トウブワタオウサギの基本情報
英名:Eastern Cottontail
学名:Sylvilagus floridanus
分類:兎形目 ウサギ科 ワタオウサギ属
生息地:カナダ、アメリカ合衆国、ニカラグア、メキシコ、ベネズエラ、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、ホンジュラス
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
最も栄えるワタオウサギ
ウサギ科の動物は、誕生時に未熟なアナウサギと、誕生時にすでに目が開いており、しっかりと毛も生え、すぐに動けるようになるノウサギに分けることができますが、トウブワタオウサギが属するワタオウサギ属は、このうちアナウサギを構成します。
ワタオウサギ属には現在17種が知られていますが、トウブワタオウサギはワタオウサギの中で最も繁栄しています。
亜種は20~30ほど知られており、分布域もカナダ南部から南米北部までと広範囲にわたります。
また、彼らはアメリカ大陸やヨーロッパなど、元の生息地以外の場所にも導入されていますが、その地でうまく定着しているようで分布域を拡大しています。
一部地域では他のウサギの繁栄を邪魔してさえいるようで、ニューイングランドワタオウサギの減少にはトウブワタオウサギの侵略が影響していると言われています。
トウブワタオウサギがこれほど繫栄している理由はいくつかあります。
まず、彼らはワタオウサギの中で最も多様な環境に生息しています。
プレーリーや沼地、砂漠、森林、農地などなど、捕食者から身を隠す植生があるところであれば、彼らは様々な環境に適応することができます。
そして彼らはそこに生える様々な植物を食べることができます。
トウブワタオウサギは草本類から木本類まで、150種近くの植物を食べることができると言われています。
さらに、彼らの高い繁殖力も彼らの繁栄を支えます。
トウブワタオウサギは、年に3~4回出産することができ、最大で年間35匹の赤ちゃんを産むことができます。
さらに、生まれた赤ちゃんは生後2~3週で離乳をはじめ、生後たった2~3ヶ月で繁殖できるようになります。
通常、性成熟に達しても、実際に繁殖するのは次の年であることが多いですが、トウブワタオウサギの10~36%は、生まれた繁殖シーズンのうちに早くも繁殖を始めるとされています。
トウブワタオウサギは、アメリカ東部に広く生息することからその名がつけられたようですが、いずれゼンブワタオウサギに名前が変わる日が来るかもしれません。
トウブワタオウサギの生態
生息地
トウブワタオウサギは、捕食者から身を隠す植生がある環境に暮らします。
北米から南米まで、広く生息しますが、イタリアなどのヨーロッパに導入されており、定着しています。
形態
体長は33~48㎝、体重は0.8~1.5㎏です。年に2回換毛し、冬はより密で温かい毛皮に包まれますが、カンジキウサギなどのような白色化はおこりません。
食性
夏は水分の多い草本類を中心にベリー類なども食べますが、餌の少ない冬は木本類の枝や樹皮を多く食べます。
捕食者にはアカギツネやコヨーテ、ボブキャット、イタチ、猛禽類などがいます。
行動・社会
トウブワタオウサギは、薄明薄暮性ないし夜行性です。
日中は草木の陰で休息します。
単独性の彼らは、出産時の巣を除けば、ヨーロッパアナウサギのように巣穴を自ら掘ることはありません。
最速30㎞/h近くで走ることができ、物陰までジグザグに走って捕食者から逃れます。
繁殖
繁殖シーズンは2~9月で、高緯度、標高が高い地域ではより遅い時期に繁殖します。
繁殖のスタートには気温が関係しているとされています。
4対の乳首を持つメスは、平均28日の妊娠期間ののち、平均3~5匹の赤ちゃんを、倒木などの陰に作られた草や毛が敷かれた深さ10㎝ほどの巣に産みます。
生まれた赤ちゃんの目は空いておらず、毛もまばらですが、生後5日ほどで目を開き、生後2週ごろには巣から出るようになります。
母親の育児は最小限で、日に2回だけ哺乳のために巣を訪れます。
生後7週ごろ離散し、そのころ性成熟に達します。
寿命は野生で15ヵ月、最長5年、飼育下では最長9年です。
野生の大人が生きのびる確率は年間20%ほどです。
人間とトウブワタオウサギ
絶滅リスク・保全
トウブワタオウサギは広く分布しているため、絶滅は懸念されていません。
IUCNのレッドリストでも軽度懸念の評価です。
ただ、一部地域では生息地の破壊や家畜との競合、人による狩猟や駆逐などにより、個体数を減らしているようです。
動物園
日本ではトウブワタオウサギを見ることができません。
日本の動物園で見られるウサギは、同じアナウサギであるヨーロッパアナウサギの家畜種です。