ガウルの基本情報
英名:Gaur
学名:Bos gaurus
分類:鯨偶蹄目 ウシ科 ウシ属
生息地:ブータン、カンボジア、中国、インド、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ネパール、タイ、ベトナム
保全状況:VU〈絶滅危惧Ⅱ類〉

最大の野生ウシ
東南アジアや南アジアに生息する、インドバイソンとも呼ばれるウシ科動物、ガウル。
がっしりとした体躯が特徴的な彼らは、140種ほどが知られている野生のウシ科の仲間の中でも最大です。
最大のオスは体長3m以上、体高2m以上、体重は1tを超えてきます。
アジアにはゾウやサイがいるため、アジア最大とまではいきませんが、それでもその体サイズは圧巻です。
捕食者はほとんどおらず、大人を倒すことができるのはトラくらいです。



そんなガウルにも恐るべき存在があります。
人間です。
体の大きいガウルはたくさんの肉を提供しますし、その角は装飾として、内臓は伝統的な薬として利用できます。
こうして多くのガウルが狩猟された結果、彼らはかつての生息域の20%以下の地域に、かつての10%以下の個体数が細々と暮らすまでに激減してしまいます。
このような人間による狩猟圧は、ガウルの生活も変えてしまいました。
ガウルは本来昼行性の生きもので、朝や夕方に活発に採食をしていましたが、人間に攪乱されている地域では、彼らは夜行性となる傾向にあります。
彼らが誇る体の大きさは、人間の前では標的になりやすいという意味で、むしろ裏目に出ているのです。
一方、その体の大きさと体に似合わないシャイな性格故、彼らは人間により長らく使役されてもきました。
インドや中国、ミャンマー、バングラデシュなどで物を運ぶ使役動物として、また肉を提供する家畜として、半野生、家畜状態で飼育されています。
その歴史は短くないようで、ガウルの家畜種はガヤルやミタン(Bos frontalis)と呼ばれ、現在両者は別種とされています。
ガヤルはガウルよりも小さく、骨の形状や体色、染色体の数(ガウルは2n=56、ガヤルは2n=58)などが異なります。
ちなみにガヤルの個体数も少なくなく、絶滅の危機にあるとされています。

ガウルは現在、生息するすべての国々で法的に保護されており、ワシントン条約(CITES)によって国際取引も禁じられています。
しかし、肉や角を狙った密猟は後を絶たず、生息地の破壊もやみません。
一部では増加しているようですが、全体としてガウルは減少傾向にあるとされています。
スリランカではすでに絶滅しており、バングラデシュでもおそらく絶滅したと考えられています。
最大の野生ウシの今後はどうなっていくのでしょうか。

ガウルの生態
生息地
ガウルは標高2,800mまでの常緑林や落葉林に生息します。
他のウシ科動物よりも濃い森林にすむことができ、湿潤林だけでなく乾燥林にも生息します。
形態
体長は2.3~3.4m、肩高は1.6~2.3m、体重はオスが600~1,500㎏、メスが400~1,000㎏、尾長は0.7~1mでオスの方が大きくなります。
角(ホーン)は雌雄ともに生え、0.6~1mになります。
ガウルは胃を4つ持ち、反芻をします。

食性
グレイザーでもブラウザーでもある彼らは、200種近い植物の草や葉、果実、枝、樹皮、種子などを食べます。
コーンやキャッサバ、ゴムの木などの作物を食べることもあります。
飲み水が必須で、ソルトリックも利用します。
捕食者にはトラの他、ヒョウやドールが知られています。



行動・社会
朝は採食、午後は休息や反芻に費やします。
彼らは序列のある10~30頭程度の群れを作ります。
群れには一頭のオス、複数のメスや亜成獣、子供がいることが多いです。
オスは他に単独で暮らしたり、オスだけの群れを作ったりすることもあります。
嗅覚や聴覚が優れており、音声や体をなめ合ったりしてコミュニケーションします。
バイソンなどのように地面に体をこする習性は見られません。
繁殖
繁殖には季節性がある場合もありますが、基本的に年中見られます。
メスは270~280日の妊娠期間の後、群れから離れた場所で25㎏ほどの赤ちゃんを、通常一頭産みます。
子供は生後9ヵ月ほどで離乳し、2~3歳で性成熟に達します。
メスの出産間隔は12~15ヵ月で、寿命は飼育下で約25年です。

人間とガウル
絶滅リスク・保全
ガウルは生息地の破壊や密猟の他、牛疫、口蹄疫、炭疽などといった家畜のウシからうつる病気などにより、全体的に個体数を減らしています。
全体の個体数は1.5~3.5万頭と推測されており、1,000頭を超える個体群は10もないとされています。
IUCNのレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、ワシントン条約では附属書Ⅰに記載されています。

動物園
日本でガウルを見ることはできません。
