書籍情報
書名:野生ネコの教科書
著者:ルークハンター(生物学者)
監修:今泉忠明(動物学者)
翻訳:山上佳子
発行年:2018年
出版社:株式会社エクスナレッジ
価格:2,800円(+税)
ページ数:238ページ
最も詳しいネコ図鑑
本書は、教科書の名にふさわしく、ネコについて知るにはもってこいの本となっています。
本書の特徴はなんといっても情報の多さです。
通常の図鑑であれば、文字による説明は少しあるだけで、その動物について知るにはとても十分であるとは言えません。
しかし、本書の場合、その文字による説明の量が半端ではありません。
1ページが写真だけで埋まることはなく、そこには必ず文字による説明があります。
1種1種に割かれるページ数も驚きで、どれだけ少ない種でも4ページは使われます。
多いものになると10ページを超えることもあると言うと、その情報量の多さがお分かりかと思います。
情報の内容としては、ネコ科に属するすべての動物の生息地、形態、食性、繁殖、保全状況など、基本的な事はもちろんのこと、死亡率や分類、亜種などについても詳しく説明されています。
もちろん文字だけではありません。
適宜、写真やイラストが使われ、文字による説明を補足します。
それぞれの種の頭骨のイラストは、他の図鑑ではあまりお目にかかれないでしょう。
本書は、個々のネコ科動物について知ることができるだけでなく、ネコ科動物全般について学ぶこともできます。
巻頭の約10ページは、ネコ科動物がどんな歴史、特徴を持つ動物であるかを紹介します。
近年の分子研究によって明らかになった系統関係や、ネコ科動物一般に見られる生態、さらにはネコ科動物の研究手法などなど、ネコ科の動物とは一体どんな動物かをよく理解することができます。
また、巻末ではネコ科動物の保全について語られます。
動物園では普通に見ることができるネコ科の動物たちですが、彼らの多くは絶滅の危機にさらされています。
その現状をどうすれば打破できるか、このことを考えるいい機会をこの数ページは提供してくれることでしょう。
個人的にうれしい付録は、巻末にある「ネコ科の種の一覧」です。
ここには、ネコ科の全種のイラストと名前が載せられています。
見開き4ページに全種が載っているため、その見た目を比較しやすいというのがポイントです。
これらのページを見れば、ネコ科動物の多様性や共通点を発見することができるでしょう。
皆さんが知っているライオンやトラ、ヒョウ、チーターなど、動物園でもおなじみのネコ以外にも、ネコ科動物にはいろいろなネコがいます。
彼らについて少しでも知りたければ、まずはこの一冊を手に取ってみることをオススメします。