びます。
シカの枝角はウシの角と異なり、毎年生え変わります。
温帯に生息するシカなど、繁殖期が決まっているものは1年の決まった時期に角を落とし、再び角を生やしますが、年中繁殖が見られるアクシスジカでは、オスは1年半以上角を保持することもあります。

そんなアクシスジカは地面に生えた草を主食とするグレイザーと呼ばれる動物です。
ただ、落ち葉や果実を食べることもあります。
200種近い様々な植物を食べることで知られているアクシスジカですが、エサに関して霊長類から大きな恩恵を受けています。
彼らの分布域は、子殺しで有名な霊長類のハヌマンラングールと一部で重複しています。
そんな彼らが同所的に生息する環境では、アクシスジカの頭上でハヌマンラングールが暮らしているのですが、アクシスジカはハヌマンラングールが木から落とした果実を食べることで利益を得ています。
一方のハヌマンラングールは、アクシスジカの鳴き声によって危険を察知している可能性があります。
このような関係は、屋久島におけるニホンジカとニホンザルの関係や、アフリカ南部に生息するウシ科動物・ニアラとヒヒの関係によく似ています。
世界一美しいシカと子殺しで悪名高いサルの間に関係があるとは意外ですが、所詮それは人間の視点からの感想です。
動物たちは私たちの知らないところで、様々な形で相互に関係しあっているのです。






アクシスジカの生態
生息地
標高1,100mまで、インド亜大陸の北緯8~30度の範囲に分布し、森林や草原に生息します。
湿潤落葉林や乾燥落葉林の近くに藪や草原がある環境を好むようで、深い森林や開けた半砂漠、砂漠には不在です。
アルゼンチンやブラジル、アメリカ、オーストラリアなど、様々な国にスポーツハンティングの標的などの目的で導入されています。
形態
体長は1.1~1.5m、肩高は0.6~1m、体重はオスが30~75㎏、メスが25~45㎏、尾長は20~30㎝で、オスの方が大きくなります。
白い斑点は年中見られ、オスの体色はメスよりも暗いです。
角はオスのみに生え、通常75~85㎝です。

食性
主にグレイザーですが、エサが少ない乾季などには葉や花、果実なども食べます。
キノコや樹皮などもわずかに利用するようです。
また、人間のごみをあさることもあります。
水に依存しており、最低でも日に1度は水を飲む必要があります。
捕食者にはトラ、ドール、ヒョウが知られており、アクシスジカは彼らの重要な餌動物です。



行動・社会
薄明薄暮時に活発に活動します。
母と前年の子、その年の子からなる群れが基本で、それらが離合集散し100頭以上の群れになることもあります。
オスはオスだけの群れを作ることもありますが、単独や雌雄混在の群れも存在します。
夏や乾季には森林にすみ、冬や雨季には草原で過ごす傾向にあります。
最高時速は65㎞/hに達し、危険を感じた際や繁殖期にはよく鳴きます。
繁殖
年中繁殖が見られますが、地域ごとにピークが存在するようです。
メスの妊娠期間は約7.5ヵ月で、1度に1~2頭の赤ちゃんが生まれます。
赤ちゃんは、生後数週間は茂みに隠れて育ち、母親は子のもとを定期的に訪れ世話をします(ハイダータイプ)。
生後半年までには離乳し、1.5歳ごろ性成熟に達します。
寿命は飼育下で15~20年です。

人間とアクシスジカ
絶滅リスク・保全
20世紀後半ごろまで、アクシスジカは個体数を激減させてきました。
今では保護活動によってかつてほど減少速度は速くありませんが、それでも保護区外の個体数は減少しているとされています。
脅威としては、肉目的、復讐目的での狩猟や、家畜との競合、生息地の破壊、牛疫や口蹄疫と言った病気の伝染などがあります。
ただ、その分布域の広さなどから絶滅は心配されておらず、IUCNのレッドリストでは軽度懸念の評価です。

動物園
アクシスジカは、埼玉県の東武動物公園、群馬県の群馬サファリパーク、愛知県の東山動物園、兵庫県の姫路セントラルパークで見ることができます。




