ジョフロイキャットの基本情報
英名:Geoffroy’s Cat
学名:Leopardus geoffroyi
分類:ネコ科 オセロット属
生息地:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、パラグアイ、ウルグアイ
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
木の上でトイレ
すこし大きなイエネコくらいの姿をしたジョフロイキャットは、南米の多様な環境に生息しています。
狩りは主に夜や薄明薄暮時に行い、基本的に地上で生活します。
しかし、木に登ることも得意で、イエネコが嫌がる水の中にも入り、泳ぐこともできます。
そんなジョフロイキャットには他のネコ科動物にはあまり見られない、特徴的な習性を持っています。
ジョフロイキャットは多くの時間を地上で過ごし、木登りは得意であるものの、樹上での狩りが観察されたことはありません。
ところが、ジョフロイキャットはなぜか木の上でよく排便します。
しかも、木の高いところで何度も同じ場所に排便し、糞の山を作るのです。
チリのトーレス・デル・パイネ国立公園では、採取された325個の糞の内、93%が樹上3~5mにあったそうです。
このようなジョフロイキャットの習性は、マーキングの役割を果たしていると考えられています。
糞の山を築き上げることで、他の個体に自分の行動圏を視覚的、嗅覚的にアピールしているのです。
ジョフロイキャットは、飼育下で大きく口を開けて物や他個体のにおいをかぐフレーメン反応が観察されています。
彼らにとって嗅覚は、情報を得る上で大きな役割を果たしているのでしょう。
ちなみに、ジョフロイキャットの行動圏は、オスが2~9㎢、メスが1.5~5㎢、そしてオスの行動圏は複数のメスと重複している、という単独性のネコ科動物に典型的な特徴を示しています。
ジョフロイキャットの生態
生息地
ジョフロイキャットは、南米の温帯と亜熱帯地域の低木地や乾燥林、湿地、草原などに生息し、人の手が入った場所でも隠れ場所があれば暮らすことができます。
海抜0~3,800mまでの環境に棲み、熱帯雨林や温帯雨林には生息しません。
ジョフロイキャットは、パンパスキャットやサザンタイガーキャットと同所的に生息し、サザンタイガーキャットとは交雑がよく見られます。
食性
えさのほとんどを、200~250gの小型齧歯類や鳥類が占めます。
一方で、数㎏あるアルマジロやウサギ、オポッサム、ヌートリア、家禽などを捕食することもあります。
この他、爬虫類や両生類、甲殻類、魚類、昆虫なども食べます。
獲物は木の上や巣穴に隠すこともあります。
ピューマはジョフロイキャットの主な捕食者ですが、この他、ジャガーやクルペオギツネも彼らの捕食者である可能性があります。
形態
体長はオスが44~88㎝、メスが43~74㎝、体重はオスが3.2~7.8㎏、メスが2.6~4.9㎏、尾長は20~40㎝で性的二型が見られます。
体色は多様ですが、南に行くにつれ薄くなる傾向にあります。
メラニズムは一部地域では珍しくないようです。
行動
ジョフロイキャットは、単独性の動物です。
巣は木の洞や茂み、アルマジロの巣穴を利用して作ります。
一日の行動距離は環境によって変わるものの、およそ1~3kmです。
繁殖
野生下での繁殖の記録はほとんどありません。
ジョフロイキャットは生息地の一部では季節繁殖すると考えられています。
妊娠期間は62~78日で、100gほどの赤ちゃんが1度に1~3頭産まれます。
赤ちゃんは6~19日で目を開き、生後6~7週で固形物を食べるようになります。
生後2~3カ月で離乳し、半年で大人と同じ大きさになったのち、生後約8カ月で独立します。
性成熟はそれより後で、小型ネコにしては遅く、生後16~18カ月になります。
寿命は飼育下で約15年です。
人間とジョフロイキャット
保全状況
ジョフロイキャットは1960年代から1980年代にかけて行われた毛皮の国際取引の増加(1976~1980年の間にアルゼンチンでは少なくとも35万頭の毛皮が輸出され、1979~1980年の間には25万以上の毛皮が国際的に売買されていた)により、一時期は数を減らしていましたが、今では国際取引は禁止されているため(CITES附属書Ⅰ)、個体数は安定しており、絶滅はあまり懸念されていません。
しかし、それでも生息地の転換やロードキル、イエイヌによる襲撃、家禽を襲うことによる人からの報復など、潜在的脅威は存在しています。
動物園
そんなジョフロイキャットですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
ですので、イエネコを見たときには是非、南米にいる彼らのことも思い出してあげてください。
ちなみに、サファリキャットとはジョフロイキャットとイエネコの交雑種です。