ジャングルキャットの基本情報
英名:Jungle Cat
学名:Felis chaus
分類:ネコ科 ネコ属
生息地:アフガニスタン、アルメニア、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ブータン、カンボジア、中国、エジプト、ジョージア、インド、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、カザフスタン、ラオス、レバノン、ミャンマー、ネパール、パキスタン、ロシア、スリランカ、シリア、タジキスタン、タイ、トルコ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナム
保全状況:LC〈軽度懸念〉
参考文献
notジャングルキャット
その姿、特に耳の房毛や短いしっぽなどから、かつてオオヤマネコの一種とされていたジャングルキャットですが、遺伝子研究が発展した現在、彼らはイエネコ系統の主として位置づけられています。
ジャングルキャットはイエネコ系統内で最も早く分岐し、その体はイエネコ系統では最大となります。
古くから人間との関わりがあったようで、ジャングルキャットはエジプトで、イエネコの祖先であるリビアヤマネコと共に、ミイラとして見つかっています。
彼らが果たして家畜化されていたかは不明ですが、ネズミなど人間にとって時として害獣とされる動物を捕食する彼らは、人間とうまく共存していたのかもしれません。
そんなジャングルキャットの名前に注目してみましょう。
ジャングルとは、植物が繁茂しているあのジャングルです。
そのジャングルが名前に付いているということは、さぞ密な森林に生息しているのでしょうと思ってしまいますが、実はジャングルキャットはむしろそのような環境は避けることが知られています。
ジャングルキャットは林冠が閉じているような植物が密生した環境には生息せず、湿地や沼地、葦原、草原などで生活します。
ジャングルキャットには、沼地ネコ(Swamp Cat)や葦原ネコ(Reed Cat)という別名がありますが、そちらの名前の方が適しているようです。
ネコ科動物には、マーゲイなど、森林に依存して生活を送る種がいますが、なぜ彼らではなく、このネコがジャングルという名前を与えられたのでしょう。
その答えはジャングルの中。
謎です。
ジャングルキャットの生態
生息地
ジャングルキャットは、西はエジプトから東は中国まで、東西に広く生息しています。
沼地や湿地、沼沢地、低木地などで暮らし、農地や人間の集落の近くにも現れます。
食性
主食は1㎏未満の齧歯類など小型哺乳類で、多い時は食物の9割以上を占めることもあります。
インドの半乾燥地域では年に1,100~1,800頭ほどの齧歯類を食べていると推測されています。
この他、ガゼルなどの子供や鳥類、爬虫類、両生類、魚類、果実、家禽、死肉なども食べます。
形態
体長はオスが65~94㎝、メスが56~85㎝、肩高は約35㎝、体重はオスが5~12.2㎏、メスが2.6~9㎏、尾長は20~30㎝で、性的二型が見られます。
足と尾の斑紋が特徴的で、体の斑点はない場合もあります。
ラニズムやアルビノも確認されています。
行動
ジャングルキャットは単独性で、明け方や夕暮れ時に活発に狩りを行います。
1日に5~6kmを移動し、数十㎢の行動圏を持ちます。
行動圏は尿でマーキングされ、オスの行動圏は複数のメスのものと重複している場合があります。
ジャングルキャットは意外にも泳ぐことができ、木登りも得意です。
繁殖
ジャングルキャットの繁殖には地域ごとに季節性があるようです。
妊娠期間は63~66日で、130gの赤ちゃんが一度に通常2~3頭、地面の巣穴や茂みに産み落とされます。
生後約10日で目を開き、生後7週から固形物を食べ始めます。
生後15週までには完全離乳し、生後8~9カ月で独立します。
その後生後11~18カ月で性成熟に達します。
寿命は飼育下で最長20年の記録があります。
人間とジャングルキャット
絶滅リスク・保全
ジャングルキャットは、生息地の居住地や農地への転換、家禽を襲うことによる人間からの迫害などの影響を受けています。
また、毛皮を目的とした違法な狩猟、罠猟という脅威にも直面しています。
これら脅威のため、ジャングルキャットはレッドリストでは軽度懸念とされているものの、個体数は現在減少中とされています。
動物園
そんなジャングルキャットですが、残念ながら日本の動物園では見ることができません。
ジャングル、いや沼地や草原だけでなく、動物園でも見られるようになるといいですね。